メモ『自己の心理学を学ぶ人のために』溝上慎一
本の目的
自己についての心理学を学ぶ人のために、理論的系譜や最近の動向を網羅する。
各分野(社会、人格、認知、発達、臨床心理、分析)からオーバーロールにレビューする。
① 古典を現在の視点からレビューする。②もっと学びたい人のために、がある ③過去の論者との対話 ④心理学のための研究法 がポイント。
〈人格心理学において〉
・自尊感情研究についての批判
③カーニスは、もっとも重要なものとして、「本来感」authenticity)に注目した。本来感とは、個人の本当の、中核の自己による、何者にも邪魔されない働きを反映するところに特徴づけられるもの。
さらに、伊藤・小玉は、本来感とは自分自身の意思や気持ちに基づき素直に生きているという感覚である、と述べている。p57
・マクアダムスのナラティブアイデンティティ
アイデンティティとは、自己について語られた物語である。
やまだによると、ナラティブとは、「経験を有機的に組織化する行為、つまり経験や人生を編集する行為」を指す。
自己の同一性、連続性よりも、自己の物語られ方(経験の組織化意味付け方)が重視されるようになった。p64
人の人生は物語として解釈できる文化的テキストである。マクアダムス
中核概念二つ
①個人的神話
→ライフストーリー(想起された過去、知覚される現在、予測される未来をパターンで統合する行為)=ナラティブアイデンティティ
②リデンプティブセルフ
→「救い、救世」の意
「ネガティブな体験・出来事を受け止め、それを乗り越えて後世のためにポジティブな未来を志向しようとすると自己」
(マイナスをゼロに、そこからプラスへ)
=ネガティブを乗り越えてポジティブを目指す自己
〈認知心理学において〉
・知識構造としての自己
ジェームズは、自己を知る主体としての自己Iと、知られる客体としてのMeに区別した。
セルフ・スキーマとは、①特定の出来事に関する記憶②特定の領域での行動についての一般化された表象③自分や他者からの評価に関する表象、からなる。
セルフ・スキーマが一旦形成されると、自己関連情報の処理を促進すると共に、注意や記憶や解釈や予測などの情報処理に解釈を与える。このセルフスキーマは、自己のみならず、他者の行動を解釈する際の枠組みとしても利用される。p81
作動的自己概念
→その都度で
人はただ不変的で永続的な自己概念しか持っていない訳では無い。人は多様で、時には矛盾する自己概念を持っている。
〈青年心理学において〉
青年期はアイデンティティ形成の時期
・アイデンティティ形成
・ブロス
ブロスによると、青年期は、児童期までの超自我による人格支配から自我による人格支配へと移行する時期。→親に同一化して形成されている超自我の支配から、自らの声にもとづく自我の支配へと人格を作り直していく発達期である。p160
・エリクソン
エリクソン曰く、青年期は児童期までの人格の見直し、再構築作業。
・自我アイデンティティ
=「①自己アイデンティティ(self identity)」+「②心理社会的アイデンティティ(psychosocial identity)」
①→「これが私だ」という自己定義を模索すること、そしてそれを過去から未来への連続した感覚として捉えること。
②→理想として見いだした自己定義を社会の中でさまざまに試し、共同体の核心に位置づけること。
この2つにより「アイデンティティの感覚」が自我に形成される。p160
・シャヒターのアイデンティティ形成論
自己の分権的力学
アイデンティティ形成は、2段階
①個別領域における自己定義の形成
②自己定義間の葛藤・調整という意味での統合形成
〈コラム〉
①天動説的自己意識と②地動説的自己意識
①=適応論的自己観→自己内外の世界との関わりにおいて自己がもたらされているという感覚。大きな別の存在や自然、周りに生かされているという考え。
②=認識論的自己観→自分自身を自らの意識と行動の主人公と考え、全ての中心に自分を置く。p181
〈精神分析において〉
・不安と自己
サリヴァンによると、自己は不安との関係で発生する。p189
・対話的自己(ハーマンス)
自己は、さまざまな「私」同士の対話、「私」と「他者」との対話が繰り広げられることで自己物語や自己の全体が構築されるという考え方。(俺は好き)
Iポジション→自己の世界に存在する様々な存在。それら全てがMeである。主体としての私(I)があるMeのポジションをとって、Meに語る主体の「声」をさずける。そこからMeは自己世界を語る。この自己物語が自己全体を形成する。p206
Iポジションを取って初めて見えてくる自己世界がある。
〈あとがき〉
プロテウス的人間
→色んなものに変身する(アイデンティティ的)
宣言としてのアイデンティティ
→自分がこうでありたいと思う、自己の社会的姿を最深部において繋ぐ観念
p233
われわれの世界とわれの世界
両生類的に生きなくてはならない
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