見出し画像

「マラソンはもう嫌です」の真意/新谷仁美①

東京マラソンで13年ぶりのフルマラソン出場。
自己ベストを10分近く更新する、
日本歴代6位の2時間21分17秒でフィニッシュ。
MGC出場権を獲得した新谷仁美選手。
7月のオレゴン世界陸上の
マラソン代表にも選ばれました。

その中で物議を醸したのが、
フィニッシュ後の発言。
「マラソンはもう嫌です」でした。

当然、マラソンの素晴らしさや、
マラソン好きな方々を、
否定するわけでもありません。

その彼女らしい発言を、今さら取り上げるのは
無粋かとも思いました。

ただ、その真意に触れることで、
新たな発見があるかもしれない。
彼女の気持ちを知って、
もっと彼女を好きになるかもしれない。
そう思って、発言の真意が
どこにあったのか聞いたのです。

また走ろうという簡単な発言はできない

「本音ではあります。あの後もう1本走れって言われたら、絶対に嫌だって言う」

そう話す、新谷選手。
しかし、その裏にはプロのアスリート
としての責任感がありました。

「マラソンを愛して止まない方には、もしかしたら私の気持ちは理解できないかもしれません。ただ、どうしても結果を追わなければならない選手として、私たちは責任を背負って走っているので、そのプレッシャーが大きい。だから、また走ろうという簡単な発言はできないです」
そして、続けます。

「あとは根本的に自分が、走ることやスポーツが苦手という気持ちが先に出てしまう。この(マラソン練習に費やした)3カ月間は、気持ちの面でも東京オリンピックの結果から立て直すために挑戦した時間でした。だから、もしまた結果が出なければ、また落ち込んじゃうのかなって考えてしまう、そのプレッシャーもあった。その中で練習してきて、結果に対して考えると“滅入るな”と気持ち的にも思ったんです」

本当は最後まで好きで終われたら良かった

彼女が素晴らしいアスリートだと思う
理由のひとつが、しっかりと第三者の目も
意識しているところです。

「新谷節みたいな発言でしたけど」と聞くと、
彼女はこう答えました。

「よく捉えてもらえれば、私が普段言っていることをよく聞いてくれている方、インタビューなどを見てくださっている方は、多分『また新谷が言ってる』って軽い感じで聞き取れると思うんですけど、全員がそうじゃない」

「スポーツ選手って、みんな好きでやっている人が多いよね、っていう見方だと思うんです。もちろん、私も好きで始めたことで、本当は最後まで好きで終わりたかった。今も好きな気持ちを継続して、トレーニングできれば一番ですけど、そうはならなかった。その意味では初見の方に伝わらない、もしかしたら、不快に感じられた方も多いのかなとは思います。ただ、率直な私の気持ちではあります」

マラソンランナーへの敬意

その発言の中には、
マラソンを走る全ての方々への
リスペクトがある気がしたのです。

「それはありますが、自分からリスペクトと言うと、わざとらしいというか。何でもかんでも尊敬してますと堂々と言う台詞かな、というのがあって。私は尊敬ってそんなラフに使う言葉でもないと思っていて、自分にとっては限られた人たちに使う言葉。重く捉えているからこそ、軽々しく言えない部分があります」

「ただ、気持ちの中ではすごいなって思います。よく追求できるな、何度も挑戦されている方でその場の雰囲気を楽しめる余裕があるのはよいことだなと思います。私は42km走り切ることでいっぱいいっぱいで、余裕感は全くゼロでしたから(笑)」

と彼女の率直な気持ちを語ってくれました。


文:守本和宏/ナノ・アソシエーション
--------------
積水化学女子陸上競技部 セキスイフェアリーズHP 
https://www.sekisui.co.jp/company/rikujou/
🔔積水化学女子陸上競技部Twitter
👍積水化学女子陸上競技部Facebook
📗積水化学女子陸上競技部note

ご声援よろしくお願いします!!
--------------