「#世界はジャズを求めてる」2021.10月4週(10/28)『映画"Jazz Loft"の時代のラテンジャズ』eLPop伊藤嘉章・岡本郁生 #鎌倉FM
『世界はジャズを求めてる』第4週は「ラテンとジャズの危険な関係」。eLPopの伊藤嘉章(mofongo)と岡本郁生(el Caminante)がお送りします。ジャズ評論家の油井正一さん「ジャズはカリブ音楽の一種」と喝破されたように成り立ちから一つのラテンとジャズは、垣根を意識することなくお互いに溶け合ってきています。そんな関係のカッコいい曲をお届できればと。番組をお聴きになってラテンに興味がでた方、ラテンがお好きな方はラテン音楽Web マガジン「エル・ポップ(eLPop)」など覗いて頂けたら幸いです。(URL=http://elpop.jp)
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まず新譜のご紹介から。10周年を迎えてのジャズ/フュージョン・ユニット「NF4」。4枚目2枚組の『Now & Then』から。アルバムはラテンの曲もあり聴きごたえがあります。
1. Old Scenery / NF4 (2021)
NF4 4th CD「Now & Then」Digest Movie (映像はアルバムのダイジェスト)
メンバーは日野林晋(ts,ss)、小畑智史(p, tp, perc),石井圭(b),黒田慎一郎(ds)
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さて、8月はIn the Heights, 9月はSummer of Soulと映画に誘発された曲をお送りして来ましたが、今月はまた良い映画に出会いました。『JAZZ LOFT』。
写真家ユージーン・スミスが1957年から1971年まで暮らしたニューヨーク/マンハッタンのロフトが舞台で、彼が残した膨大な録音や写真を基に、構成された2015年の映画です。10/15に封切りで全国公開は11月からのところもありますのでまだまだ見られるのではと思います。スミスは1971年にこのロフトを引き払い、次に向かったのは日本の水俣。丁度ジョニーデップ主演でスミスを描いた『MINAMATA』も公開となっているので、この映画を見て、そして『MINAMATA』の順番で見るとなかなか興味深いです。
さて音楽です。この映画の見どころの一つは「JAM SESSION」 。 スペイン語だと「DESCARGA」となります。そんな曲からその時代のジャズとラテンの危険な関係を聞いてみたいと思います。
映画ではセロニアス・モンクが1959年のタウンホール・コンサートの為にリハーサルするシーンが印象的でした。まずはその中の1曲から。
2. Little Rootie Tootie / Thelonius Monk (1959) "Tonw Hall Concert"」
https://youtu.be/cd5rGoDqTyE
Thelonious Monk (p), Donald Byrd (tp), Eddie Bert (tb), Robert Northern (frh), Jay McAllister (tuba), Phil Woods (as), Charlie Rouse (ts), Pepper Adams (bs), Sam Jones (b), Art Taylor (ds)
この頃ラテンでもジャムセッションが盛んに繰り広げられていました。丁度マンボが頂点に達した時期で、個々のプレイヤーがジャムを通して次の音を創っていきます。スイング時代の頂点で、チャーリー・クリスチャンやパーカー、ガレスピーなどがジャムで次の時代の音を醸成したのとよく似ていますね。
ラテンではジャムセッションは「デスカルガ」。英語直訳だとDischargeとなります。Chargeの逆ですね。又はダウンロードとも訳される「デスカルガ」。内にあるものを外に出す、というニュアンスを含んでいます。英語のジャムセッションより個々のプレーャーの熱い感じあるようで面白いです。
まずは1956年のフリオ・グティエレス(Julio Gutierrez)『CUBAN JAM SESSION』から
3."Theme on Perfidia" - Cuban Jam Session Volume 1 - Julio Gutiérrez (1956)
フリオ・グティエレスはキューバのピアニスト、作曲家で1940-50年代のキューバのシーンをリードした人に一人です。
この録音ではピアノのペルチン、ギターのホセ・アントニオ・メンデス、ボーカルのグラン・フェジョーベなど革命前のキューバのシーンが映し出されたメンバーが楽しめます。
Julio Gutierra (p), Pedro (Peruchin) Justiz (p), Alejandro (El Negro) Vivar (tp),
Edilberto Scrich (as), Osvaldo (Mosquifin) Urrutia (bs), Emilio Pealver (ts), Jose (Chombo) Silva (ts), Juan Pablo Miranda (fl), Salvador Vivar (b), Jesus (Chuchu) Ezquijarrosa (timb), Oscar Valdes (bongos) Marcelino Valdes (congas), Walfredo de los Reyes Jr. (ds), Jose Antonio Mendez (g), El Gran Fellove (scat vocal)& unknown female singers
次はNYのアレグレ・オールスターズ。
3. Para Ti / Alegre Allstars (1961)
https://youtu.be/mzMjKCht1a0
キューバ革命直後のニューヨークの音。1956年にアル・サンティアゴによってNY/ブロンクスでスタートしたアレグレ・レーベル(アレグレ・レコーズ)は1961年にオールスター・バンドを作りました。
キューバ勢も前の曲のマルセリーノ・バルデス(Congas)やホセ・チョンボ・シルバ(ts)などが参加していますが、以後のニューヨーク・ラテンを支える地元勢の面々、チャーリー・パルミエリ(p)、ジョニー・パチェーコ(fl)、ボビー・ロドリゲス(b)、カコ(timb)、バリー・ロジャース(tb)などなどが力強い演奏を聞かせてくれています。キューバの香り高い中に、ニューヨークならではの感覚が芽を出している音です。
Bobby Rodriguez (b), Marcelino Valdez (congas), Johnny Pacheco (fl)
Julian Cabrera (guiro), Charlie Palmieri (p),Jose "Chombo" Silva (ts),
Kako (timb),Barry Rogers (tb), Dioris Valladares (coro), Rudy Calzado (coro), Yayo El Indio (coro)
そしてプエルトリコでもプエルトリカン・オールスターズが。
5. Abanquito / Puerto Rican All Stars featuring Kako (1963)
マンボ時代、NYの3大バンドの内2つがプエルトリカンのがリーダー(ティト・プエンテとティト・ロドリゲス)を擁していた事でもわかる通り、「アフロキューバン/マンボ」と括られる音楽はプエルトリカンのミュージシャンが大きな核となっていました。彼らも集まってデスカルガを繰り広げます。そしてそれが後のサルサの時代へと繋がって行きます。
この演奏はザラザラした質感でとてもエネルギッシュ。NYで活躍するメンバーも多い中(というか、プエルトリコはアメリカの準州なのでビザもパスポートも不要で、NYとプエルトリコは一体だったとも言えます)、プエルトリコらしさに溢れたパワーが感じられます。
メンバーもセサル・コンセプシオン(tp)やミゲリート・ミランダ(tp)と言った自らオルケスタを率いるベテランから、NYを支えるチャーリー・パルミエリ(p)、出来たばかりのエル・グラン・コンボのエディ・ペレス(as)、ロベルト・ロエナ(bongo)、ラファエル・イティエール(p)など混在しています。
柔らかい島の音のイメージがあるエル・グラン・コンボですが、実はコルティーホ直系の疾走感を持っている事がこの演奏から分かります。
Chivirico Davila (vo), Al Santiago (coro), Eddie Perez (as), Héctor Santos (as)
Jesús Caunedo (bs,fl), Mikie Cruz (b), Roberto Roena (bongo), Daniel Vasquez (congas), Martin Quiñones (congas), Ben Perlman (coro), Charlie Palmieri (coro), Kako (perc, leader), Rafael Ithier (p), Milton Correa (timb), Fernando Arbello (tb), Cesar Concepcion (tp), Mario Ortíz (tp), Miguelito Miranda (tp), Paquito Guzmán (vo)
そして次はティコ・オールスターズ。
6. Cargas y Descargas / Tico Allstars (1966)
1948年にニューヨークのイースト・ハーレムで発足したティコ・レコーズはNYのラテン・レーベルの老舗。40年代のティト・プエンテなどスター輩出でした。アレグレや1964年に発足したファニアが台頭する中、老舗の層の厚さでオールスターを組んだのがティコ・オールスターズ。曲名はジャムセッションそのまんまの『カルガス&デスカルガス』
エディ・パルミエリ(p)、ティト・プエンテ(timb)、レイ・バレット、チャーリー・パルミエリ(p)、ジョニー・パチェーコ(fl)などの中に、キューバ人のイスラエル・カチャーオ・ロペス(b)がまさにキューバン・ジャム・セッション直系のビートを聞かせてくれていて、そのエッセンスがしっかり伝わっているのが素晴らしいです。
Al Abreu (ts), Pedro Bouloung (tp), Joe Cuba (congas),, Candido Camero (congas), Vincent Frisaura (tp), Eddie Palmieri (p), Victor Paz (tp), Bobby Porcelli (sax), Tito Puente (vib, timb), Bobby Rodriguez (b), Barry Rogers (tb), Jimmy Sabater (timb), José Rodrigues (tb), Alfredo “Chocolate” Armenteros (tp), Ray Barretto (congas), Israel Lopez (b), Ricardo "Richie" Ray (p), Johnny Pacheco (fl), Charlie Palmieri (p), Chino Pozo (perc), John Rodríguez (bongos)
そして次はファニア。
7. Sabor Sabor / Fania All Stars Live at The Red Garter(1968)
https://youtu.be/Uwe3Umtkccs
デスカルガは今の時代まで脈々とその伝統が繋がって行きますが、一つの大きな区切りはやはりファニア。1964年発足のファニア・レコーズは時代の寵児たちによるオールスターズを組みます。中でもその最初期のクラブ「レッド・ガーター」でのライブはラテン、R&B,アフロなどが混在したエネルギーのあふれる名盤となっています。
Bobby Rodriguez (b), Ray Barretto (congas), Larry Harlow (p),Johnny Pacheco(fl), Jimmy Sabater(timb),Jose Rodriguez(tb), Willie Colón(tb)Bobby Quesada(tp), Bobby Valentin(tp), Ralph Robles(tp)Hector Lavoe(vo), Ismael Miranda(vo), Pete Conde Rodriguez(vo)
さて、最後は新譜のご紹介です。
8. El dia que me quieras 想いのとどく日 / 松田美緒 (2021) from "La Selva"
ポルトガルのファドからブラジル音楽、そして南米の様々な音楽からのインスピレーションを自分の音に生かして来た松田美緒。
新譜『La Selva』より、アルゼンチンの不世出のタンゴ歌手、カルロス・ガルデルの曲からお送りします。
メンバー:松田美緒(vo)、ウーゴ・ファトルッソ(p/kyd,)、アルバナ・バロッカス(ds, perc) ゲストミュージシャン:フランシスコ・ファトルーソ (b) ニコラス・イバルブル(g) 渥美幸裕(g)他
10月は以上です。気に入った方はぜひ「スキ」をお願いします!
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「世界はジャズを求めてる」は鎌倉FMで毎週木曜午後8時から1時間(再放送は毎週日曜昼の12時から)、週替りのパーソナリティが、さまざまなジャズとその周辺の音楽をご紹介するプログラムです。
進行役は、第1週が村井康司、第2週が池上信次、第3週が柳樂光隆、第4週がeLPop(伊藤嘉章・岡本郁生)、そして第5週がある月はスペシャル・プログラムです。
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