【読書感想】「命売ります」

ずっと気になっていた名作。その強烈なタイトルから、手にする勇気を持てずにいた。

本屋さんで「そろそろ読もうかな」と思ったのがきっかけ。
いざ読み始めると時間があっという間だった。

あらすじはだいたいこんなかんじ。
主人公が自殺に失敗して命売りますの広告を出すことから始まるこの作品。自殺のきっかけも、なんとなくと変わらないくらいのふわっとしたものだったが、きっと彼にとっては充分な理由で。
それから買い手が現れて彼はどんどんダークなところへ巻き込まれていくというストーリー。

命なんてどうでも良くなって売ったはずの命が、欲しかったはずの死が、恐怖へと変わっていく彼の心境の変化に、人間の「生」の本質があるのだろうと感じた。

生と死は紙一重。私たちはきっと、その時々によって生も死も同じくらい怖いし、同じくらい楽なのだ。

彼は最後まで欲に忠実だった。彼の周りには人が集まる魅力があった。けど事件を経て彼は一人ぼっちになってしまう。それはすなわち、彼にとっては死も同然の虚しく苦しく悲しいことなのだろうと思う。

私は三島由紀夫さんの潮騒が大好きで、高校生の頃からの愛読書のひとつなのだが、命売りますは三島由紀夫さんの系統とは違うような、けどこれが本当の彼のような気がした。彼の作品にもっと触れたいし、もっと本を読みたい、今をもっと真剣に生きていきたいと改めて思わされた。

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