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「生命保険は出口が大切だよ」という話

こんにちは!

今回は不定期の更新となります。
なぜなら、本日2021年7月1日から保険業界で新たな制度がスタートしたからです!

その名も「生命保険契約照会制度」です!!!

とりあえず、こちらに貼っておきます。


ドヤッ!!!って感じで書きましたが、実際の内容は読んで字の如く、そのまんまです…笑

しかし、このシンプルな名前とは裏腹に、私はこれがとても画期的な制度であり、なおかつ非常に重要な役割を果たすものに今後なっていくと確信しています。

それでは、実際に内容を見ていきましょう!

生命保険の入口と出口

見ていきましょう!と言いつつ、内容をお伝えする前に、事前知識として生命保険の考え方について触れておきたいと思います。

生命保険は「入口と出口」という視点で語られることがよくあるのですが、みなさんも聞いたことはあるでしょうか?

「入口」というのは生命保険に加入する時のことで、反対に「出口」というのは生命保険で何らかの形で給付金などを受け取る時のことです。

「生命保険は入口より出口!」みたいなことはよく言われますが、その理由は単純明快で、誰もが保険料 (契約者がお支払いするお金) を"支払うため"に加入しているわけではなく、何かあった時にお金を"受け取るため"に加入しているからです。

しかし、加入時には直近で目に見えてわかりやすい保険料にばかり目がいきがちで、それだけで加入を決めてしまうと、出口で上手く生命保険が機能せずに後悔してしまうという場合が多くあります。

基本的には「終わりよければ全て良し!」といった感じでしょうか。

私は「入口ありきの出口」や「正しい入口なくして出口なし」思考を推奨しているのですが、これに関してはとーっても深い話でかなりアツくなってしまうので、またの機会に同業者向けに書きたいと思います!笑


保険業界の「在り方」に対する問題提起

さて、ここまでのお話で、生命保険にとって出口って大切なんだなぁ、と感じていただけたかと思います。

それでは、ここでちょっと考えていただきたいのですが、みなさんは自分の家族が加入している生命保険を知っていますか?

内容の詳細まではいいとしても、どこの保険会社でだいたいどんな内容かくらいは把握しているでしょうか?

私の経験では、そもそも家族が生命保険に加入しているかどうかすらもわからない、という方もかなり多い気がします。

そんな時に、例えば一家の大黒柱であるご主人 (契約者=被保険者) に万が一があったら、誰がどこに保険金の請求をすればいいのでしょう…

もちろん保険金受取人が請求するわけですが、保険金受取人が誰なのかすらわからないという場合もあります (実際にそういう家庭も見てきました) 。

「そんなの家族みんなで手分けして、保険会社に手当たり次第で連絡したらいいじゃん!」って思ったそこのあなた!

実は、その方法でご主人が加入していた生命保険を見つけるのは、残念ながらほぼ不可能なんです…

いくつか理由はありますが、まずひとつ目の理由として、現在の生命保険会社は全部で42社もあるからです。

一家の大黒柱が亡くなっていろいろと大変な時に、42社全てに連絡して確認する時間と体力と精神的な余裕はあるでしょうか。

それができたとしても、次の問題があります。

個人情報保護の観点から、各保険会社から保険内容どころか、保険契約の有無すら聞き出すことはできないのです。

契約の有無を含めた保険内容を照会できるのは契約者のみ、というのが基本的なルールだからです。

現在では「ご家族登録制度」などという名称で、登録した家族が代わりに照会できる制度も各保険会社ごとにあったりもしますが、まだまだ普及していないのが現状ですし、そもそもこういう制度をちゃんと登録して活用しようという家庭であれば、家族が加入している生命保険をしっかり把握しているか、それをフォローしてくれる素晴らしい担当者が付いている場合がほとんどです。

参考にジブラルタ生命保険株式会社の「ご家族登録制度」のご案内のURLを貼っておきます。


他に「指定代理請求人」という制度もありますが、こちらも利用できるのは特殊な状況に限られてしまいます。

指定代理請求制度とは、被保険者本人に「特別な事情※1」がある場合、契約者があらかじめ指定した代理人が被保険者に代わって、保険金等を請求できる制度です。代理人を指定する際に、契約者は被保険者の同意を得る必要があります。

※1「特別な事情」とは(ある生命保険会社の例)

(1)傷害または疾病により、保険金等を請求する意思表示ができないとき

(2)治療上の都合により、傷病名または余命の告知を受けていないとき

(3)その他(1)または(2)に準じた状態であるとき

ー生命保険文化センター


また、ここで話をややこしくするのは、厳密に言えば保険金受取人は保険金を請求する権利はあるが、保険内容を照会する権利はないということです。

少しわかりにくいかもしれませんが、事実上は「受取人が当該保険会社に保険契約があることを事前に把握していて初めて保険金を請求することができる」と言っても過言ではありません。

様々な法律やルールが絡んでいて難しい部分ではありますが、「生命保険は出口が大切」と言っておきながら、それでいいのか保険業界…と私も以前から思っていました。

根本的なところの話をすると、家族が加入している生命保険がわからないという状況自体があってはならないのですが、昔ながらの生命保険の販売手法や担当者の質の差が激しいことも少なからず影響を与えているのは間違いありません。

昔は生保営業が職場に出入りして、一家の大黒柱であるご主人側にだけ話をし、受取人である奥様側は何もわからないというような状態で加入することがよくあったと聞いていますし、今でも普通にあるよなぁという感じがします。

ただでさえ難しい生命保険の話で、受取人が蚊帳の外ではそのようになってしまうのは当然と言えるでしょう…

もちろん、担当者の質もそこに絡んできます。

また、一般にはあまり知られていない事実かもしれないのですが、保険金の請求には時効があり、支払事由が発生してから3年など、ある一定期間を経過してしまうと請求ができなくなってしまいます

上記のような保険業界の在り方によって、役に立つはずだった生命保険が機能しないまま終わってしまっていることが今までたくさんあったと思います。

そして、まだまだ課題は多いですが、その問題点を少しずつ解決していってくれそうなのが、今回スタートした制度ということになります。


制度の概要

それでは、制度の概要を見ていきましょう。

詳細に関しては、こちらの生命保険協会のホームページをご覧ください。


まず、この制度が利用できるのは、以下のような理由により生命保険契約の有無がわからない時となります。

平時:親や家族が死亡した時または認知判断能力が低下した時

災害時:災害救助法が適用された地域で被災したことによって死亡した時または行方不明の時

前項でお話した家族の死亡時に限らず、認知判断能力が低下した場合も対象となります。

また、災害時には家族が行方不明になってしまった場合も対象です。

実際にこの制度を利用する場合には、生命保険協会に契約有無の照会を行います。

その際に注意すべきポイントをあげておきます。

・1照会あたり3,000円かかる (災害時はなし)
・提出が必要な書類がある (災害時はなし)
・照会結果は生命保険契約の有無のみ
・照会日時点で有効に継続している契約のみ
・保険種類の調査や保険金等の請求代行はなし
・個人保険のみ対象

その後、保険契約の有無がわかったら、各保険会社に連絡して必要な手続きをとります。

ただし、正当な権利者 (受取人など) からの連絡が必要となります。


今後の課題

前項であげた注意すべきポイントが、そのまま今後の課題となっていきそうです。

やはり1番の課題は、契約の有無がわかっても保険種類まではわからないということでしょう。

せっかく契約があるということがわかったとしても、それが死亡保障なのか医療保障なのか、その保険種類がわからないと、正確な対応ができない可能性もあります。

また、手続きの際に複数の必要書類があるため、それらを準備するのに時間がかかってしまうこともあるかもしれません。

この辺りがさらに改善されてくると、より身近で使いやすい制度に進化していくのではないかなと思うので、ぜひ今後に期待しましょう。


まとめ

今回は保険業界の新しい制度の概要についてお伝えしました。

万が一に役立たなければいけない生命保険ですから、しっかりとその機能が果たされる環境になってほしいと思います。

そのためには、我々担当者の役割も非常に重要になってきます。

入口で判断するために必要な情報をしっかり提供するための確かな知識とスキルや経験

出口に向かっていく中での適切なフォロー

出口での迅速な対応や手続き全般のサポート

担当者がこれら全てを高い基準でできていれば、もしかすると本当はこの制度すら必要ないのかもしれません。

しかし、担当者も人間なのでいつ何があるかはわかりませんし、自然災害を止めることも難しいでしょう。

こういった制度を普及させることは、確実にこの業界を良くしていくことに繋がると思いますし、さらに言えば業界人ではない保険加入者のみなさんも、これをきっかけにせめて自分の周りの保険にだけはもっと関心を持っていただけると、より良い環境になっていくのではないかなと感じています。

これからの保険業界に想いを馳せつつ、今回は終わりにしたいと思います!笑

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!