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毛玉人の生態

毛玉人(けだまじん)の生態について考えてみたい。
毛玉人は見た目は人間そっくりである。人体の構造や生活様式もなんら変わりない。たいていの毛玉人が人間社会に溶け込んで、素知らぬ顔をして暮らしている。

彼らを特徴づけるのはただひとつ、毛玉を生成する力(それも非常に強力な!)を生まれ持っていることである。

先にも述べたように、毛玉人は普段、人間と変わりない暮らしをしており、彼/彼女が毛玉人であることに、周囲の人間はほぼ気づいていない。気づいているしたら、その人もまた毛玉人である。それくらい溶け込んでいる。

しかし、人間社会で生活していくうえで自らが毛玉人であることが露呈しかねない場面は少なくない。たとえば、パートナーとおそろいの服を買った時(あまり知られていないが、人間と婚姻関係を結んでいる毛玉人も多い)。同じ素材、同じ頻度で着用しているのにも関わらず、なぜか尋常ではなく毛玉ができてしまうのだ。パートナーからは訝しがられるが、ここで焦っては自らが毛玉人であることをわざわざ公言するようなもの。こういうときに泰然と構えてこそ、一人前の毛玉人といえる。
余談だが、ペアルックを親の仇のように憎んでいる人がいたら、彼/彼女は毛玉人かもしれない。

毛玉人はまた「ボールペンのインクが途中で出なくなる」という特徴を兼ね備えている場合が多い。要するに、なぜか持ち物の劣化が激しい。このあたりがどのようなメカニズムになっているのかは、一向に解明が進んでいない。科学の進歩を待ちたいところだ。

ここまで書いてきて、察しのいい読者の方はすでにお気づきであろうが、筆者は毛玉人である。しかし、自らが毛玉人であることを悟ったのは実は最近のことだ。幼い頃より、人よりも毛玉が出来やすいことはなんとなく気づいていた。しかし、確信したのは30歳を過ぎてから。結婚し、家族と一緒に暮らすようになってからである。なにを隠そう、先のおそろいの服エピソードは筆者自身のものである(パジャマです)。

しかしながら、毛玉人にとっては唾棄すべきあのコロコロ(正式名称なんていうの?)で毛玉を取ったり、ネットで「服 毛玉が付きにくい」などと検索したりしている。毛玉人としてはまだまだ半人前である。

周囲から毛玉がついていることを咎められても、「今日のファッションテーマは毛玉です」と飄々としている。

そんな毛玉人に私はなりたい。

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