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オープンファクトリーでベルト作り体験をした話/かつしかライブファクトリー


全国各地で開催されているオープンファクトリー

皆さんはオープンファクトリーに行ったことはありますか?そもそも、オープンファクトリーを知っていますか?

オープンファクトリーは、工場が普段は公開していないモノづくりの現場を公開したり、来場者にものづくりを体験してもらったりするイベントです。主に工場での製造過程を一般の人々に公開することにより、モノづくりの魅力や企業の製品に対する理解を深める目的で行われています。2022年から2023年にかけてNHKで放送された朝ドラ「舞いあがれ!」でも取り上げられたことで話題になりました。

このオープンファクトリーというイベントは全国各地で開催されているのですが、僕は今回10月28日に開催された「かつしかライブファクトリー」に参加してきました。今回で5回目の開催だそうです。

参加しようと思ったきっかけ

オープンファクトリーに参加したのは今回が初めてです(11月にも別のオープンファクトリーに参加予定ですが)。いくつかの理由が重なって、今回の参加を決めました。

①もともと工場見学が好きだった

普段目にすることができない、身近なモノが作られる過程を見ることができるという理由で、工場見学には何度か訪れたことがありました。ただ、ここ最近はより間近に迫力を感じたり、自分の手で触ったり作ったりしてみたいという、「手触り感」に対する欲が高まっていました。

②朝ドラでオープンファクトリーのことを知った

僕がオープンファクトリーという催しを最初に知ったのは、前述の朝ドラ「舞いあがれ!」です。普段は朝ドラを観ていませんが、実家に帰省すると両親が朝ドラの録画を観ているため、自分で選択しなくても朝ドラを視聴することになります。「舞いあがれ!」でオープンファクトリーのことを知ったのも、たまたま実家で見かけたからでした。

③モノづくりに対する興味が高まっていた

人材系やIT系といった「サービス」を提供することを自分の仕事としていることもあってか、モノを生み出せる仕事に対する関心やリスペクトが元々あったのですが、自分でも何か作りたいという思いがここ最近強くなっていました。更に、直近で転職して製造業の企業と関わる機会が増えたことは、その関心を更に後押ししていました。

そんな中、X(旧Twitter)でかつしかライブファクトリーのことを知り、参加を決めました。プログラムの中でも、2つの工場のコラボとしてベルトを作ることができるという体験に興味を持ち、募集開始と同時に申し込みました。

連携プログラム|長坂染革×長沢ベルト工業
自分だけの本革ベルトを作ろう

長坂染革で染色加工を行います。ヌメ(植物タンニンなめし)牛革を使用して多様な染色加工の一部を体験できます。出来上がった革でベルトを作ります。自分で作り上げた革を自分の手でベルトを作る、今までにない究極の体験ですよ!

https://www.katsushikalivefactory.com/#program

染色加工体験 @長坂染革株式会社

2つの工場のコラボによるベルト作りは、長坂染革さんでの染色加工体験から始まりました。朝9時に工場に着くと、「かつしかライブファクトリー」の旗と風船が出迎えてくれました。

入り口にかわいい看板と風船

受付を済ませて、8名ほどの参加者と工場の中に入ると、革の香りと僅かな薬品の匂いが漂う中に、多くの革が重ねられていたり壁にかけられたりしていました。この状態の革が並んでいる風景は壮観でした。

階段に沿って並んでる革たち

エプロンとゴム手袋を受け取った後、長坂社長から今日の流れについて説明があり、各自が今から染色加工をする革を選びました。色や模様は様々でどれにしようか少し迷いましたが、ここで選んだ革をベルトにするので、暗めの茶色で少しシワっぽい加工がされている革を選びました。

最初の工程は「染色」で、選んだ革の凹凸の「凸」の部分に、自分で調合した色をつけていく作業でした。スポンジのようなものに染料をつけて、少し紙に擦って水分量を落とした後、革の表面に軽く擦り付けるような工程でした。最初はあまり色の濃淡がない革に、徐々に影がついて表情がついていく様子を楽しむことができます。

染色前の革。シワはありますが色の濃淡はそれほどありません

その次は、スプレーを使ってカゼインという仕上げ方法に必要な塗料を吹きかける工程を行い、機械を通して乾燥させ、アイロンに通すなどの工程を通して革にツヤを出したり、染色によってついた濃淡をはっきりさせていったりしました。

本来これらの工程は数日かけて行われるものだそうですが、今回は体験用にぎゅっと凝縮していただいていたそうです。また、各工程にいらっしゃる職人さん・従業員の方々は気さくに・丁寧に説明をしながら一緒に作業を進めてくださったので、楽しく過ごすことができました。他の参加者の方々もそれぞれ異なる革に、思い思いの染色加工を行い、皆さんの好みやこだわりが感じる仕上がりになっていました。

自分の革(右下)と、他の参加者の革たち

体験パートを1時間ほどで終え、残り1時間で工場見学が行われました。社長自ら説明を案内をしてくださいましたが、革産業全体についてのことや、長坂染革さんとして取り組まれている様々な取り組みについても解説を聞けました。牛や豚の革は、食用として流通する個体から皮をとるため、無駄のないサステナブルなものであるということは、正直知らなかったし、ちゃんと考えたこともありませんでした。

また、長坂染革さんが取り組まれている様々なチャレンジのお話から、革の加工は想像していた以上に自由であることにも驚きました。様々な模様を型押しできたり、プリンターで印刷することができたり。そのうえで元の革の色や雰囲気とどう組み合わせるのかなど、興味深かったです。

工場見学の間、クイズを交えながら楽しく説明してくださったので後半1時間もあっという間に終わりました。そうして自分で加工した革を持って、午後の部に向かいました。

革の面積を表すシールを貼ってもらいました

ベルト作り体験 @有限会社長沢ベルト工業

午後は長沢ベルト工業さんに伺い、長坂染革さんで加工した革を、いよいよベルトとして完成させます。ベルトがどのような工程で作られているのかあまりイメージが湧いていなかったので、持ち込んだ革をどのように加工してベルトにするのだろうと思いつつ体験が始まりました。

住宅街を歩き進めると突如現れる長沢ベルト工業さん

最初に創業者の息子さんである、2代目の長澤猛臣さんから長沢ベルト工業のことや今日の流れについて簡単に説明がありました。そして、自分が作るベルトに作るバックルを選びました。少し幅が太めのベルトにしたいと思っていたので、35mmの銀のバックルを選びました。

そこからは、僕+もう2名がお家直結の作業場に移って、先ほど説明をしていただいた猛臣さんのお父さんにあたる、潤治さんが説明とレクチャーを対応してくださいました。

作業としては、最初に持ってきた革を35mm幅に2本切り出し、そこに裏地や芯を貼り合わせたりしながら徐々にベルトとしての形を成していきました。持ち込んだ革は、普段見ているベルトに比べると薄いものだったので、どうなるのだろうと思っていましたが、裏地と芯を重ね合わせていくだけで一気にベルトとしての雰囲気が出てきました。

持ち込んだ革からベルト用に2本切り出したところ

また各作業の間では、ベルトの両端の断面をきれいに整えたり、漉いたりするような細かな作業は潤治さんがプロの技できれいに処理してくださいました。

芯を入れるとベルトの雰囲気が増してくる

切ったり塗料を塗ったりと、思ったよりも細やかな工程が多くて1本のベルトが作られるまでの難しさを感じましたが、丁寧にステップバイステップで説明・フォローしてくださったこともあり、楽しく集中して作業を進めることができました。

そしてミシンで両端が縫われると、一気にベルトとして完成品の見た目に近づきました。また今回は後からサイズを調整できるようなつくりにしたのでその部分を作ったり、遊革(さるかわ)と呼ばれる剣先を止めるパーツも、ベルトの本体と同様に持ち込んだ革に芯を入れて両端をミシンで縫って作りました。

穴を開けて、バックルをつけると、大事な工程は代わりにやっていただいたにせよ、こんなきれいなかっこいいベルトが自分の手から生み出されたのかと信じられませんでした。朝イチの時点ではシワ加工がされているくらいだった革が、染色加工によって表情がはっきりし、多くの工程を通してベルトとしての形を成していく様を見るだけでも感嘆するものなのに、それが自分の手を通してこの世に産み落とされたと思うと、愛おしい気持ちさえ湧いてくるものでした。

持ち込んだ革とできあがったベルト
箱に入れてくれました

印象に残った職人さんたちの眼差しと愛情

自分でベルトを作る体験をできたことや、工場の中を見れたことも印象的だったのですが、職人さんたちの製品に対する眼差しと愛情も印象的な1日でした。

長坂染革の長坂社長は、僕が染色した革を見て噛みしめるように良いねと言ってくださったり、この加工がかっこよくて好きなんだよな〜と話してくださったりしました。

また、長沢ベルト工業の職人さんたちも出来上がったベルトを隅々まで見て、とてもかっこいい仕上がりになったねと言ってくださったりしました。

もちろん参加者である僕たちに気を遣ってそういう言葉をかけてくれたところもあると思うのですが、それ以上にみなさんの自分たちが扱っている製品に対する愛情を感じました。毎日見慣れている製品なはずなのに、どこかワクワクする気持ちがにじみ出しているような雰囲気が、とても素敵だなと思い印象に残りました。

改めて、かつしかライブファクトリーを運営している方々、長坂染革の皆さま、長沢ベルト工業の皆さま、ありがとうございました。

オープンファクトリー、おすすめです

初めてのオープンファクトリーでしたが、本当に参加してよかったと思いましたし、まだまだ僕が知らない工場・知らない世界は山ほどあると思ったので、体験型だけじゃなくて見学型のものも含めて、機会があれば参加したいなと思いました。

冒頭でも書きましたが、11月にもオープンファクトリーに参加する予定で、静岡で開催される「ファクハク」に参加します。

定期的に各地で開催されているオープンファクトリー、ぜひ皆さんも参加してみてはいかがでしょうか。

かっこいい…!

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