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関友美の連載コラム「日本酒の本当の価値を奪還せよ『スパークリング日本酒』」(リカーズ4月号)

 ビール、ハイボール、シャンパンなど、発泡性のお酒は乾杯シーンだけでなく、食事のお供としても広く愛されています。日本酒にも「発泡性日本酒」や「スパークリング日本酒」と呼ばれるジャンルがあり、近年製造する酒蔵が増えています。のど越しも良く、爽やかな飲み口が心地よいですよね。なにより日本酒なので味わいが優しく、どんな料理にも合わせられるところが優秀です。

 どうやら太平洋戦争前から製造自体はされていたらしいのですが、一般的になったのは1990年以降のこと。なかでも一ノ蔵(宮城県)が1998年に発売した「すず音」は、甘すぎない味わいと程よく高級感漂うボトルデザインから一躍ブレイク。「発泡性日本酒」というジャンルを有名にしたパイオニアです。2000年代初頭、日本酒を扱う居酒屋だけでなく、ススキノのクラブやスナックでも見かけるほど「すず音」は大人気だったので、わたしもしこたま飲んだ記憶があります。2011年には松竹梅「澪」が誕生し、今やコンビニにも置かれる身近な存在になりました。調べてみると、人気の「獺祭スパークリング」誕生も1993年と、意外や古い。

2022年10月におこなわれたawa酒協会認定式の様子。ソムリエの田崎眞也氏がAWA SAKE大使に任命された。

 2016年には一般社団法人awa 酒協会が設立されました。発起人であり、初代理事長の「水芭蕉」醸造元・ 永井酒造(群馬県)永井則吉社長を筆頭に、スパークリング日本酒を醸す蔵元で構成されており、現在30蔵が加盟済み。厳格な品質基準と第三者機関での検査をクリアした銘柄だけを「AWA SAKE」と認定しています。

 稲作と共に伝承されてきた日本の宝・日本酒。それなのに1973年を境に国内では需要が減少。現在では当時の4分の1ほどに落ち込んでいます。品質は向上し、原価は上昇の一途をたどっているのに、価格を上げられない状況が長年続いてきました。現状を打開すべく「本物」を追求し、技術を継続的に向上させ、世界に打って出ることで、日本酒の価値を再定義しようとしているのがawa酒協会です。基準を設けることで、品質向上が期待でき、認定された「AWA SAKE」なら安心、というイメージから普及促進、市場の拡大が期待されます。『世界で通用する乾杯酒』が彼らの目標であるため、世界中で活躍するソムリエの田崎眞也氏、フランスソムリエ界の若き重鎮・グザビエ・チュイザ氏、トップソムリエのフィリップ・ジャメス氏をAWA SAKE大使として迎えています。近年ではIWC、Kura master、フェミナリーズなど海外の鑑評会でも、AWA SAKEは高く評価されています。

自宅で気軽に楽しめるスパークリング日本酒もあれば、G20や大使館パーティなどでお披露目される日本を背負うAWA SAKEもあります。これからも「発泡性日本酒」の活躍から目が離せません。ぜひ一度お試しあれ。 

左からawa酒協会加盟の秋田清酒、南部美人、八戸酒造の蔵元。そして手には認定酒。
2022年10月におこなわれたawa酒協会認定式で飾られた認定酒

今月の酒蔵

山梨銘醸(山梨県)
awa 酒協会立ち上げメンバーでもある山梨銘醸。初代が信州高遠で代々酒造業を営んでいた北原家より分家。白州の水の良さに惚れ込み、現在の地に1750年創業した。五代目の時、母屋新築の際に高遠城主・内藤駿河守より「竹林の七賢人」の欄間一対を頂戴したのが銘柄「七賢」の由来。99年に農業法人を設立。2018年には36歳の兄・北原対馬氏が社長、34歳の弟・亮庫氏が専務取締役兼杜氏となり、地元を想い、世界へと羽ばたく粋な取り組みを続けている。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」4月号より

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