『Charade / シャレード』とジバンシィ
こんばんは、Seiya Asanoです。
リニューアルされた「真夜中越ゆるラジオ」では、Candy on Cinemaなるコーナーを担当させて頂くことになりました。(チャンネル登録よろしくお願いします!)
Candy on Cinemaでは、映画史において輝き続けるファッションアイコンを紹介して参ります。
ラジオ内で収まり切れないエピソードや豆知識を後日こちらで綴る...といったところでしょうか。
「またあの馬鹿がべらべら喋んのかよ」
と、思ってらっしゃるかもしれませんが、ね。まぁ...そこはね。ね?な?
さて、そんな第1回Candy on Cinemaでは何の迷いもなくオードリー・ヘップバーンをフューチャー致しました。オードリーと言えば、今から5年前に「コマーシャル上で」蘇ったことが話題になりましたよね。
人類史上有数の「美の象徴」として、誰もが当然のように認知している存在です。数々の名作に登場してきたオードリー・ヘップバーンですが、今回取り上げたのは1963年の『シャレード』です。
『雨に唄えば』でお馴染みのスタンリー・ドーネン氏がメガホンを取った本作は、彼女が出演した作品の中でも大のお気に入りです。
「コメディ×サスペンス×ロマンス」の3要素が見事に織り交ざったシナリオは、娯楽が大幅に進化した現代においても十分鑑賞に堪えうるでしょう。
そんな『Charade』ではオープニングクレジットの段階で以下のように記されています。
“Miss Hepburn Clothes by Givenchy”
(ヘップバーンさんの衣装は、ジバンシィからの提供です)と。
彼女は『シャレード』以前からジバンシィを愛し、過去作品でもジバンシィを着用してスクリーンに登場しています。代表例を挙げるなら何といっても『ティファニーで朝食を』でしょう。
今作で黒のカクテルドレスを身に着けていたオードリーは、まるで魔法のような輝きを放っていました。
運命とも言えるオードリーとジバンシィの出会いは1953年にまで遡ります。
『麗しのサブリナ』(54)の出演が決まっていたオードリーは、同作に相応しいアイテムを求め、52年に独立したばかりの新進気鋭のデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィを訪ねました。
ジバンシィは、「ヘップバーンが自分に会いに来るなんて!」と舞い上がったんだとか。なぜなら彼は『フィラデルフィア物語』でお馴染みのキャサリン・ヘップバーンだと勘違いしていたからです。
しかし、いざオードリーと対面したジバンシィは、彼女の独特なオーラとセンスが溢れ出る美貌にあっという間に魅了されました。
そこで自身のコレクションを数点オードリーにあてがい、『麗しのサブリナ』を象徴するダブル・ジャケットがセレクトされたのです。
このジャケットを含む3つのドレスを『麗しのサブリナ』に提供したジバンシィでしたが、この映画で彼の名前がクレジットされることはありませでした。
製作・配給を行ったパラマウントの見解では、「いずれのドレスも既にオードリーが個人的に所有していたものであるため、スペシャルサンクスとして彼の名前を出す必要が無い」としていたためです。
一方、本作で衣装監督を務めたイーディス・ヘッドはアカデミー衣装デザイン賞を獲得しています。
ヘッドは『スティング』や『女相続人』、『陽のあたる場所』などアカデミー賞に幾度も輝き、歴史に残る衣装デザイナーと呼ぶに値する方です。
しかしながら、『麗しのサブリナ』において受賞すべくはやはり、ジバンシィのドレスだったのです。
当然、ジバンシィも「オードリーが着用したカクテル・ドレスは間違いなく私がデザインしたものだ」と主張しています。
更に、本作の監督であるビリー・ワイルダーの妻、オードリー・ワイルダーも「ユベールがヘッドにデザインのスケッチを送り、それを元にヘッドはドレスを縫ったのよ」と明らかにしているのです。
因みに、イーディス・ヘッドはこのトラブルについて生前
「あのドレスは、あくまでジバンシィからインスパイアされたもので、作ったのは私よ。彼のデザインじゃないワ」と答えています。
(こちらがイーディス・ヘッドさん)
そのような過去があるからこそ、『シャレード』の冒頭からジバンシィの存在が強調されるアニメーションが活きてくるのではないでしょうか。
それは「そりゃ、名前入れんといかんよね!」という勝手なこちら側の納得のため。
そして「このお洒落なコートどこのブランドだろう?」という、物語から逸れかねない疑問をあらかじめ解消できる点においてです。
「そんなことないよー」とお考えかもしれませんが、ときに洗練されたスタイルと圧倒的な優美さは、映画を鑑賞する上でノイズになってしまうのです。
なにせ、
『 オードリー・ヘップバーン × ジバンシィ』
ですからね。
Candy on Cinema...Seiya Asano
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