映画「DEVILMAN デビルマン」(2004年/日本)を劇場公開時に見たときの衝撃を書き残しておく

初めての皆さんこんにちは、私はエロゲーのシナリオライターをやっております関戸ゆいぎと申します。映画好きでもあり、今もだいたい毎週1本ぐらい映画を見に行っています。いやあ、映画って本当にイイもんですね! そんなに金も時間も使わないで楽しめる、いい趣味でありいい娯楽だと感心してます。

ところが、その映画の中には、時々魔物が潜んでいるわけですよ―――

以下の文は、2004年11月に、今は無くなった愛知県の春日井コロナという映画館にて、あの有名な底抜け映画『デビルマン』を見てしまった時の鑑賞日記です。
当時、あまりのショックに「こんな映画が世の中にあったとことを記録しておかねば」と、熱に浮かされるように書きなぐった一文ですが、アレに出会ってしまった時の衝撃がリアルタイムにお伝えできればと、多少の注釈を加えてそのまま転載します。

私をこの映画鑑賞に引き込んだのは、長年の映画友人である<エス師匠>氏。氏は年間400本近くの映画を見続けている映画マニアですが、それだけの本数を見るということは選り好みせず手当たりしだい見なきゃいけないわけでして、当然、その中にはとんでもない底抜けズッコケ映画もあるわけで……彼にお供して見に行ったズッコケ映画は何本あったか数知れません。(もちろん、その数倍の神作品にも出会いました。ありがとうエス師匠さん!)

なお、資料を読むと『デビルマン』の公開は2004年10月なのですが、私の日記では2005年に鑑賞した、となっています。ショックで書き間違えたのか、愛知県では公開が遅れたのか、その点の記憶が曖昧ですが、ここでは混乱を避けるために、2004年に記したものとしておきます。


【映画感想】見ちゃったよ……「デビルマン」(2004年日本 監督:那須博之)

〜誰も知らない 知らんほうがイイ〜 (文: 被害観客の一人、関戸ゆいぎ 2004年記す)

見たよ、見ちゃいましたよ、映画「デビルマン」。まさしく、日本映画界が打ち建てた十字架(※金字塔ニ非ズ)の名に相応しい。「ドラゴンヘッド」など、日本映画の数々の修羅場をくぐり抜けて来たつわ者であるエス師匠さん(※私の映画友達、年間400本ぐらい映画を観ている猛者)をして「今年最強の一本」と言わしめた無敵ぶり。早々に打ち切られてDVD化で手直しされてしまう前に、ぜひ一度、体験してほしい。そして、脳裏に焼き付けてほしい。さあ、皆直ぐに映画館へレッツゴー!―――と、その前にいくつかご注意を。

1:見に行くのは、11月1日にしましょう
映画の日ですから、全国の映画館で1000円で見れます。映画会社をつけあがらせないためにも、支払う金は最小限に抑えましょう。名古屋近郊の方なら、コロナ系列の映画館へどうぞ。レイトショー、サービスデー(月曜は男性、水曜は女性が1000円で見れます)を活用しましょう。私は、当然1000円で見ましたよ。1800円払ってたら、どうしてそのお金を新潟の地震(※注:2004年10月23日に発生した新潟県中越地震の事)への義援金に使わなかったかと自分を責めるところです。

2:おやつは必須
この映画で、そんなこと気にする観客はいないと思いますが、一応映画鑑賞時のマナーとして、煎餅やポテチなどの音がするスナックは止めましょう。飴玉とか、定番のポップコーンが良いでしょう。飲み物は、お好きな物を。トイレが近くなると困るから……なんて気遣いは、今回は不要です。

3:お連れ様は選びましょう
一人で見にいってはいけません。鑑賞後のフラストレーションのはけ口として、心行くまで語り合える気のおけない相手と一緒に見に行きましょう。ただし、カップルで見に行くのは、控えた方が良いでしょう。「何でこんな映画をデートで見なきゃいけないのよ」とケンカになって、破局した例も聞いています。また、お子様に見せてはいけません。「これが映画って物なんだ、へぇ〜」と勘違いさせては、その子の一生が台無しです。それでは、初の映画体験が「宇宙からのメッセージ」だった僕なんかよりも、相当アレです。

4:気を紛らす物を一つ
おやつもそうですが、気を紛らす物を持って行くと、きっと役立つでしょう。残念ながら館内は暗いので、本は読めません。音を消したゲームボーイが良いかも知れません。これも、マナーとして、周囲に迷惑をかけない範囲に留めましょう。私は、携帯電話で友人にメール打ってました。光が漏れると周りに迷惑なので、ジャケットをすっぽり被ります。それじゃぁ、スクリーンが見れないだろうって?  その通りですが、何 か 不 都 合 で も ?
 

●作品解説

誰も知らない知られちゃいけないけど誰でも知っている、かの傑作「デビルマン」の初実写作品。それも、パンツはいてたTV版の方じゃ無く、原作漫画の方の、です。
かの漫画は、まさしく漫画というメディアの金字塔、まごうことなき大傑作です。永井豪氏の圧倒的な筆力に、徹底的に打ちのめされた事がある読者なら、嫌がおうでもこの映画化に期待しない訳にいきません。
―――最新のSFX技術とハイクオリティなリアル3D映像が、実写か不可能と言われた世界観をスクリーンに!
――ハリウッドから何度も映画化の話が持ち込まれたが、あえて日本の映画界が10億円という巨費を投じて堂 々 の映像化に挑む!
――全世界 40 カ国へ配給決定!

とか、豪勢なアオリ文句が威勢良いです。

●果たして、その実態とは?

 ワクワクしながら、待つこと数分。予告も終わり、ブザーが鳴って、本編が始まります。これから起こる悲劇も知らぬ私――おお、まるで漫画の不動明のような心境です。
 先ず、冒頭で登場するのは二人の幼子。暖炉の前で(この表現もチープだが)妖怪の絵本を二人で微笑ましく読んでいます……でも、どうして一方の子は、頭に天花粉被ってるんだろう? ……しばらくして、それが銀髪を表現しているらしい事に気が付いた僕は、「ひょっとして―――やばい?」と匂いを感じました。多分、後ろの席ではエス師匠がニヤ~リとほくそ笑んでいたでしょう。
で、主役二人の登場です。不動明君と、飛鳥了君。原作には無いアレンジですが、双子をキャスティングしています。このアイディアは、なかなか悪くない、数少ない評価点です。見分けがつくように、飛鳥は髪を染めています。
で、二人が喋り始めると―――ド下手ッ。というか、演技つけて台詞を喋るということを、変な抑揚つけて叫ぶことだと勘違いしてる気がします。監督、演技指導しろよ。さもなきゃ共演者の誰か、教えて上げれば良いのに―――と思ったら、登場する大半の役者がそうなので、まあ、そういう現場ならしょうがないかな。(その中で宇崎竜堂さんは、結構巧かった方ですけど、この人もゴジラの時の方が気合入ってたよな。まあ、奥さんを阿木耀子さんが演じてるというお遊びがあって、それは割と微笑ましくて良かったかな。演技じゃない分、ある意味自然に良い夫婦振りだったし)。
ストーリーは、原作漫画のストーリーをなぞって行きます。と言うより、なぞるだけ。そのなぞり方も、原作のエピソードを映像化するなんて手間かけてくれるわけじゃ無く、登場人物が台詞で説明するだけ。「さっき、職場でデーモン捜索隊がやってきてさぁ、何人か連れてかれちゃったよ」と、話してくれるだけで、画面にも出やしねぇ。世界中を巻き込んだハルマゲドン戦争なんて、ボブ・サップが「今日は1万人が死にました」ってTVでアナウンスしてくれるだけでお仕舞いかよ。
オリジナリティを要求しないから、永井先生の描いた漫画をそのまま絵コンテにしてくれりゃいいのに。これが脚本通りとしたら、書いた人は原作を読んでるらしいけど、根本的な読解力が無いとしか思えません。ひょっとして、漫画を読んだの始めて?漫画ってのは、台詞と一緒に、絵も読むモノなんですけど……
ま、後は、原作漫画のストーリーを、感動と迫力を取り除いて、たらたらと説明してくれる、というモノです。あ、一応ネタバレですが、ミーコとススム君は原作と違って生き延びます

那須博之監督は公開前の記者会見で「日本映画の台風の目になればと思っていたが、今年は本当に台風が来てしまった」とか冗談言ってますが、地震まで連れてきてどうする。

●僕が選んだ名場面

ここで、僕の脳裏(※心に、ではありません)に残った名場面をいくつかご紹介しましょう。

・どこに消えた?富永シレーヌさん
デビルマンとしょぼしょぼと殴り合って旧交を温めた後、それなりに空中戦を披露してくれたシレーヌさん。一瞬だけ戦闘形態になって1カット0.5秒ほどの視聴者サービスに努めてくれた後、なんとなく居なくなっちゃって、そのまま出てきませんでした。―――あれ?デビルマンとの決着は? カムイの登場は? ひょっとして、このシレーヌの登場は、始球式みたいなもんでしょうか。それとも、富永愛さんは、これがどんな映画か分かって途中でばっくれた? それならそれで、なかなかの慧眼です。

・警官に変装して商店街のオバちゃんを撃ち殺すサタンくん(17歳)
「俺は人間が嫌いだ。だから殺してやる」と捨てバチな台詞を言い残して立ち去るサタンの飛鳥君。ホントに不良ですねキミは。で、しばらく画面に出なくて忘れかけてたら(ホントに忘れてました、それくらい劇中の間が空いている)、次に登場すると、飛鳥君は警官に変装して、商店街の2階から道路に逃げ惑うオバちゃんたちを一人づつ撃ち殺していました。何をしているんだ、と明君に詰め寄られると「サタンだからな」……うん、まあ、有言実行なのは認めるけどさ、お前、自分で言ってるようにサタンじゃないの? 超能力でドカーンとやっちまわないの? さっき「全人類を滅ぼす」って宣言したばっかりだろ。そんな小まめに殺してて、間に合うのか? 一発撃つのに一秒、一日8時間労働して毎日2万8千8百人づつ撃ち殺していって、60億人抹殺するのに822年。それまでに地球人口は40倍ぐらいになるな。寿命が無いせいか、やたら気が長いサタン君です。さすが、3億年前の地層から出てきたお方は我々庶民とはスケールが違いますな。

・暴徒が取り巻く中、牧村家の家族団欒
 最近物騒だからご町内の見回りをしよう、という町内会の取り決めを無下にしたせいでしょうか(※注:少し前にそういうシーンがありますので、ちょっと気を抜くと話がそう繋がっているように見えます)、百人ぐらいの暴徒が牧村家をぐるりと取り巻きます。が、フレンドリーな牧村一家は、雨戸を降ろすことも無く、カーテンさえも開けっ放しなウェルカムな人達。目の前の窓の外では得物をもった暴徒が今から自分たちをリンチにかけようとしていますので、それを見て、家族思いの優しい宇崎竜堂お父さんは、3本あった包丁をそれぞれに手渡します。もう一度言いますが、このシーン、本当に暴徒みんなが見ている目の前でやってるんです。暴徒も礼儀正しいもんです。家族の会話には邪魔入れちゃいけないな、と気遣ってくれたのでしょう。「美樹、お前は二階に隠れていなさい」って言われて、素直に二階に上がる美樹ちゃん。娘のその後ろ姿を見守る阿木耀子お母さん。勿論、暴徒の人達も見守っています。

・親御さんに謝る美樹ちゃんの最後
で、まあ、途中にリンチだのミーコのキルビル&ガンカタだの明君の復活などガチャガチャ入りますが、原作どおりきっちり死ぬ美樹ちゃん。で、サイコメトリーなのか携帯のムービーメールなのか、フラッシュバックのように映される美樹ちゃんの最後。タクシーの運ちゃんふうのおっちゃんに切りかかるも、持っていた包丁を取り上げられて返り討ちに遭います。ベッドに倒れ込みながら、もう逃げられぬと悟った美樹ちゃん、最後に
「お父さん、お母さん、ごめんなさい、私生き延びることができませんでした〜」
いまわの際で、大変礼儀正しく、立派な娘さんです。先立つ不幸をお許しください……と続かなかったのは、そのちょっと前にご両親が先立って行かれてましたからね、ハイ。
生首になっちゃうのは、時事的にやばかったかもね(※注:ちょうどこの文を書いてた頃に奈良小1女児殺害事件が起こったのです)

・ホントに着てた変なT シャツ
昔のTVアニメ版デビルマンで不動明くんは右胸に「A」のアルファベット文字を描いた昭和テイストバリバリのダサいTシャツを愛用しているのですが、これとおんなじTシャツを劇中で着てるんで、おじさん懐かしさのあまりにちょっとコーヒー噴いたよ。こういう馬鹿ネタに、10億円の予算が削られていったんだろうなぁ

・永井豪先生、2回も出ます
キューティーハニーの時は1回しか出てくれなかったのに、この映画じゃ2回も出てきてくれます。ってことは、やっぱこっちの方がお好き? いや、それならそうで、そんな悲しそうな顔で出てくること無いじゃないですか、先生。それとも、僕らに何か言いたいんですか? それならそれで、はっきりおっしゃってくださいよ〜

これ以外にも、いろいろと―――

・あれぇ、ボク、カネゴンに―――いやもとい、デーモンになっちゃったぁ、の悪魔合体シーン。トドメが「ハッピーバースデーデビルマン」。ちっともハッピーじゃねえよ。

・ジンメンに食われた友人・牛川君を捜す明君、何故か浜辺で波打ち際を探す。思い余って入水自殺でもすんのか? キミ、そんなに牛川くん好きだったの? でも明くんはその直後に、葛藤のみじんも感じさせずにジンメンぶち殺します。哀れ牛川君

・牧村お父さんに正体がばれて、天を仰いで感嘆する明君の叫び「ほわーん」(※「フヘァ~」とも聞こえる) 気の抜けたというか魂が抜けるような力のない雄叫びに、思わず寝てた私の目が冷めました。覚めたんじゃなくて冷めたのよ。

・雨が降りつつ日が照り、夜で昼な、奇々怪々な異常気象ぶりが世紀末っぽい雰囲気を醸し出す。などなど、突っ込みどころと迷場面が目白押しだ。見逃すなよ。

●考察:なんでこうなっちゃったんだろう?


いったいぜんたい、何をどうするとこんな映画が出来て、しかもそれが配給会社の厳しい目をくぐり抜けて上映されちゃうのか、そこんところを考えてみると、いろいろ楽しくなってきます。

理由その1:低予算なんだからしょうがないんじゃないかな
10億円しか制作費がかけれなかったそうです。スターウォーズが125億円、タイタニックが400億円かかるのに―――スチームボーイが24億だっけ? 押井守のイノセントが、14億か? アニメでこんなにかかるのに、それっぽっちじゃぁ…………でも、そう言えば、『CASSHERN』て6億円だっけ? あれで紀理谷監督は「金持ちだからっていい気になって無駄金使い過ぎ」とか三文雑誌に叩かれてたっけ。庵野秀明のキューティーハニーは3億円ぐらいだった記憶が。「俺達の映画を、キャシャーンなんてあんな芸術家の自己満足みたいな映画や、キューティーハニーみたいなジャリ向けオタク映画と一緒にしないでくれ!」という監督の怒りの声が聞こえそうですので、これ以上深く考えないでおこう。

・理由その2:2時間では、あの大作ドラマを収めきれないだろう
うん、2時間の枠の中に、デビルマン全5巻(コミックス版)を詰め込むのは至難の業だろう。それは、心から同意する。……でもさ、この映画程度の内容なら、1時間でできるんじゃない? サラッと見ても、30分はカットできるシーンがあるな。仮面ライダーや戦隊モノの手慣れた東映スタッフなら、前後編2話、CM抜きで正味50分できっちり纏められるでしょうね。

理由その3:監督が那須博之、脚本が那須真知子。この二人、夫婦なんでしょ? それって―――
言うなっ!聞くなっ!その手の話は日本映画業界最大のタブーだぞ。
まあ、どうしても気になってこの監督の過去作があるか調べて見たら、モー娘。の「ピンチランナー」とか「ビーバップハイスクール」など、けっこう撮ってます。経歴で言うとベテランに属するのに。返り見ると、キャシャーンの紀理谷監督は、デビュー作にしてあれだけの映像センスと的確な演出力を見せたのですね。やっぱ凄いわ、あの人。

●表彰―――声援を送りたい人たち


まあ、そんなごみ箱の中でも精一杯咲く花はあるわけで、槙原展之さんが歌うようにそれはとても人生って素晴らしい。そんな人には心からエールを贈ります。

表彰―――CGさんへ85点
一人で頑張って盛り上げてくれた人だと思います。プロの仕事としては粗が目立つ、という意見も聞きます(ライティングとか、カット割とか)が、この映画の現場の中で、頑張ろうとする姿勢を見せてくれただけでもあなたは偉いと思います。T-VISUALという手法は結構いい感じ。
減点15点は、何故富永愛をオッパイ丸出しにしなかったんだことです。どうせCGなんだから、遠慮せずもっと盛大にやっちゃってくれれば良いのに……あなたが作ったシレーヌのポスターは、最高の出来でした。でも、あれに騙されて見にいっちゃたんだよなぁ、俺は―――そういう意味では罪深い。

表彰―――ミーコ役の渋谷飛鳥さん85点
ちゃんと演技が出来るだけでも、この映画では貴重ですが、変な羽根をつけさせられたりトレードマークの痣を消されちゃったりと、それが可愛いつもりなんかい監督、と要らぬ不幸を一人で背負わされたのを撥ね除けるような真摯さに心うたれます。減点分15点は、キルビル分ってことで。

ススム君役90点
この子役の子の名前を調べたんだけど、役者名がどこにも書いてない(※注)ひょっとして、名前を載せるのを拒否したんでしょうか? 多分、この映画の出演者の中で、この子だけが演技の本質を掴もうと努力していると思います。それがかえって可哀相でした―――子役の身では、ダスティ・ホフマンみたいに共演の演技に腹立てて演技指導する事も出来ないしね……(「フック」ではティンカーベル役のジュリア・ロバーツがダスティン・ホフマンにとっ捕まって、みっちり演技指導されて現場で泣き出したそうです。その後、彼女はアカデミー女優賞を取るまでに成長した訳ですが)。
あえて10点減点したのは、こんな映画に出なければならなかった君の経歴に敬意を表してのことです。いつか、この10点を熨斗つけて、君に110点を贈れる日がくることを、心から期待しています。
(※注:……と書いていたこの時は、このススム君役の少年が、あの染谷将太さんだとは全く知らなかったのです。その後の染谷さんのご活躍は皆さん知っての通り、今や日本映画の若手名優の一人です。天晴です染谷さん!この時の10点を熨斗付け利子付けして110億満点にしてお返しします!)


●鑑賞後に―――

ここまでで、映画「デビルマン」の凄まじさの一端を感じ取ってもらえたでしょうか?

普通、スタッフロールが流れると、席を立つ観客が多いものなのですがここまでくると、誰も席を立とうとしません。まるで、スタッフ全員の名前を覚えて、後で仕返ししてやろうと凝視するかのごとくです。本音は、気力が尽きてすぐ動く気にもなれなかったのですが。

劇場が明るくなると、後ろに座っていたエス師匠さんがニヤ~と満面の笑みを浮かべています。あ、会心の出来だったんだな。
「(エス師匠的には)どうです?」
と聞くと、彼は
「まさか、ここまで(すごい?ひどい?)とはねえ」
とニヤリ。そしてもう一言
「記録更新です」
何のレコードの? どんな記録なのか予想つくけど。でも、この映画で何と言っても素晴らしいのは、鑑賞後、すべての観客が思いを一つにできることでしょう。
トイレに入っていたら、二人連れの学生が「こんなの上映してるから日本映画に客が入らないんだよっ!」「お隣の韓国映画見て、恥じるところはないのかよ」とすごい勢いで語り合っていました。(ちょうどこの時、隣のスクリーンでは韓国映画『ブラザーフッド』が上映中でした。良い映画だったなあ……)―――わかる、わかるよ、俺も同じだ、同じ思いだ。ララァ、時が見えるよ……思わず、その二人の肩を叩いて励まし合おうかと思いましたね。同じ山を登る登山者が、声を掛け合うような連帯感が、そこにはありました。
あなたも、映画館を出たところで、苦虫噛み潰したり、呆然とした顔をした人に、思い切って声をかけてみましょう。向こうだって、何か言いたくてムズムズしているはず。
「よかったら、その辺の喫茶店で、今の映画について語り合いません?」
と勧めてみましょう。きっと心の底から語り合えるステキな出会いがあなたを待っているはず。ラッキーカラーは黒、キーワードは「サタンだからな」
そして夕日を見ながらみんなで叫ぼう、「ほわーん」と。

――――以上、2004年11月に愛知名古屋にて記す、関戸ゆいぎ

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