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SDGs 世界史

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国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)に挙げられた課題に対して、人類はどのように向き合ってきたのか―。SDGsと「世界史」の関わりを解説した史上初の試み。全文無料。
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2023年12月の記事一覧

ニッポンの世界史【第3回】世界史の「氾濫」

「教科世界史」は、なぜ暗記地獄化したか?  前回みたように、「科目」としての世界史は、戦後まもなくの混乱期に、学問的に深い議論が交わされることなく誕生したものでした。  そもそも学問としての世界史自体、未確立だったこともありますが、その輪郭が不確かであったからこそ、文部省の教科書調査官や歴史学者、教員、予備校講師、それに作家に至るまで、さまざまな人々の手が加わり変化し続ける余地ができた面というもあるでしょう(注1)。  とくに戦後まもなくは、教員がみずから世界史という科目

【第2回】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

「世界史」という科目は、どのようにして生まれたのか?  前回、1949年に「世界史」という科目がつくられたと述べました。  どのような経緯で「世界史」という科目が置かれたのでしょうか?  今回はちょっとお堅い内容にはなりますが、「科目世界史」がどんなふうに誕生したのか、その秘話をきちんと確認しておかねばなりません。  まずは戦後まもなくの状況を確認しておくことからはじめましょう。 戦後の新科目「社会科」  1945(昭和20)年9月2日、1945(昭和20)年9月2日、東

【はじめに】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

2010年代の世界史ブーム—疫病・戦争・生成AI  まもなく22世紀を迎える2100年の人々が21世紀初頭の世界をふりかえったとしよう。そこではどのような出来事がとりあげられるだろう?  「まもなく終わる21世紀」の幕開けにふさわしい出来事として選ばれるのは、いったい何になるのだろうか?  疫病の流行、大国による戦争、それとも生成AIに代表されるイノベーションか。あるいは気候変動、難民危機、持続可能な開発目標、新興国の台頭、あるいは権威主義やポピュリズムの拡大か—。  こう