『願いがかなうぐつぐつカクテル』をみました

【私の感想】
他のお客さんの反応で芝居が分かることもある
生だからこそ楽しめる『緩さ』

【新国立劇場小劇場へのアクセス】とても行きやすくなった!

【公演概要】
『願いがかなうぐつぐつカクテル』
原作・上演台本:ミヒャエル・エンデ
翻訳:高橋文子
演出:小山ゆうな
キャスト:北村有起哉 松尾諭 森下能幸 林田航平 あめくみちこ 花王おさむ
会場:新国立劇場小劇場
公演日程:7月9日~7月26日
公演詳細:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_night_of_wishes/

3カ月半ぶりにリアルな劇場で芝居を観た。観客は全員マスク着用で、役者は全員フェイスガードという状況での初めての観劇体験だった。物理的に息苦しい感じはしたものの、生で人が集まって同じ作品を共有する、という面白さを感じることができた。内容的にも『生』こその利点というものを改めて考えさせられた。

主人公は世界中に不幸をもたらすために魔法の毒薬を作る博士。幕が開いた初っ端から「世界中に病気を広める」とか「洪水を起こす」ことが「私の仕事だ」と語るセリフがある。お話としては年末の寒い冬の設定なのだが、そんな現実とのずれを忘れてしまうほど、今の状況を思い起こさせるセリフが怖いぐらいだった。
この博士の悪だくみを邪魔しようと、ユニークな猫とカラスがタッグを組んで奮闘したり、博士と同じく悪魔と契約をしているおばさんがやってきたり、ファンタジーあふれる、笑いの多い作品だった。

生である利点として感じた一つめは、見えない私にとっては客席の反応も芝居を観る一助になっているということだ。今回特にコメディーチックな演出が強く、ちょっとした小ネタ的な動きや小物を使うことが多かった。そんな時に客席に笑いが起きたり驚いたような反応があることで「こんなことをしたのかな」と想像できたり、何が起こっているかは分からなくても全体的な芝居の雰囲気をつかむことができた。今まで自分でも気づかなかったが、観客は芝居と観客をもみているということを、今回改めて発見した。

また、生だからこそ許容される雰囲気があることも改めて発見した。質が低いという意味ではなく、緩さというか、その場限りの雰囲気が生の演劇の面白さでもあるのかも知れない。依然小山さんの演出作品を観たときに、役者がちょっと素に戻ってふざけている雰囲気のシーンがあって、私は内輪ネタっぽいと感じてあまり好きではなかった。が、今回好きなシーンの一つに主演の北村さんがやはり博士という役から離れて素的な発言をするシーンを思い出す。内輪っぽいけれど、自分もこの輪の中にいるような感覚でみていた。また、この作品は全体的に緩い雰囲気に包まれているのが、良いと思えた。
オンライン演劇ではなかなか参加者としての感覚は得られにくい。同じ場にいる、というのは数パーセント作品の一部でもある、という感覚が生まれる。私はしばらく『生』を体験していなかったからこそ、作品の一部という感覚を強く感じ、今までは楽しめなかった内輪っぽい緩さを良いと思えたのだと思う。

自粛明けにふさわしい、生で観たからこそ面白い芝居だった。コロナ対策的な部分も世界観に合うように作られていて、今この作品に出会えたことをうれしく思う。

【新国立劇場小劇場へのアクセス】
新国立劇場までの行き方は、『ことばの道案内』というサイトに掲載されており、視覚障害者が初見でも自力でたどり着くことができる、と思う。
以下がその言葉の地図のページである。

https://walkingnavi.com/text_map.php?area=1&rno=100&lang=ja

しかし、一つ悩ましいことがある。この道案内は地上1階の正面入り口、チケットカウンターまで誘導しているのだが、小劇場は地下1回にあるため、小劇場をみに行きたい場合は1階まで上がるのは遠回りなのだ。
それを分かっていても、今までは点字ブロックが敷設されていなかったため近道は難しかった。小劇場の前に噴水があり、一人で歩くと落ちる可能性があったからだ。
しかし!この度、小劇場までの道のりに点字ブロックが敷設された!こんなにうれしいことはない。これで噴水に怯えずに芝居を観に行ける。
以上のページにある12の踊り場、もしくは14の踊り場から左に曲がる点字ブロックができた。いくつ階段を上ると地下1階に着くか忘れてしまったのだが、点字ブロックの分岐は1か所しかないはずなので、階段を上って1回目の分岐した点字ブロックをみつけてもらいたい。
※追記:後日確認したところ、12の踊り場から点字ブロックは分岐していた。地下1階に当たるフロアは、上記の12の階である。
それをつたって行けば小劇場に着くようになっている。参考までに、元からのとは違い分岐する点字ブロックの材質は、金属っぽい叩くと音が鳴るタイプの点字ブロックである。視覚障害者の型も、これを気に小劇場に足を運んでもらいたいと願う。











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