「4年ぶりに開催!世界最大級の日本酒コンペティション『SAKE COMPETITION』」関友美の日本酒連載コラム(リカーズ10月号)
去る6月にザ・ペニンシュラ東京でおこなわれた世界最大級の日本酒コンペティション『SAKE COMPETITION(サケコンペティション)2023』の審査会と表彰式と、それぞれ取材で行ってきました。
サケコンペティションは東京の酒販店が中心となって企画され、サッカー元日本代表の中田英寿氏らが携わり「ブランドによらず消費者が本当においしい日本酒にもっと巡りあえるよう、新しい基準を示したい」という理念のもと2012年からスタートした日本酒の品評会。市販酒のみが対象で、審査は銘柄を隠すブラインド方式。そのため無名であっても、品質が良ければ1位をとるチャンスがあるのです。
この品評会のもうひとつ大きな特徴は、“審査員も審査される”という点。決審へと勝ち進んだ酒に関しては、審査員は2度目の審査となります。予審で「1」とつけた酒に決審で「2」をつけるなど、同じ酒に違う評価をつけると審査員本人が減点対象に。官能評価にブレがあり信頼性に欠ける人は、翌年以降審査員から外されるほど厳しい体制が敷かれています。好き嫌いなどではない、精鋭たちによるフェアな審査が反映されます。だからこそサケコンペティションの結果は、非常に信頼がおけるものといえます。上位入賞すると、酒屋やバイヤーから取引依頼が殺到するのだそうです。日本酒ファンのみならず、国内外のバイヤーなどマーケットからもその結果は注目を集めています。
・・・というわけで、影響力が甚大なこのサケコンペティション。特に決審の現場は、息をのむような緊張感ある空間でした。今回の詳しい結果は割愛するので、わたしが「テレビ愛知」運営日本酒専門サイト「SAKETOMO」に寄稿した記事をごらんください。
なかでも印象に残ったのは、広島県の酒蔵の活躍。「雨後の月」を醸す相原酒造が、純米吟醸部門1位、純米大吟醸部門2位、純米部門7位を獲得したのを含め、全部門を通しベスト10に入った広島酒が7つも。会場がざわつくほどのインパクトある結果でした。
それから前回までは受賞常連蔵や人気銘柄が名を連ねていましたが、今回は宮城県「雪の松島」、山口県「大嶺」、特別賞に輝いた新潟県「峰乃白梅」など、急浮上・新登場した銘柄がいくつもあったことが興味深い点でした。さらに「雪の松島」の関谷杜氏は、就任後まだ2期目の31歳。「大嶺」の秋山社長は今年43歳。酒蔵を復活させて13年。新蔵を建設してからまだ5年。若き情熱とともに将来への希望を感じます。コロナ禍で見えなかったここ3年の取り組みが、味わいの向上や品評会の入賞結果など成果となって表れてきています。
もちろん受賞酒ばかりが素晴らしいわけではありませんが、プロのお墨付きを獲得した受賞酒がキッカケとなり、「他にも飲んでみよう」と日本酒の和が拡がっていくよう心から願っています。
今月の酒蔵
梅乃宿酒造(奈良県)
奈良で日本酒とリキュールを製造する酒蔵。規制緩和された2001年に蒸留焼酎やリキュール製造免許を取得し、翌年から梅酒発売をスタートしたことが蔵の転機に。現在では梅酒以外にもゆずや桃、いちごやレモンなど数々の人気商品を誕生させ、幅広いファンの心を惹きつけている。 1991年に、日本で初めてイギリス人蔵人を採用した酒蔵としても有名。若手社員が企画したコンセプト日本酒の販売や、2022年には新蔵を建設するなど攻めの経営姿勢で業界をけん引し続けている。
以上
庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」10月号より
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?