第26話『戦記は、つづく』

学園戦記ムリョウ

第二六話『戦記は、つづく』(第一稿)

脚本・佐藤竜雄

登場人物
統原無量(スバル・ムリョウ)
村田 始(ムラタ・ハジメ)※ナレーション
統原瀬津名(スバル・セツナ)
守山那由多(モリヤマ・ナユタ)

津守八葉(ツモリ・ハチヨウ)
守口京一(モリグチ・キョウイチ)
守機 瞬(モリハタ・シュン)
峯尾晴美(ミネオ・ハルミ)

成田次郎(ナリタ・ジロウ)
川森 篤(カワモリ・アツシ)
三上利夫(ミカミ・トシオ)
稲垣ひかる(イナガキ・ヒカル)

村田今日子(ムラタ・キョウコ)
村田双葉(ムラタ・フタバ)
村田和夫(ムラタ・カズオ)

統原阿僧祇(スバル・アソウギ)
真守百恵(サネモリ・モモエ)
津守十全(ツモリ・ジュウゼン)
守山 載(モリヤマ・サイ)
守口 壌(モリグチ・ジョウ)
守機 漠(モリハタ・バク)

山本忠一(ヤマモト・タダカズ)
磯崎公美(イソザキ・ヒロミ)
妙見彼方(ミョウケン・カナタ)
ヴェルン星人ジルトーシュ
ザイグル星人ウエンヌル

伊藤官房長官

部下A
生徒達


○宇宙空間
青白く光る月。
そこから飛び出すシングウ。
その瞳は赤く燃えている。

シングウ「ウオオオオオオ……」

向かう先には地球。

○天網海岸
ジルトーシュ、右手を上に突き出す。

セツナ「やめて!」

足下に駆け寄るセツナが叫ぶ。

ジルトーシュ「……」

光線を発射するジルトーシュ。突風。

セツナ「!」

耐えるセツナ。
駆け寄る磯崎とウエンヌル。
更に連射するジルトーシュ。

○宇宙空間
走る光線。シングウに悉く命中。

シングウ「ウオオオオオオ……」

後方に吹っ飛ぶシングウ。

○天網海岸
ジルトーシュ「!」

飛び上がるジルトーシュ。急上昇。

○真守家・大広間
ウインドウ(銀河連邦側)に映し出されるジルトーシュの軌跡。身を乗り出してこれを見る一同。

カズオ「飛んだ?!」

モモエ「……」

○宇宙空間
ジルトーシュ、成層圏を抜けて衛星軌道を抜ける。すかさず光線を発射。シングウを吹っ飛ばしてどんどん地球から引き離す。

シングウ「ウオオオオオオ……」

体勢を整えるシングウ、光線をフィールドで相殺して反撃。両腕からチカラをジルトーシュに向かって放つ。

ジルトーシュ「!」

光線が直撃。しかしジルトーシュ、踏みとどまって身構える。瞳の光は青。

シングウ「ウオオオオオオ……」

対するシングウの瞳、紅く燃える。

○御統中学・校庭
宣言するハジメ。

ハジメ「助けよう!」

○天網海岸
空に向かって叫ぶセツナ。

セツナ「ジルトーシュ、やめて!」

目から涙。初めて見せる悲痛な顔。

セツナ「心を、壊さないで!」

○オープニング

○御統中学・校庭
校庭に集まっている生徒達。ハジメやムリョウ、生徒会の八葉達を取り囲むように大きな円が出来ている。

(サブタイトル『戦記は、つづく』)

八葉、ハジメに尋ねる。

八葉「助けるって……どうやって那由多を助けるんだい?」
ハジメ「宇宙に行って……」
八葉「行ってどうする?」

中空を見上げるハジメ。

ハジメ「前の時のように、守山さんの心に声が届けば何とかなると思うんです」
八葉「前の時って……」
瞬「前のサナドン?」
ハジメ「うん」

真剣な顔で頷くハジメ。

   *   *   *

(11話回想)
天網山頂上。那由多の手を握りしめるハジメ、懸命に叫ぶ。

ハジメ「がんばれ!がんばれ!」

   *   *   *

あきれる瞬。京一はじっとハジメを見ている。

瞬「宇宙に行って応援するの?『がんばれ』って?そんな馬鹿なァ」
八葉「気持ちは嬉しいけど、村田君……」
ハジメ「応援するんじゃなくて、目印になるんです」
八葉「目印?」
京一「!」
阿僧祇「目印があれば、シングウのチカラに紛れた那由多ちゃんが帰ってくることができる。あの時のように——」
八葉・瞬「!」

晴美に連れられて阿僧祇やって来る。

阿僧祇「いい考えじゃな」
ムリョウ「じいちゃん」
阿僧祇「よう」
瞬「で、でも……いい考えも何も、村田君は宇宙に行けませんよ!シャトルも無いし、ムリョウさんみたいに飛んでけないし……」
ムリョウ「だから、僕が連れていく」
瞬「ええっ!」

いつもと変わらぬ調子のムリョウ。一同、戸惑いの表情。ムリョウ、あらためてハジメを見やる。

ムリョウ「村田君なら……村田君の心なら連れていけると思うよ」

ハジメ、真剣な表情。

○宇宙空間
戦うジルトーシュとシングウ。
殴り合い、蹴り合い。
シングウ、その形が保てないのかシルエットが乱れる。

○真守家・大広間
中央にはソパル星人の投影する銀河連邦のデータウインドウ。

妙見「彼——ジルトーシュもさすがに、ムゲンを相手にするには、余裕がないと見えますね。実況が来なくなりました」
ソパル星人「妙見君、代わりに見せてよ」
妙見「仕方ないですね」

軽く手を挙げると中空にジルトーシュとシングウの戦う映像が出現。

一同「オオッ!」
カズオ「こりゃすごい」
妙見「あくまでも僕の見た目ですから。ジルトーシュみたいに、人にお見せする映像を映すのは難しい」
山本「あんたも、ひょっとして……」
妙見「一万年前、ジルトーシュやムゲン、阿僧祇さんとは何度か戦いました」
載・壌「!」

ハッとするモモエ。

モモエ「阿僧祇さん……」

○御統中学・校庭
斜面に座る阿僧祇。ニコニコと生徒達を眺めている。
勢い込んで叫ぶ京一。

京一「みんな、準備はいいか!」
一同「おう!」

手をつなぐ生徒達、グラウンドを螺旋状に取り巻く。中間に瞬と八葉が挟まり、終端には京一。生徒は皆、チカラを持つマモリビトの面々。ハジメは京一とジロウの間にいる。

瞬「ホントに大丈夫なのかなぁ……」

つぶやく瞬に声を掛ける八葉。

八葉「瞬!この期に及んで——」
瞬「はーい!迷いは捨てまーす!」

一方でしみじみとジロウ。
ジロウ「しかし、お前も無茶だよなぁ、天網の民でも何でもないのに」

ハジメ、微笑む。

ハジメ「委員長だから、いいんだよ」
ジロウ「おーい、座布団持ってけ!」

ニヤリと笑うジロウ(この一連四話参照)。ジロウの後ろに連なるC組のマモリビト達も笑っている。

京一「村田、行くぞ」
ハジメ「はい」
京一「統原!いいか!」
ムリョウ「はーい、いつでもどうぞ!」

スタートラインに立つムリョウ。横には雷管を持った晴美。
残りの生徒達はトラックを取り囲む。
ハジメの携帯を持っているトシオ、シングウとジルトーシュの位置をモニターしている。

○宇宙空間
戦うシングウとジルトーシュ。
土星付近までやって来る。

○御統中学・校庭
晴美「オンユアマーク!」

クラウチングスタートのムリョウ。
雷管を構える晴美。

晴美「レディ」

腰を上げるムリョウ。
緊張する一同。
正面を見据えるムリョウ。
引き金が引かれ、雷管が鳴る。
ダッシュ。
トラックを一周二周——
螺旋の生徒達、力を込める。

京一「チカラを集めよ!螺旋の渦に!」
瞬「!」
八葉「!」

速度を増すムリョウ。
目を丸くして見ているトラック周囲の生徒達。

アツシ「すご……」

ギュッと目をつぶるハジメ。
ゆっくりと目を開けると、周囲は水の奔流。流れは背後から前方に向かい、その先は光で見えない。

京一(声)「村田、統原が来るぞ!」

走るムリョウ、トラックから螺旋に沿って内側へ。流れていく生徒達の顔、顔、顔——

生徒達「がんばれ、がんばれ!」
ジロウ「ハジメ!ムリョウ!」
瞬「お二人ともよろしく!」
八葉「頼むぞ!」
京一「さぁ来い、統原!」

皆のチカラが京一の手に集まる。奔流の中のハジメ、背後から大きなうねりを受ける。

ハジメ「!」

ムリョウ、殺到する。そして京一の目の前でジャンプ。

京一「受け取れ!」

手に溜めたチカラをムリョウに撃ち出す京一。それを受けて更に上昇していくムリョウ。

ハジメ「ムリョウ君!」

チカラの奔流の中のハジメ、前を行くムリョウの後ろ姿を見る。

ハジメ「!」

上昇するムリョウにハジメのイメージが重なる。地球を離脱するムリョウ。

○種子島・宇宙開発センター
大わらわのセンター内。電話中のカズオの部下、血相変えて叫ぶ。

部下A「何ですかこれは?ものすごい早さですよ?!」

メインスクリーンには地球から飛び出していくムリョウのデータが表示。

○真守家・大広間
電話を受けているカズオ。

カズオ「ああ、それはウチの息子とその友達だよ。ハハハ」

部屋のウインドウ群にも同様に地球を離脱していくムリョウのデータ。

カズオ「……友達を、助けに行くんだ」

微笑んで見ているモモエ、妙見、ソパル星人、山本——

○宇宙空間
光速を越えて飛ぶムリョウ。
瞳の奥にはハジメ。ハジメは光の奔流の中を進む。

○御統中学・校庭
八葉、ハジメの体を斜面に置く。
目をつぶったまま動かないハジメ。
取り囲んで心配げに見つめる一同。

トシオ「ハッちゃん、大丈夫なんですか?」
阿僧祇「大丈夫。ムリョウがついとる」

投影されるウインドウにはシングウの位置、ムリョウの位置が表示中。

トシオ「でも、あれ見てると守山さんとアロハさん、太陽系の外にいますよ。あそこまで行くのも信じられないけど、どうやって帰ってくるんですか?」
ジロウ「お前、相変わらず冷静だな」

阿僧祇、微笑むと八葉に声を掛ける。

阿僧祇「それにしても今の螺旋のアイディア、なかなかグーじゃの」
八葉「グー? ああ、これは京一の思いつきで……」
京一「思いつきではない!ひらめいたんだ!」
瞬「同じだよ」
京一「!」
阿僧祇「ひらめきは日頃の積み重ねの延長に起こるものじゃよ。お前さんも成長しとるな……」
京一「え? いや……」

怒ったり照れたりの京一に微笑む晴美。

阿僧祇「後は那由多ちゃん……彼女次第で地球の命運は決まる」

空を見上げる阿僧祇。

○天網海岸
砂浜に大きなジルトーシュの足跡。
防波堤を背にして座っているセツナ、磯崎、ジルトーシュ。

セツナ「絶対の正義、絶対の真実……」
磯崎「その名の下に、人の命のみならず、惑星さえも消し去ることのできる唯一無二の存在——それが判定者」
セツナ「よく知ってるのね」
磯崎「調べました」
セツナ「それはご立派」
磯崎「あなたと、ジルトーシュのことも」
セツナ「あ、そ」
磯崎「チカラの暴走したお兄さん……その命を奪ったのが、ヴェルン星の勇者ジルトーシュ——」

セツナ、磯崎を見る。やや厳しい顔。

セツナ「兄は死んではいない」

○真守家・大広間
妙見、目をつぶって何かを感じている。
投影していたジルトーシュ達の姿が不鮮明になっていく。

妙見「さすがに三〇光年も離れてしまうと私にも見えない」
載「三〇光年?!」

消える映像。大きく息を吐く妙見。

モモエ「これからどうなるのでしょう?」
ソパル星人「それはヴェーやん……判定者次第です」

○宇宙空間
両手をつかんで押し合いの格好のシングウとジルトーシュ。見つめ合う両名、しかし突き放すジルトーシュ。瞬間、光を発するシングウ。新星の爆発のように輝く。光の奔流。飲み込まれるジルトーシュ。

ジルトーシュ「フゥン!」

姿勢を制御し、前進するジルトーシュ。両手を突き出し、何かをしようとすると背後より声。

ハジメ「待って!」

急速に接近するムリョウ、その瞳の奥にはハジメ。その目に映るのは星の爆発。光の固まり——

ハジメ「待って下さい、待って!」

右手を差しのべるハジメ。
光に包まれる、宇宙。

○アイキャッチ

○チカラの奔流
ふと目を覚ますハジメ。目の前にはムリョウ。

ムリョウ「大丈夫かい?ハジメ君」
ハジメ「あ、ああ……」

辺りを見回すハジメ。周囲には沢山の水泡の流れと光のきらめき。

ジルトーシュ(声)「やっぱり来たかい」

声が聞こえる。辺りを見回すハジメ。
正面に姿を現すジルトーシュ。その姿は紅い巨人だが背丈は以前のまま。

ジルトーシュ「本当に君らは名コンビだね。でも、もう遅いよ。那由多ちゃんの体も心も、全てシングウのチカラに飲み込まれてしまった」
ハジメ「守山さーん!」

思わず叫ぶハジメ。

ハジメ「守山さーん!」

水泡の流れは変わらず、光の勢いもそのまま。辺りを見回すハジメとムリョウ。

ジルトーシュ「一万年前、ムゲンという男が敵の大艦隊と戦ってね。チカラを解放して銀河を一つ、吹っ飛ばした」
ムリョウ「じいちゃんから聞いてる。姉ちゃんは教えてくれなかったけど」
ジルトーシュ「ハハ、そりゃそうだ」

ジルトーシュ、両手を大きく広げる。

ジルトーシュ「シングウというのは、そのムゲンという男の成れの果て。心も体もエネルギーと化した全てだ。しかしこれはごく一部。那由多ちゃんが使っているのはシングウのチカラのごくほんの少しでしかない。本体は——」
ハジメ「本体は?」

○天網山
天網神社より仰ぎ見る天網山。

ジルトーシュ(声)「天網山の地下深く……僕と阿僧祇はシングウをそこに隠し、阿僧祇は自分の宇宙船をおやまに隠した」

○チカラの奔流
怪訝な顔のハジメ。

ハジメ「隠すって……こんなものどうやって隠したんです?」
ジルトーシュ「外に広がるチカラは同時に内に向かうチカラでもある。その辺をクイッとね……」

思わず水栓をひねるジェスチャーをするハジメ。

ハジメ「クイッと?」
ジルトーシュ「そうそう。那由多ちゃんは外に向かうチカラをクイッと内側に向けてシングウとなって戦った。モモエさんも、その前の代も、シングウを扱う人はみんなそう。内側に向かうから形が出来る。外に広がれば形は無くなる——」
ハジメ「要するに……洪水に背を向けるか、立ち向かうかってことですか?」
ジルトーシュ「ほぅ。君はなかなか勘がいいね。ムゲンも那由多ちゃんも立ち向かって流れに飲まれた」
ハジメ「それが、この流れ? あなたはこれから、どうするつもりなんですか?」
ジルトーシュ「広がりきったところで、再び内側にクイッと」
ムリョウ「広がりきったら地球も太陽系も無くなってしまうんじゃないですか?」
ハジメ「え?」
ムリョウ「だってこれ、でっかい爆発だよ。爆発に飲まれた星は、星くずに変わる」

○宇宙空間
外から見た奔流。渦巻く巨大な光。

ジルトーシュ(声)「そうだね。それはまぁ、しょうがない——」

○チカラの奔流
ジルトーシュ「シングウのチカラをゼロにするにはこの繰り返しだ。少しずつ少しずつ、こうやって拡散させて総量を減らしていく。気の長い話だが、これしかないのさ」
ハジメ「これしかない、って……じゃあ、地球は?天網の人達って何なんですか?!」

○真守家・大広間
ひたすら待っている一同。
不安気な四当主と山本達。

ジルトーシュ(声)「まぁ、例えて言うならクイッと……水道の蛇口かなァ。地球はさしずめポリタンクとか」

○御統中学・校庭
見上げている一同。横たわっているハジメの体。

ハジメ(声)「守山さんは道具じゃない!真守のおばあちゃんだってみんなだって……」
ジルトーシュ(声)「それを望んで、セツナは地球の番人になった」

○チカラの奔流
ギョッとするハジメ。

ハジメ「え?」
ジルトーシュ「自分の兄の罪を償うために……彼女の一族は、天網の民の祖先だ。地球人と交わり、子を産み、シングウの守り部となり……」

ムリョウ、ジルトーシュを静かに見つめる。

○かくれ里
村の全景。シングウの道祖神。
たなびく御幣。

ジルトーシュ(声)「結局、彼らのやり方では、シングウのチカラを無にする事はできなかった」

○チカラの奔流
ハジメ「じゃああなたは、何故地球に?」
ジルトーシュ「約束だよ」
ハジメ「約束?」
ジルトーシュ「彼らの試みを見届ける約束……阿僧祇も本来はこちら側だったんだけど、地球の女性と、共に同じ刻(とき)を生きることを選んだ。ま、それも一つの道だよね」
ハジメ「!」

ハッとするハジメ。

○真守家・大広間
座して待つモモエ。

○御統中学・校庭
斜面に座り空を見上げている阿僧祇。

○チカラの奔流
表情が和らぐハジメ。

ハジメ「いろいろ説明していただいてありがとうございます。大体わかりました」
ジルトーシュ「フフ、そうかい?」
ハジメ「要するに、このチカラの流れを何とかすれば地球は助かるし、あなたが第二第三の天網の民を作り出す必要もなくなると、そういうことなんですね?」
ジルトーシュ「……」
ハジメ「守山さんを助けます」
ジルトーシュ「もう無理だ。彼女は——」
ハジメ「大丈夫です」

ハジメの瞳に映る水泡。光の煌めき。

ジルトーシュ(声)「どうするつもりだ?」

奔流に流されるハジメ。

ハジメ「探すんです。守山さんを!」
ジルトーシュ(声)「無駄だ。そんなことはできない」
ハジメ「僕にはあなたやムリョウ君のようなチカラはない。でも、流れを感じることは出来る。守山さんを感じることができる」

流れに向かって叫ぶハジメ。

ハジメ「守山さん、聞いていたら答えてよ! 守山さーん!」

水泡の流れ激しく、光は煌めく。
目を見開くハジメ。他方から異なる光の奔流。ハジメ、それをもろに受けると押し流される。

ハジメ「うわぁぁぁぁッ!」

懸命に目を凝らすハジメ。
差しのべられる、手。
ハッとするハジメ、手を伸ばす。
握り合う、手と手。

   *   *   *

対峙しているムリョウとジルトーシュ。
周囲の水泡の流れが逆転している。

ジルトーシュ「流れの向きが、変わった……」
ムリョウ「本当は、望んでいるのではないですか?」
ジルトーシュ「何をだい?」
ムリョウ「守山さん……いいえ、地球人がシングウのチカラを取り込んで、次の段階に進むことを——」
ジルトーシュ「でも、無理だった」
ムリョウ「まだ、わかりませんよ」

見つめ合う二人。奔流の速さ、増していく。

ムリョウ「僕は二人を信じています」
ジルトーシュ「君は一体、何者なんだい?」
ムリョウ「フフ……」

二人、光に包まれる。

○宇宙空間
渦巻く光、その流れは以前とは逆向きになっている。一瞬、激しく光ると圧縮し、小さな点になる。

○御統中学・校庭
いつしか夕方。
見上げていた阿僧祇、微笑む。

阿僧祇「感じたかい?」

空から妙見の声が聞こえる。

妙見(声)「ええ」

○真守家・大広間
妙見、微笑んでいる。

妙見「三〇光年先。大いなる煌めき」

周囲、怪訝に見つめている。

○御統中学・校庭
八葉、怪訝そうに尋ねる。

八葉「どうしたんですか?」
阿僧祇「三〇年後に君達にも見える」
八葉「はぁ?」
阿僧祇「新たなる未来の誕生じゃな」
瞬「未来?じゃあ、ひょっとして……」
京一「!」

グラウンド上空を見やる京一。同じく見上げる顔、顔、顔。

ジロウ「あぁっ!」

上空に波紋。出現するシングウ。

シングウ「ウオオオオオオ……」
トシオ「行こう!」
ジロウ「ハジメーッ!」
アツシ「ハッちゃーん!」

生徒達シングウに駆け寄る。
シングウの全身が輝き、瞳が輝く。

シングウ「ウオオオオオオ……」

弾けて消えるシングウ。花びらが舞う。
キョトンとする一同。

ジロウ「あれ?」

   *   *   *

斜面に残されたハジメの上で光が舞う。
見守る八葉や阿僧祇の前で那由多が現れる。その手はハジメの手をしっかり握っている。目をつぶったままの那由多——

八葉「おかえり」
那由多「……」

ゆっくりと目を開ける那由多。

晴美「おかえりなさい」
那由多「あ……」

我に返る那由多、ハジメを見る。

ハジメ「やあ……」

横たわっていたハジメも目を覚ましていた。いたずらっぽい微笑み。

那由多「また、握手だね」
ハジメ「へへへ」

微笑んで見守る八葉達。京一と晴美も
顔を見合わせて微笑む。

ジロウ「おーい、なんだよそっちかよぉ!」

グラウンドでは拍子抜けのジロウ達。

ハジメ「ははは。お——い!」

不意に気配を感じる晴美。

晴美「!」
ハジメ「え?」

晴美、ハジメと那由多の前に立ち、身構える。続いて八葉達も身構える。
ハジメ達の前にジルトーシュ現れる。
いつものアロハシャツ姿。

ジルトーシュ「やあ」
ジロウ「あ」

ジロウ達も緊張。

阿僧祇「ずいぶん嫌われたのぉ」
ジルトーシュ「はは、ま、しょうがないね」

見つめ合うハジメとジルトーシュ。

ジルトーシュ「どうして那由多ちゃんを見つけることが出来たんだい?」
ハジメ「前にシングウが火星で戦ったとき……手をつないで流れを感じたんです」
ジルトーシュ「流れ?」
ハジメ「シングウのチカラ……守山さんのチカラの流れ……そんな感じが残ってたんです。だから探せる、守山さんもきっと——」
ジルトーシュ「きっと、何だい?」
那由多「私も探してた、村田君のこと」
瞬「よっ、お二人さん!」
那由多「コラッ」

殴るふりをしても顔は笑っている那由多。ハジメも微笑む、周囲も微笑む。
ジルトーシュ、苦笑い。

ジルトーシュ「やれやれ。長生きすればエライってもんじゃないねぇ」
阿僧祇「今頃気がついたのか?」
ジルトーシュ「だって認めたくないじゃない」
阿僧祇「ははは」
ジルトーシュ「それでは、判定者としてここに宣言します。地球をめぐる銀河連邦と宇宙連盟のいさかいは改めて話し合いの機会をもうけること。地球は明らかに次の段階に進化する兆しを見せている。以後、地球を未開発惑星として調査することはこれを禁止する——」

ポカーンと聞いている一同。

ジルトーシュ「これでいいね、諸君!」

八葉は怪訝な顔で尋ねる。

八葉「それは、信じていいんでしょうか?」
ジルトーシュ「あっはっはっはっ!参ったなぁ……大丈夫、信じていいよ。いや、信じてほしい」

男の顔になるジルトーシュ。

ジルトーシュ「地球への、尊敬と友情を込めて——」
ハジメ「ジルトーシュさん……」

感動した面持ちの一同。

トシオ「あれ?そういえばムリョウ君は?」
瞬「やな予感がするなぁ」
京一「と、いうと——」

案の定、上空より叫び声。

ムリョウ「うわああああああぁーッ!」

グラウンドの中央に激突するムリョウ、
土柱が上がる。
何故か拡声器にカメラを持って駆けつけたひかる、目を輝かす。

ひかる「うひゃーっ、いいねえいいねえ!……(拡声器構えて)はい、皆さんこっち向いて——ッ!」

シャッターを切るひかる、一同のスナップを次々と撮影。

○天網市・点景
だらだら坂から海を臨むセツナと磯崎、
ウエンヌル。つぶやくセツナ。

セツナ「ムリョウ、ハジメ君、お疲れさま」

綺麗な夕焼け——

○村田家・外
数日後の朝。晴れ。

○同・玄関
扉を開けて出ていくハジメ達。

フタバ「行って来まーす!」
ハジメ「行って来ます」

見送るキョウコ。

キョウコ「行ってらっしゃい」

○国道沿い
朝の通勤風景。
学校に向かうハジメとフタバ。

NR「あれから数日経った。結局、急いで加入とか加盟の話をする必要も無くなったので、再びゆるやかな宇宙の皆さんとの日々が続くことになった。だけど、みんなは知ってしまった。天網市のこと銀河連邦や宇宙連盟、宇宙人のこと。だから今までのようには行かないのだけれど、だからこそ前進はする。されど、後戻りはしない、できない、してはならない」

○切り通し
ムリョウと合流するハジメ達。
浮き浮きとムリョウに話しかけるフタバ、苦笑いでこれを見るハジメ。

○小学校前
フタバ、ミドリとユカリに合流。
お別れに手を振る三人組。

○村田家・居間
TVのニュースではカズオと官房長官とソパル星人が座談会をしている。

官房長官「連邦と連盟、ホントは仲良し?」
ソパル星人「徳川家慶(いえよし)」
カズオ「ソーさん、いい加減にしなよ」

スタジオ内爆笑。
苦笑いで見ているキョウコ。

キョウコ「平和ねぇ……」

○陸橋
ハジメとムリョウ、並んで歩く。
ふと、話しかけるハジメ。

ハジメ「ねえ、ムリョウ君」
ムリョウ「何だい?」
ハジメ「ムリョウ君は、結局何者なんだい?」
ムリョウ「何だよ今頃」
ハジメ「今だから聞くんだよ。今ならあんまり関係ないじゃない、諸々」
ムリョウ「諸々?」
ハジメ「そう。諸々」

立ち止まって考え込むムリョウ。

ムリョウ「う——ん……」
ハジメ「やっぱり宇宙人なの?阿僧祇さんやセツナさんみたいに……」
ムリョウ「ああ、違うよ」
ハジメ「え、そうなの?」
ムリョウ「実は僕は.」
ハジメ「実は?」
ゴクリと飲み込むハジメ。
ムリョウ「気付いたら、そこにいた」

   *   *   *

(回想)
セツナ、家の戸を開けると外には幼いムリョウが立っている。阿僧祇ものぞき込む。人なつこく微笑むムリョウ。

   *   *   *

ハジメ「え——ッ?!」

驚くハジメをよそにスタスタ歩き去るムリョウ。

ムリョウ「そういうことにしといてよ」
ハジメ「えーっ?! ちょ、ちょっと待ってよムリョウ君!」

口あんぐりのハジメ、あわててムリョウの後を追う。そんな二人を見やってしかめっ面をしてみせる那由多。

那由多「なーにやってんだか……フフ」

二人を追って那由多も駆け出す。

那由多「こらーっ!そこの二人組!」

NR「これから文化祭もあるし期末試験もあるし、果ては宇宙外交、冬休み。僕らの戦いは続くのだけれど、とりあえずお話は、これでおわる」

だらだら坂には生徒が歩き、秋の装いの木々の向こうには校舎がそびえる。

NR「それでは続きは、またの機会ということで——」

(エンディング直結)
※テロップのバックに登場人物のカーテンコール(?)流れる〜最後は御統中の全景で締め

         (第二六話・完)

☆二〇〇字詰七七枚換算

画像1


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)

ありがとうございます!
51
アニメ監督です。こちらでは過去に発表した原稿やら何やらを載せていきたいと思います。

こちらでもピックアップされています

学園戦記ムリョウ全脚本
学園戦記ムリョウ全脚本
  • 26本

佐藤竜雄の原作脚本監督作品『学園戦記ムリョウ』全26話の脚本です。オリジナルアニメの脚本はあまり見る機会がないということで自作をここに公開します。無料無期限ですのでお気軽に!

コメント (2)
【感想1】
全話視聴しました。
面白かったです。

そしてこの面白さがどうやって作られたんだろうと気になりました。

『学園戦記ムリョウ』という作品はすごく不思議な作品で、宇宙人が地球へ攻撃を仕掛けてきていたり、
宇宙人同士の諍いの舞台に地球が巻き込まれてしまったり、普通だったら毎話バトルが欠かせないロボットアニメになるか、あるいはSFバトルものになりそうなものなのに、学園や天網市の日常は平和に続いていて、その裏でそういった宇宙要素が静かにゆっくりと進行している、まるで日常系アニメのような雰囲気のままSF展開が進行するという変わったアニメでした。

そしてそれを観ていると、こう、じわじわ… じわじわ… とした面白さを感じるんですよね。
このじわじわした面白さは他のアニメではあまり味わえないもので、そんな面白さはいったいどこまで計算して作られたものなんだろう?
あるいはこの面白さはどの段階からこうなるだろうという予想があって作られていたんだろう?
そういったところが気になりました。
【感想2】
脚本を作る段階で?
脚本を元にアニメが出来上がっていくその過程で?
それとも佐藤監督が書きたい要素を集めて好きに脚本を書いた結果、意図せず佐藤監督の人柄なり人格なりから滲み出るようにして生み出されたのだろうか?
などなど

私のようなアニメ視聴者はアニメを観て楽しんでいるわけですが、
その楽しさとはどこまで意図して作られていてどこまで偶発的なものなんだろうか。
そして制作サイドは、どこまでその意図した面白さや偶発的な面白さを意識してアニメ制作をしているんだろうか。
と、そんなところが観ていて気になったりしました。

そして脚本家志望である私にとって、そういう面白さは脚本を書く段階でどこまで意識しているんだろう。
どこまで意識して脚本を書くのがいいんだろう、というようなところも観ながら考えてしまいました。

長々と感想を書いてしまいましたが観ていて本当に楽しい作品でした。
楽しいアニメを制作していただきありがとうございました。
と、今更言うのは遅すぎるのかもしれませんが……。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。