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「地域おこし」の理想的な形とは

東京一極集中の今、都会ばかりに目が向いてしまいがちではあるが、当然日本には都会以外の地域、地方がある。最近では「地方創生」「地域おこし」みたいに都会以外を盛り上げようという動きがちらほら見られるが、地方を盛り上げる理想的な方法は何なのか、少し考えてみた。

東京からちょっと視線をずらせば

自分は「生粋の東京っ子」だ。東京生まれ、東京育ち。23区内の実家で暮らし、進学や就職で他県に移動したことはない。両親も東京出身なので、”田舎に帰省”したこともない。

いわば東京に幽閉されている、と思わなくもない。たまたま全てが事足りる大都会で生まれたがゆえに、「放っておいたらそこしか知り得ない人」なのだ。
旅好きはその反動だろうか。小さい頃から遠出は好きだったし、社会人になっても隙あらば日本列島を右往左往している。

いろんな地域を見、人に触れることを通して「栄えているとはいえ、東京が全てじゃない」「全国に面白い地域がたくさんある」と確信するようになった。どこに行っても土着の何かがあり、それぞれの人の生活がある。
しかし人の少ない田舎ともなると、過疎化や少子高齢化、限界集落といった不都合な真実も厳然と存在している。

「結局、東京」が避けられないのは事実

「東京一極集中」はずいぶん前から問題視されている。おそらく色々な解決策が講じられていると思うが、便利な暮らしを求めるなら都会に住むという選択になるのは不可避な気がする。合理的に暮らそうと思ったら都会に敵わない。すぐ近くでショッピングができて、娯楽があって、仕事も豊富なのだから。第一次産業に携わっているなど「田舎に住まなきゃいけない理由」がないかぎり人は都市部に集まる。資本主義の側面というべきか。

「地域創生」という言葉は、時に啓蒙チックで一方的

東京からとある地方に移住した人に聞いた話では、「地方創生」という言葉には”先進的な中央が遅れている僻地に手を差し伸べてあげる”みたいなニュアンスがあるらしい。余所者が勝手に「どうにかしてあげる」と策を講じるスタンスは、地域の人の「別に求めていない、このままでいい」「そういうことじゃない」という温度差を生みかねない、とのことだ。
都会にずっといる自分は「地方」という言葉から過疎化や高齢化など、ネガティブな問題が思い浮かび、地方創生とはそれへの解決策を考えるという発想になっていた。そのぶん、この考え方を初めて知ったときは目から鱗だったし、知らず知らず上から目線な態度になってしまっていた、と痛感した。

今、すでにあるものを誇る

これこそが、地域を舞台にやるべきことだと思う。それぞれの地域には、そこにしかない魅力がある。分かりやすい観光地的なスポットでなくとも、その地が紡いできた歴史や伝統、産業は絶対にあるはずだ。
問題解決や、何か新しい名所を作るというより、ありのままを貴重な財産として誇るのが、真に唯一無二のその地のアピールポイントであり、地域活性化につながると思う。

「私たち、楽しそうでしょ」を発信する

上で述べたことを実践するには、「発信者自身がそこにいて、現地の日常を楽しんでいることを伝える」のがベストだと思う。
風土や伝統、歴史などは、そこに根差して生活することで実感できる。繰り返すようだが、重要なのは「外から何かをしてあげる」のではない。「自分もその地域の当事者になる」ことなのだ。

それをするにあたり、クリエイターがいると強力な存在になりうる。その土地にインスピレーションを得た何らかの作品や、地元民にしかない視点で作られたガイドブックなどは、よその人から見てキラキラと輝く魅力に十分なりうるだろう。

デザイナーのナガオカケンメイ氏が主導して作った『d design travel』は、それを実践した例と言えるだろう。「そこにしかないもの」、その土地「らしさ」を見つけ出し、はっきりと差別化するという理念のもと発刊され、その役割を担う存在として「デザイナー」を位置付けている。


皆で何かを作ること

その地の伝統文化に触れたり、産業に携わったり、古民家をDIYリノベしたりといった活動は多くの地域でみられるが、大事なのは「一人でやらずに皆で助け合うこと」だ。皆が一つのプロジェクトに参画して一員となり、何か一つのものを、ひいては地域そのものを集団で作っていくことで、皆が「自分の住むまちの作り手」という当事者意識を持つことができるはずだ。


さいごに:余所者にこそできることがある 

地域の魅力は灯台下暗しで、そこに住んでるからこそ見えなくなってしまうこともあるだろう。
デザイナーの中には、都市ではなく地方や里山を拠点に活動する人がいる。繰り返すようだが、こういったタイプの人が地域の活性化の鍵を握っていると自分は信じている。その地に根を下ろし、地元民が気づいていない魅力に外からの視点で気づき、それを伝える役目を果たす彼らは、クリエイティブな表現力と、支持されるコンテンツで地域の印象を高める戦略性を持っている。


都会は作れるが、田舎は作り出すことができない。もれなく唯一無二の魅力がある、全国の埋もれた無数の小さなまちが、そこに住む人がその地を誇れるような地になれることを期待している。

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