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ビクトリア朝時代、多くの若者を悩ませた"アレ"...【歴史雑学】

2024年7月:記事の最後にお知らせを追加しました。

お疲れ様です。社畜です。

例によって今週の動画が間に合いませんでした。
代わりに私のお気に入りの話を記事にしますので、楽しんでいただけると幸いです。

真面目で勤勉なこと間違いなしの当チャンネルの視聴者ならば、
必ずや楽しめる内容になっているはずです。




〇19世紀の若者を悩ませたものとは…?

19世紀のイギリス、ビクトリア朝時代。
表向きは道徳と礼節を重んじるこの時代に、人々は密かに大きな問題を抱えていました。

その問題とは、、、

若者たちの間で蔓延していた「自慰行為」です。


まず、言葉の変遷から見ていきましょう。
我々の知る「マスターベーション」という言葉は18世紀に登場したとされていますが、当初は「オナニズム」や「セルフ・ポリューション」と呼ばれることが多かったそうです。
そして19世紀に入ると、「セルフ・アビュース(自己虐待)」といった言葉が使われ始めました。

さて、そんな19世紀も後半にさしかかった1870年、とある記事にて衝撃的な事実が発表されます。

それは「全寮制学校の若者たちの間で、セルフ・アビュースが一般的に想像されているよりもはるかに頻繁に行われていた!」というものです。

どんな記事書いてんねんって話ですが、
このような指摘はイギリスだけでなく、アメリカにも広がっており、

ある女性教師は、

「アメリカの大半の男子校と女子校では、自慰行為が恐ろしいほど蔓延している」

と嘆きを口にしていました。

そして現代の我々からすると、「なにを〇ナニーくらいでそんなに騒いでるんだ。そんなの記事にしてやるなよw」となるわけですが、

ビクトリア朝の人にとっての〇ナニーは、現代とは全然違うんですよ!!

これは別に「ビクトリア朝の人達は特殊な方法で自家発電していた」みたいな話ではありません。
具体的な方法云々が違うのではなく、自慰行為に対する認識の話です。


当時の人々はこの行為を「嫌悪すべき有害な習慣」と呼び、その影響を非常に深刻に捉えていたのです。


現代でもやりすぎはよくないと言われるものではありますが、当時の人にとってはそんなもんではなかったようで、
健康や知性が衰えるのはもちろんのこと、さらには道徳心までもが破壊され、なんと最悪の場合、死に至るとまで考えられていたそうです。

テクノブレイクとは、過剰なマスターベーションによる突然死を指す言葉である。この言葉は、真偽不明の情報としてネット上で広まったもので、科学的な根拠は確認されていない。

(weblio辞書「テクノブレイク」)

ネット民の先を行っていたとは、ビクトリア朝の人々、恐るべし。

そしてこの自慰行為に対する危機感は、いわゆる民間伝承のような、一部の地方にだけ存在するものではありませんでした。
当時の医学界もまたこの問題に注目しており、その危険性を認めていました。

著名な精神科医ジャン=エティエンヌ・ドミニク・エスキロールは、自慰行為を「あらゆる国で精神疾患の原因として認められている」と断言していたほどです。

このように、ビクトリア朝時代の自慰行為は、現代とは比べものにならないほど大きな問題として捉えられていました。
医学界からも危険視され、若者たちは自身の欲望と社会の厳しい目の間で板挟みになっていたことでしょう。


しかし、人間の本能的な欲求は簡単には抑えられるものではありません。


どれほど危険だと警告されても、完全に自制することは難しいものです。むしろ、禁止されればされるほど、好奇心や欲求が強まってしまうのが人間の性なのかもしれません。

危険だと分かっていても、止められない人が多くいました。

すると、

「ダメなことって分かってるのに止められない自分って、なんてダメなんだ...」という悩みを持つ若者が現れるようになります。


例えば、とある女性の話があります。
彼女は全寮制の学校に通う生徒でした。

そして彼女が14歳の時に、年上のルームメイトから「セルフ・アビュース」を教えられたことがきっかけとなって、彼女は「セルフ・アビュース」を止めることができなくなりました。

しかしこれまでお話ししてきた通り、世間では彼女の行いを「危険で愚かな行為」として断罪しています。

「やめるべきなのに、やめられない...」

彼女はそんな悩みに苦しむようになりました。


現代の我々からしてみると、この悩みはやや馬鹿らしくも感じられるかもしれませんが、
当時の人は本気で「自慰行為=病の元」と考えていたわけです。

自分で自分の首を絞めているのが分かっているのに、手の力を緩めることができない、そんな恐怖を感じていたのかもしれません。

そしてそんな恐怖に耐えかねた彼女は、とうとう医師に助けを求めました。
「誘惑にどうしても勝てない」と告白したのです。
当時の人がいかに本気で自慰行為を危ないと考えていたかが分かります。


〇抑えられない”呪い”への対処法

さて、そんな「危険なうえに中毒性の高い呪い」とでも言うべきものを、世間にはびこらせていて良いのでしょうか?

当然、ダメです。

なのでビクトリア朝の社会は、若者たちの自慰行為をやめさせるための対策を講じ始めました。

当時の専門家たちは、
「全寮制の学校」を自慰行為が蔓延する場所の典型として考えていました。

寮は沢山の若者が共同生活を送る場所であるため、自慰行為が若者の間に広まりやすいと判断したわけです。
まぁ、この考えはある程度正しく思えます。

そのため当時の人々は、

「いかにして全寮制学校における自慰行為の蔓延を食い止めるか?」

この課題を解決するために色々と頭を悩ませ、様々な方法を試していました。
その中からいくつかの方法をご紹介します。

まずは、
「最初の犯人」を学校から退学させるというものです。
シンプルイズベスト。

これ、退学になって寮から追い出された後、親兄弟になんて説明すれば良いんですかね。
「俺が学校で最初にシコっちゃってさ...」とか、お茶の間の空気が地獄になること間違いなしじゃないですか。

それはさておき、

この対策に対しては、退学にして終わりだと流石に可哀そうだという声もあったのか、
単に罰するだけでなく、退学した生徒を改心させるための取り組みも行われました。

具体的には、生徒に奉仕活動をさせたり、趣味を持たせるような活動が挙げられます。
要は、
「自慰する暇を与えなければ良い」ということです。

また中には、
「そもそも子供を寮に入れるべきではない」と主張する人もいました。
学校の寮制度が「個人の慎みをすべて破壊する」と警告し、
「寮内には秘密の悪徳が信じられないほど蔓延している」との指摘もあったそうです。

もう少し柔らかい提案としては、
「子供を寮にいれるのは良いけど、個室は与えることなく、誰かと共同で生活させるべき」というものもありました。
「監視の目があれば安心」というわけです。

「だいぶまともじゃん」と思える提案な気がしますよね。

しかし、この「誰かと共同で生活させる」という提案の「誰か」とは、
「責任ある人物」を意味していることに注意が必要です。

つまり教師等の大人と一緒にベッドに入ることを推奨しているわけです。
どうやらまともとは言えなさそうですね。


また、ビクトリア朝の人々は、自慰行為は過剰な刺激によって引き起こされるものと考えていました。
そのため、あらゆる刺激を避けることも重要視されました。

例えば、淫らな文学や想像力を刺激するようなものを読むことはもちろん禁止。
食事に関しては、シンプルな食材のみが許され、香辛料や刺激物は絶対禁止とされました。
また、入浴の際は、ぬるめのお湯に座った姿勢で浸かることが推奨され、
睡眠に関しては、硬いマットレスで眠ること、そして早起きすることが勧められました。
朝方は精液の分泌量が最も多くなり、「射精が起こりやすい」と考えられていたからです。

そしてこれらの方法が効果を示さない場合は医者へ行くことが推奨され、
それでも効果がない場合は、結婚が勧められることもありました。
「結婚しちゃえば一人でする必要なくなるよね」作戦です。

しかし、結婚も万能薬ではありませんでした。
結婚後も自慰行為を続ける人々がいたのです。
ある女性の例では、4人の子どもを持つ母親になってもなお、自慰行為をやめられなかったといいます。

このように、ビクトリア朝の人々は「自慰行為」という「問題」に対して、様々な解決策を模索しました。

しかし、どの方法も劇的な効果はなかったようです。

実際、多くの人々はこの「習慣」をやめることができず、様々な健康上の問題を訴えていました。
その症状を列挙してみると、

息切れ、めまい、痛風、倦怠感、憂鬱、そして中には記憶喪失まで、

実に多様な症状が「自慰行為」の結果だとして報告されていました。
こんな症状が出るなんて、恐ろしいですね。



「ただ自分の不調をGのせいにしてるだけじゃね?」

正論パンチは止めてあげてください。


まぁそんなこんなで色んな方法が試されてきたわけですが、
結局「自慰に大した害はないよ」ということが分かり、これらの動きは収束しました。

この報告を聞いた男達はさぞ嬉しかったことでしょう。


〇おわりに

以上で、本記事は終了です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

私のお気に入りの話が日の目を見ることができて大変嬉しかったです。
真面目で勤勉なこと間違いなしのあなたもきっと気に入ってくれたことでしょう。

ちなみに、この記事のヘッダー画像はAIに生成させたものなんですが、

↑これね↑

生成する時のキーワードは「techno break」です。
テクノブレイクの意味なんとなく分かってそうで草でした。


〇お知らせ

さて、このnoteでは今後、YouTubeの動画にはできないセンシティブなテーマに関する記事、
それからYouTube運営に関する記事を投稿していこうと思っております。

現在は、これまでのチャンネルの歩みを振り返りながら、
「自分がまた0からチャンネルを始めるとしたら何から始めるか?」というテーマの記事を書いているところです。

〇2024年7月追記:こちらの記事、公開しました!

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基本無料記事にて公開していく予定です。
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それではまた!


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