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世界が動いた瞬間、になればいい/野口英盛監督・横田真人コーチ対談 Vol.1

世界が動く瞬間、それはいつも突然です。

2020年1月1日。積水化学女子陸上競技部は、
中長距離特化型のクラブチーム「TWOLAPS」と
選手コーチング・マネージメントに関する
業務委託契約を締結。
活動拠点こそ違えど、同じ目標を持ち、
共に道を歩み始めました。

それから一年と少し。
チームは駅伝で創部以来最高順位を獲得。
新谷仁美選手も五輪出場内定を勝ち獲りました。

この協力体制がなかったら、
各選手のシーズンベストが5秒や10秒、
違ったかもしれない。
駅伝で頑張れた最後の1歩が、
踏み出せなかったかもしれない。
その1秒・1歩こそが、この取り組みの
成果だったのではないかと、振り返れば思います。

成長はいつも目の前の1歩ずつでしかありません。
選手のことを考えて、考え抜くだけです。
でも、積み重ねた結果、どこにも負けないものが
作れるんじゃないか。
ひょっとしたら世界を動かすような指導の形が
作れるんじゃないか。
そんな風に感じた、積水化学女子陸上競技部と
TWOLAPSの一年を、二人のコーチが振り返りました。

◆1年を振り返って

Q.昨年1月から、お互いに変化のあったこの一年をどう評価していますか

野口:立てた目標としては、優勝を目指しながらの駅伝3位以内と、オリンピック内定が決まったので、概ね良かった年だったという印象です。

横田:新谷に関しては日本記録とオリンピック内定で、選手としての恩返しはできたかなと思っています。卜部は、満足できない結果だったと思いますが、着実にステップアップできていると受け取っています。

Q.積水化学とTWOLAPS。2チームを融合させたチーム運営に挑戦した経緯、当初考えていたことを教えてください。

野口:アジア選手権で同部屋になり、飛行機で帰って、一緒の電車に乗った時、横田から「一緒にできませんか」と提案を受けたんです。一緒にやっていくのは問題なかったので、自分で考えたルールを横田が受け入れてくれるか。あと、会社がどう理解してくれるか、という所でした。

横田:アジア選手権中に色々お話をさせてもらう中で、野口さんなら理解してくれる、相談したら親身になってくれそうだ、と思ったんです。ここまでスムースに進むとは思っていなかったので、スピード感を持って進めてくださったのはすごく有難かったです。

野口:女子だとあまり前例はありませんが、今では男子も役割を分けたりしてるので、これからコーチングに特化した体制も必要な時代になるのかなと、思っていたからね。後は選手がどう感じるか、心配だったぐらいかな。

◆実感しているチームの変化

Q.最初に思い描いた理想に対して、近づいている感覚はありますか?

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野口:私も十数年指導してきて自分の指導のπ(パイ)を、もう少し広げなければと思っていました。やるからには、世界で戦える選手を作りたい。だから、マネジメントや経営も知ってる横田と繋がることで、うちのチームも私も新しい刺激を受けて、変われるんじゃないかなと思ったんです。

横田:リスクを取ってでも得られる成果があると思って、決められた感じですか。

野口:私は”監督が全て”というのが、好きじゃなくて。別に誰がコーチしても同じ目標にたどり着けるなら誰がやってもいい。だから、リスクはあまり考えていませんでした。
結果としてコロナになり、もっと横田にコーチングしてもらいたかったのもあるけど、逆に少し違った視点で選手面談やミーティングを開いてくれた。今は選手も、チームについて話すことが多くなって良くなってきたと思います。

横田:最初想像していたものとは少し違った形で、化学反応が起き始めている感じですかね。

野口:それはあると思う。この前、宇田川がキャプテンとして新谷と話したいって自分から言ってきた。チームとして距離が離れているし、練習も一緒にできないけど、チームになろうとしてるのは受け取れる。もっとうちの選手が積極的に行ってもいいかなとは思うけどね(笑)

横田:お互い遠慮はちょっとありますよね。僕たちコーチも含めて。それはこれからの課題かなとも思います。

◆選手たちに火がついた瞬間

Q.チーム改革への不安はなかったですか?

野口:心配だったのは選手の気持ちでした。でも、部長が「オリンピックや世界陸上を目指す選手と一緒にやれるのに、それを嫌がるような選手だったらそこまでの選手だったって言うことだから」って言ってくれた。それで自分も、「なるほど」と思えたのはありますね。

横田:実際に選手の反応はどうですか。僕とかマネージャーの山田が介入することで変わったり、選手に良い影響はありましたか。

野口:良い影響で言うなら、最初は駅伝で本当に勝てると、誰も信じてなかったと思う。でも、新谷がプリンセス駅伝で爆走して。あれぐらいから、チームに火がついて変わってきた。そんな感覚はあったね。

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横田:野口さんから見て、特に新谷の存在が例えば佐藤に良い影響を及ぼしてると見ていますか。

野口:一緒のチームに自分より強い選手がいるのは、彼女の中でも刺激になっていると思う。他のチームだったらあまり感じないと思うけど、新谷がSNSで発信して、結果を出すところを見て、そういう選手になりたいと言うようになったかな。

横田:逆に新谷は、日本選手権で一緒に走ってくれた佐藤や、話を聞きに来てくれた宇田川に「ありがとう」と言っている。宇田川の中にもチームを良くしたい気持ちがあると、新谷自身が感じて、それが多分嬉しいんだと思う。僕は彼女の引退する前の事は断片的にしか知らないけど、結構孤独だったんだと思う。だから、佐藤や宇田川とかチームメイトがいるのは、彼女の力になったはず。それは正直、あまり考えていなかった部分ですね。

野口:色々な大会を通して、ひとつのチームになっていった感覚はあるね。

横田:一緒に練習しないとそういう気持ちって、芽生えなさそうじゃないですか。でも、時間を共有していなくても思いが同じ方向に向いているだけで、組織は良い方に向かうんだと、彼女たちを見て思いましたね。それは僕の中で、思わぬプラス材料だったと思っています。

Vol.2に続く➡


文:守本和宏/ナノ・アソシエーション
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