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【NÓMADO】 ⑥ ケレタロと世界文化遺産

世界遺産アカデミーの認定講師にもなり、コロナ禍も過ぎ去った今、ようやく訪れることができた世界遺産が、このケレタロ歴史的建造物地区です。それでは、ケレタロの世界遺産について詳しくみてみましょう。

ケレタロ歴史的建造物地区ってどんなところ?

この地区は、バロック様式や新古典主義様式の建築が数多くみられます。これらの建物は、16世紀から18世紀にかけて建てられたもので、当時の建築技術や美学を反映しています。特に、74のアーチからなる送水橋は、町の象徴的なランドマークです。その他、サンタ・ロサ・デ・ビテルボ教会やサン・フランシスコ教会など、数多くの教会(カトリック)が今でも市民の生活の一部とリンクしています。

至るところにカトリック教会

ケレタロ地域で発展した独特のバロック建築様式が「ケレタロ風のバロック様式」です。18世紀にピークを迎えたこの様式は、ヨーロッパのバロック様式の要素を取り入れつつも、地元の文化や素材、職人技術が融合したもので、歴史的建造物地区では主に次のような場所があります。

■サンタ・クララ教会(Templo de Santa Clara)
内部の装飾が特に有名で、木製の祭壇や華麗な彫刻が特徴です。繊細な金細工や色彩豊かな装飾が見事です。

金ピカでした

黄金の祭壇は、18世紀に作られたもので、メキシコのバロック建築と芸術の最盛期を象徴しています。この祭壇には、非常に豊かな装飾が施されており、その中には先住民の文化や風習を反映した要素も見受けられます。心臓を神に捧げるという先住民の風習は、アステカやマヤ文明などで見られる宗教儀式で、犠牲者の心臓を神に捧げることで、神々への敬意を示し、祝福を受けるというものです。この風習はスペインによる征服後も、一部の宗教芸術や象徴に影響を与えました。

祭壇の装飾は、ヨーロッパから伝わったキリスト教のモチーフと、メキシコ先住民の伝統が巧妙に組み合わさった結果です。この融合は、ケレタロ風バロックの独特な美しさと文化的価値を高める要因の一つと言われています。

■サンタ・ロサ・デ・ビテルボ教会(Templo de Santa Rosa de Viterbo)

18世紀半ばに建設され、そのファサードは非常に装飾的です。教会内部の天井画や壁画も見どころです。

■サン・フェリペ・ネリ教会(Templo de San Felipe Neri)

ファサードには豪華な彫刻が施され、内部には美しい祭壇があります。教会内の装飾も非常に詳細で、宗教的なシーンが描かれています。

■サンティアゴ・デ・ケレタロの水道橋(Acueducto de Santiago de Querétaro)

これは厳密にはバロック建築ではありませんが、ケレタロの象徴的な建造物です。18世紀に建設されたこの水道橋は、都市の発展に重要な役割を果たしました。

真下から撮ってみました

植民都市・ケレタロ

ケレタロは、メキシコの独立運動の重要な拠点でした。1810年にここで独立運動が計画され、その結果として独立戦争が勃発しました。このため、町の多くの場所が歴史的な意義を持っています。

ケレタロの歴史地区は、スペイン植民地時代の都市計画を反映しています。広場を中心に放射状に広がる街路や、公園、公共施設が整然と配置されています。

ユネスコの碑

ケレタロ歴史的建造物地区の抱える問題

急速な都市化と観光客の増加が、歴史地区のインフラや建築物に圧力をかけています。交通渋滞や環境汚染、歴史的建造物の損傷などが問題となっています。

歴史的建造物の保存と保護は、他の都市も同じく常に重要な課題になっています。経済的な制約や適切な保護措置がとられていないことにより、建物の劣化が進行しています。特に、職人による適切な修復技術や、建設当時に使われていた材料の不足が問題となることがあります。

これは白川郷と五箇山の地区もそうなのですが、歴史的建物が商業目的で使用されることが増えています。その結果として、残念ながら建物の改造や近代化が行われることがあり、建築物の歴史的価値や構造を損なうリスクを抱えています。

ケレタロは、メキシコの中でも安全な都市として知られています。生活水準も他の都市より高く、物価も正直言って他の都市よりもだいぶ高いと感じます。その観光収益は重要ですが、過度な観光(オーバーツーリズム)は、地元住民の生活に影響を及ぼす可能性をはらんでいます。ケレタロの歴史地区の価値を維持しながら、現代の経済的・社会的要求に対応するバランスを見つけことが重要です。

観光との両立はどこも難しい