第24話『さだむるもの、ここに』

学園戦記ムリョウ

第二四話『さだむるもの、ここに』(第一稿)

脚本・佐藤竜雄

登場人物
統原無量(スバル・ムリョウ)
村田 始(ムラタ・ハジメ)※ナレーション
統原瀬津名(スバル・セツナ)
守山那由多(モリヤマ・ナユタ)

津守八葉(ツモリ・ハチヨウ)
守口京一(モリグチ・キョウイチ)
守機 瞬(モリハタ・シュン)
峯尾晴美(ミネオ・ハルミ)

成田次郎(ナリタ・ジロウ)
川森 篤(カワモリ・アツシ)
三上利夫(ミカミ・トシオ)
稲垣ひかる(イナガキ・ヒカル)

進藤秋美(シンドウ・アキミ)
真弓 司(マユミ・ツカサ)
堀口正夫(ホリグチ・マサオ)
山下毅雄(ヤマシタ・タケオ)
内田 晶(ウチダ・アキラ)

村田今日子(ムラタ・キョウコ)
村田双葉(ムラタ・フタバ)
村田和夫(ムラタ・カズオ)

真守百恵(サネモリ・モモエ)
津守十全(ツモリ・ジュウゼン)
守山 載(モリヤマ・サイ)
守口 壌(モリグチ・ジョウ)
守機 漠(モリハタ・バク)

山本忠一(ヤマモト・タダカズ)
磯崎公美(イソザキ・ヒロミ)
妙見彼方(ミョウケン・カナタ)
ヴェルン星人ジルトーシュ
ザイグル星人ウエンヌル
ソパル星人
ハイン星人
コンコル星人
伊藤官房長官

生徒A
生徒B

生徒達
街の人々


○天網市・全景
十月の午前中。天網市上空に静止している二隻の巨大宇宙船。一方が銀河連邦、もう一方が宇宙連盟。

○同・点景
薄暗い街。
上空の宇宙船を見上げる人々。通りから、或いは二階の窓から——

○村田家・居間
フタバ「お兄ちゃん、遅いね」

戸を開けて見上げているフタバ。奥ではキョウコ、TVを見ている。

○真守家・前庭
屋敷の真上は青空。双方の宇宙船、真守家を挟んで対峙している。

セツナ「……」

空を見上げるセツナ。

○同・大広間
上座には当主達。左にはそれぞれソパル星人とコンコル、ハイン星人。右には妙見彼方が座る。下座には伊藤官房長官とカズオ。山本と商工会長達は脇に控えている。

モモエ「皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。この先、地球をどうするつもりなのか、銀河連邦と宇宙連盟、双方の方々のお考えを明らかにしていただきたいと思いまして——」

憮然としている壌、無表情なのは十全と漠、載は硬い表情。モモエはいつも通りの穏やかさ。

ソパル星人「本当は、サクサク地球と銀河連邦の交渉を進めたかったんですけどねえ」
妙見「そうはいきません」

静かに微笑む妙見。

モモエ「(微笑)皆さんご承知の通り、地球は、非常に不安定な立場にあります」

○かもめハウス・居間
テーブルを挟んで対峙するジルトーシュと磯崎。それを見守るウエンヌル。

ジルトーシュ「……元々は、遙か遙か大昔、銀河連邦と宇宙連盟のいさかいが発端なんだよね」
ウエンヌル「いさかい?」
磯崎「先の大戦のことね」
ジルトーシュ「そう!(磯崎に向かって)君んとこのアルティン星がまだ銀河連邦に加盟をするよりもだいぶ前。地球で言うと一万年以上前の昔、大きな戦争があったんだよ……」

ジルトーシュ、自嘲気味につぶやく。

ジルトーシュ「全く……バカなことをしたもんだ」

○オープニング

○御統中・ポーチ
パラパラと登校する生徒達。

(サブタイトル『さだむるもの、ここに』)

昇降口には『本日休校』の貼り紙。

○同・廊下
緊張した面持ちで一人歩くハジメ。

○同・二年C組
扉を開けるハジメ。教室にはジロウや堀口、内田、関根ら数名ほどが談笑中。

ジロウ「よう、ハジメ!」

にこやかに振り向く一同。

一同「おはよう!」
ハジメ「お、おはよう……」
ジロウ「水くさいぞ、ハジメ!」
ハジメ「え?」
ジロウ「一人だけで文化祭の準備をしようだなんてよ。イイ格好しすぎ」
堀口「俺たちも来てやったぞ」
ハジメ「でも……今日は休校だよ」
ジロウ「そりゃ、お前も同じだろ」
ハジメ「え?」
ジロウ「休校なのに何でいるんだよ、お前」
ハジメ「僕は、ただ……」

ジロウ、ハジメの肩をポンと叩く。

ジロウ「そういう事だよ、ハジメ」

ニッコリ笑うジロウ。

ハジメ「……」

愕然とするハジメ。

   *   *   *

(回想)
ポーチでの晴美と京一とのやり取り。(23話参照)

晴美「いいえ。これは、マモリビトの長(おさ)である私の指示です」
那由多・京一「?!」
晴美「私達は、あなた達を守ります」

   *   *   *

ハジメ「みんな……」
ジロウ「俺は、別に峯尾に言われたからだけじゃないよ。お前が来てる、っていうしさ」
堀口「祭りクラブもいいけど、ウチのクラスの出し物!準備遅れてるだろ」
ハジメ「うん……」
内田「ついでだからやっちゃいましょう」
山下「そうそう。先生の邪魔なしに撮影できるチャンスなんてそうそう無いしね」
ジロウ「よぉーし、クラブとクラスの準備、一挙に進めるぞ!」
一同「おーーッ!」

ハジメ「みんな……」

感無量なハジメ。

トシオ「そんなことだろうと思ったよ」

淡々と入ってくるトシオ。ギョッとするジロウ達。ハジメはキョトン。

ジロウ「トシオ?! 今日は休校だぞ!」
トシオ「お前らだって来てるだろ」
ジロウ「俺達は……俺達はいいんだよ!」
トシオ「だったら、俺達だっていいんだよ」
ハジメ「俺達?」
トシオ「みんな、入って来いよ」

アツシにアキミにツカサ、西岡に野口らゾロゾロと。

アツシ「おはよう」
アキミ・ツカサ達「おはよう!」
ハジメ「!」
ジロウ「アツシ? ツカサ?」

素っ頓狂な声を上げるジロウ。

ジロウ「何でお前らが……お前ら、マモリビトじゃねえだろが!」

突然、黒板のモニターが立ち上がる。
オープニングタイトルは——

『MISCYU NEWS』

次いでにこやかなひかるの笑顔。

ひかる「はぁい、おはようございまーす!」
ハジメ「稲垣先輩?」

○同・生徒会室
驚いて放送を見ている那由多と瞬。
那由多「何でひかるさんが……八葉さんは?」
瞬「飛び出してったよ」
ひかる「本日は休校だというのに、こっそりどっきりマメに登校してきた皆さん、君らはエライ!」

○同・放送室
収録ブースで放送中のひかる。

ひかる「ご存じのように今日は、先生方がいらっしゃいません!したがって校舎内外、学校の施設は使い放題、やりたい放題!」

○同・廊下
印刷用紙の束を抱えた京一と晴美、驚いた顔で聞き入っている。

ひかる(声)「で・す・が! そこは、自主と自律の御統中学!」

○同・放送室
ひかる「生徒会の指示に従って、楽しく、充実した文化祭準備を行いましょう。では♪」

CG画面に切り替え。カフスイッチをオフにしてほっと一息のひかる。
乱暴に扉が開く。

八葉「……」

憮然とした顔の八葉、息が荒い。

ひかる「やあ♪」
八葉「……どういう事だ?」
ひかる「どういう事って、こういう事だよ」

飄々とした態度を崩さないひかる。

ひかる「君らだけじゃ頼りないでしょ。確かに君達は、すごいチカラを持ってるかもしれない。だけど、情報力は全然無い」

手元の端末を操作するひかる。調整室のモニターに世界各地のニュースやWebサイトが映る。

ひかる「この二時間余りでも、世界はどんどん動いてる。国連では事務総長が声明を出してる、アメリカやヨーロッパ、アジアの代表が続々日本にやって来てる……これは、かなり前から入念に進められてきた計画だよ。伊藤官房長官は、日本の大臣というだけじゃなくて、この計画の中心人物だった。だから——」

声を荒げる八葉。

八葉「君は僕らとは違う! マモリビトでもないし、天網の民でもない!」
ひかる「私だけじゃないんだよ。ひかるちゃんネットワークで、今頃続々と登校中!」
八葉「何?」

○同・点景
各クラスではマモリビト組とそうでない組の対面が行われている。驚いているのは一様にマモリビト組。照れくさそうに、或いはにこやかに声を掛けるのは、そうでない組の方。

「おはよう」
「おはようッス!」
「おはよう!」

○御統中・屋上
三本柱に立つムリョウ、つぶやく。

ムリョウ「これからが勝負だな、姉ちゃん」

○真守家・廊下
次の間から台所へと続く廊下。
山本が携帯で通話中。

山本「みんなが登校? みんなって誰だ?」

○御統中・職員室
電話を掛けているのは那由多。隣には瞬が立っている。

那由多「みんなって、みんなです!」

少々興奮気味な那由多。

山本(声)「何言ってんだ、お前?」
那由多「あァ、だから……最初、晴美ちゃんがマモリビトの子達に声を掛けて、次にひかるさんがそうじゃない子達に声を掛けて……だからみんな学校に来ちゃったんです!」
瞬「全然説明になってないよ」
那由多「うるさい!」
山本(声)「ははは」

○真守家・廊下
ニコニコ微笑んでいる山本。

山本「まぁ、来ちまったもんは仕方ないな。お前らで何とかしろ」
那由多(声)「え?で、でも」
山本「それじゃあ、な」

携帯を切る山本、様子を見ていたセツナに気が付く。エプロン姿のセツナ、手にはボールを抱えて料理の支度中と言ったたたずまい。

セツナ「『みんな来ちゃった』、ですか?」
山本「そうらしいですな」

庭を見やる山本、嬉しそう。

山本「これで、いいのかもしれません」

○同・大広間
会議中。
穏やかな様子のモモエ。

○御統中・大ホール
七割程度の生徒の数。一様に緊張気味。
ハジメ「……」

神妙な表情のハジメ、その隣には穏やかな表情のムリョウ。舞台上の長机では八葉達が軽いミーティング中。

晴美「各クラスの出欠表です。登校してきたのは二七二人。そのうちマモリビトが一〇二人ですから……」
八葉「もう、いいよ」
晴美「え?」
八葉「……生徒総会だからね。誰が何だ、というのは関係ない。みんなミスチュウの仲間だ」
那由多「八葉さん……」

微笑む八葉、マイクをオンにする。

八葉「それでは、臨時生徒総会を始めます」

各所に配置されたメディア委員、カメラを構える。

○天網市・点景
上空の宇宙船の威容。街は薄暗いが、水平線の青さは変わらず。

○かもめハウス・居間
携帯で通話中の磯崎、顔色が変わる。

磯崎「生徒達が?学校に?」

ジルトーシュとウエンヌル、興味深げに眺めている。磯崎、その視線に気付くと努めて冷静な顔に。

磯崎「はい。わかりました。それでは——」

通話を終え、携帯をしまう磯崎。

ジルトーシュ「いいのかい、学校行かなくてもさぁ?」

ニヤニヤと笑うジルトーシュ。磯崎、向き直ると改まった表情。

磯崎「貴方にお尋ねしたいことがあります」
ジルトーシュ「いいねぇ、美人の『あ・な・た』!色っぽいねぇ♡」
磯崎「私は、銀河連邦の本部に行って色々と調べてきました」
ジルトーシュ「うんうん」
磯崎「……ヴェルン星人ジルトーシュ、貴方は一体、何者なのですか?」
ジルトーシュ「何者って、ジルトーシュだよ。銀河連邦第一級の外交官さ」
磯崎「……真実の顔は『判定者』」
ジルトーシュ「……」

ニヤニヤ笑いが止まるジルトーシュ。

ウエンヌル「はんていしゃ?」
磯崎「……」

顔がこわばっている磯崎。

○天網市・点景
住宅地。市役所の広報車がゆっくりと走っている。

広報「天網市の安全は、日本政府並びに銀河連邦、宇宙連盟の保証を得ています。当面の危機はありません。市民の皆さん、ご安心下さい——」

○村田家・居間
外の様子を眺めているフタバ。

フタバ「安心、っていっても何やってればいいんだろうね」

WebとTVで情報収集中のキョウコ。

キョウコ「明日の予習でもしてなさい」
フタバ「べー」

いたずらっぽく微笑むフタバ。

フタバ「お手伝いならするよ」
キョウコ「まぁ、リッパな心がけ」
フタバ「来年は中学だし、お兄ちゃんの面倒ももっと見てあげないといけないし——」
キョウコ「はいはい」

Webのヘッドラインニュースに『生中継!御統中学校生徒総会』の文字。
投稿者は『御統中学・稲垣ひかる』

キョウコ「あら」
フタバ「どうしたの?」

パソコンをのぞき込むフタバ。

フタバ「みすまるちゅう?」
キョウコ「お昼は二人分ね」

つぶやくキョウコ。

○御統中・大ホール
正面のスクリーンには『臨時生徒総会』の文字が映っている。

八葉「事情を知っている人も知らない人も……いや、もう薄々わかっているのかもしれないけれど、ここ天網市には秘密がありました。ました、というのはもはや、秘密にする意味がないからです」

○村田家・居間
テーブルの上のパソコン上では生徒総会の様子がWeb中継中。キョウコとフタバは台所で昼食の準備をしている。
楽しげな二人の声。

フタバ「これも入れよう、ねっねっ!」
キョウコ「こらっ、だめよっ」

○天網市・点景
自宅で、店先でWeb中継を見ている人々。取材中のクルー達も駅前で見入っている。

○点景
同様に見入っている人々がいる。
新宿駅のナンパ君——
宇宙開発センターの職員達——
世界各地の人々——
かくれ里の阿僧祇——

八葉「ここ、天網市は、かつて地球にやって来た宇宙人が住んでいた場所でした。銀河連邦は本来、発展途中の惑星への加入を禁止していましたが、ある使命と引き替えにこの地に住むことを許されたのです——」

○御統中・大ホール
舞台中央で話をしている八葉。
ハジメ達、真剣な表情で聞いている。

NR「津守先輩は淡々と話していった。天網の民のこと、おまじないのこと、今までの戦いのこと。みんながどこまで知っているのか、どこまで理解してくれるのかはわからない——」

京一は腕組みして目をつぶっている。
晴美はうつむき、瞬は頼もしげに八葉を見つめている。硬い表情の那由多。

那由多「……」

目が合うハジメと那由多。
うなずき合う二人。

NR「でも、空には宇宙船、街には宇宙人。僕らはこうして学校にいる」

○アイキャッチ

○宇宙空間
地球を遠く離れた位置に待機している銀河連邦の大艦隊。
立体的な鶴翼陣形。沢山の戦艦。
(テロップ『銀河連邦・第一特別艦隊』)

同様に待機している宇宙連盟の大艦隊。
こちらは魚鱗陣形。沢山の戦艦。
(テロップ『宇宙連盟・天の川艦隊』)

○真守家・台所
野菜を刻んでいる山本。横からのぞき込んで感心するセツナ。

セツナ「うわ、お上手」
山本「いやいや、やもめ暮らしが長いもんでこれ位は……」
セツナ「でも、よろしいんですか?持ち場を離れて」
山本「モモエ様も、銀河連邦の連中も強いですからな。私が出る幕などありませんよ。それよりも……」
セツナ「それよりも?」

山本、セツナが作っているマヨネーズに指をつっこみペロリ。

山本「もう少し酸味をつけた方が——」
セツナ「あ、こりゃどうも」
山本「しかし、村田始の父親は、何というか……スゴイですな。あんな顔ぶれの中なのに全然意に介していない」
セツナ「さすがは親子、ですかな?」

笑い合う二人。

○同・大広間
会議中の一同。

カズオ「えー、この半年の騒ぎについて、わかりやすいように書き出してみました」

模造紙状のモニターを広げる官房長官。
カズオ、端末を操作すると手書きの文字が大きく投影される。

モモエ「これに、間違いはありませんか?」

画像1

ザイグル星人の侵入 ← 為政者達の指示
サナドンによる侵略未遂 ← 不明
おやま襲撃 ← 宇宙連盟
宇宙開発センター襲撃 ← 宇宙連盟
マモリビト壊滅 ← 宇宙連盟
伊豆大島沖の戦い ← 不明

妙見「はい。この通りです」

声を荒げる壌。

壌「何故だ?! 何故地球を攻撃するのだ!」
妙見「攻撃ではありません。調査です」
壌「それはさっきも聞いた!お前達は調査と殺戮の区別もつかんのか!!」
妙見「殺戮ではありません。最も効率的な方法を用いたまでです。情報収集、そして上陸部隊の結成による現地調査——」
壌「ふざけるな!」
一同「……」

息をのむ人間側の人々。モモエと宇宙人達は弱り顔。そこへ不意に呑気な声のカズオ、手を挙げる。

カズオ「あ、よろしいですか?」
モモエ「どうぞ」
カズオ「ここ最近、頻繁に日本が襲われる、というのは何故なんですか?ここさえハッキリしていただくと、今回の交渉、あっさり終わると思うんですけど」
壌「そんな単純な問題ではない!」
カズオ「単純なんですよ。この人達にとっては」

さらっと答えるカズオ。壌、拍子抜けしてキョトン。

壌「?」
漠「どういうことです?」
カズオ「僕らみたいに、狭いところで政治だ何だとやってると、腹芸ばかり得意になる。この人達は天文単位ですからね。政治はかなり大雑把みたいです。これは一緒に飲んでみるとよくわかります」

思わず吹き出す宇宙人達。

ソパル星人「大雑把はヒドイなぁ」
妙見「しかし、真理をついています」

和らぐ雰囲気。苦笑いを浮かべる壌、自嘲気味につぶやく。

壌「こんなことなら……何故、とっとと話し合いをしなかったんだろう」
漠「タイミングですよ、壌さん。伊藤さんにしろ、村田さんにしろ、こういう人材が活躍できる時代になった。宇宙人が現れても冷静に対処できる心構えを人が持つことが出来るようになった——世界中の人達がこ
の交渉に注目しています」
官房長官「(壌に)これまで天網の民が被ってきた損害に対する補償は、国連並びに銀河連邦からさせていただきますので」

憮然とした顔の載。

載「損害とか補償とか……何か釈然としません」
十全「(優しく)そうだな」
モモエ「まぁ、それは今回の件が落ちついてからでいいでしょう。で、さっきの話の続きですが、あなた方がシングウと戦うのは何故なんですか?ザイグル星の方達みたいに伝説のチカラを手に入れる、なんてことを考えているのではないと思いますが……」
妙見「だから、調査です」
壌「それは、もういい」
妙見「果たして地球は、彼が眠る地として本当にふさわしい星なのか。彼をこのままにしておいて良いのかどうか——そのための調査です」
十全「彼?」
妙見「眠れる彼——シングウ本人です」

驚く当主達。厳しい表情のモモエ。顔を見合わせるコンコル、ハイン星人。

○御統中・正門前
坂道を上って『クマのパン屋』のバンがやって来る。

○同・廊下
走る生徒達。

生徒A「パンが来た!」
生徒B「クマのパン屋だ!」

○同・渡り廊下
定位置に店を広げているパン屋。
いつものようににぎわっている。
『本日半額!』ののぼりが立っている。

○同・廊下
大きな袋を抱えて歩く那由多と瞬。中には沢山の学食パン。

瞬「何も半額だからって、こんなに買い込まなくても……」
那由多「お裾分けすればいいでしょ」
瞬「はいはい」

○同・放送室
扉を開けて入ってくるハジメ。

ハジメ「失礼しまーす」
ひかる「おお、待っていたよ」

食事中だったひかる。机の上には光学レンズの付いたビデオカメラ。

ハジメ「おおッ」

思わず駆け寄るハジメ。

ひかる「大事に使ってね、一応お気に入りなんだから」
ハジメ「ええ、その辺は肝に銘じて」

弁当は三色そぼろにベーコンのアスパラ巻き。思わず目がいくハジメ。

ひかる「食べてみる?」

アスパラ巻きを一個差し出すひかる。

ハジメ「あ、どうも」
ひかる「しかし、個人参加では祭りクラブ、クラス参加では映画作り。大変だなぁ、君も……」

カメラを手に取るハジメ。構えてみたり、ファインダーをのぞいたり。

ハジメ「映画の方を言い出したのはクラスの太田って子で……ほら、この間、上映会やったじゃないですか。あれ見て『これだ!』って。みんなも『やろうやろう』なんて調子に乗っちゃったから——」
ひかる「君のツルむ連中は、ホントみんな面白いねぇ」
ハジメ「今日は、暗くてちょうどイイから夜明けの学校のシーンを撮ろうって事になりまして。一応クラス企画ですけど、飛び入りスタッフ大歓迎ですので」
ひかる「考えとくよ」
ハジメ「失礼しました!」

軽く会釈すると出ていくハジメ。微笑んで見送るひかる。

○天網市・南町
防波堤沿いの道を歩くジルトーシュ、磯崎、ウエンヌル。鼻歌交じりなジルトーシュに対し、後の二人は緊張気味。

ジルトーシュ「さすがにみんな、二つも宇宙船が来ちゃったんで面食らったのかな?」

家の中から見ている婦人に気が付いたジルトーシュ、愛想良く手を振る。あわてて窓を閉める婦人。

ジルトーシュ「あらら」
磯崎「銀河連邦の歴史は五万年。データベースを当たればすぐにわかる事もあれば、わからない事もあります」
ジルトーシュ「そうだねえ」

物陰から、窓の隙間から様子を見ている人々。三人は御輿坂に差しかかる。

磯崎「私はシングウのチカラというものは、エネルギー的なものだと思っていました」
ジルトーシュ「エネルギーだよ。我々が使うチカラと同じ——」
磯崎「シングウはエネルギーではない。エネルギーを用いる人間も含めてシングウ……」
ウエンヌル「!」
ジルトーシュ「誰から聞いた?」
磯崎「宇宙連盟と……政治的取引を……」
ジルトーシュ「〜〜」

口笛を吹くジルトーシュ。愕然とするウエンヌル。

ウエンヌル「それは、スパイ行為?!」
磯崎「……」
ジルトーシュ「味方の秘密は、敵が知るってヤツか。うんうん、なかなか正しい外交手段だね」
磯崎「私は……たとえ未開発な星であっても、この星は、存続すべきだと思います」
ジルトーシュ「有るはずの無かったシングウのチカラによって、歪んだ進化を遂げたとしてもかい?」
磯崎「しかし、彼らは生きています。日々を様々な思いの中で暮らしています。今は銀河連邦に加入できる以前のレベルであっても、それは犯してはいけない」
ジルトーシュ「例え、判定者であっても?」

静かにうなずく磯崎。

ジルトーシュ「……」

磯崎を見つめるジルトーシュ。ふざけた調子では無く、優しいまなざし。

磯崎「……」

思わず目を背ける磯崎。

ジルトーシュ「君は、この星が好きなんだね」
磯崎「……絶対の正義、絶対の真実。その名の下に、人の命のみならず、惑星さえも消し去ることのできる唯一無二の存在——判定者が誰なのか、それは銀河連邦でもごく一部の人間しか知らない——」

緊張している磯崎。穏やかなままのジルトーシュ。静かに両者を見つめているウエンヌル。

ジルトーシュ「しかし、それを君は突き止めた。あ……ひょっとして、君が取り引きしたのって彼かい?地球では、坊主頭の——」
磯崎「妙見彼方」
ジルトーシュ「口が軽いなぁ、アイツは」
磯崎「……来ているようですね、彼」

見上げる磯崎。宇宙連盟の宇宙船は静止したまま。

   *   *   *

(真守家・大広間)
今度は昼食中の一同。(メニューはシチューにサラダ)セツナ、鍋を持ってぐるりと回っている。

セツナ「はいはい、お代わりだったらもう少しだけ有りますからね、早い者勝ち!」
妙見「……」

静かに食べている妙見。

   *   *   *

ジルトーシュ「見届けてもらうために呼んだのさ。それは銀河連邦の連中にしても同じ事。これから起こることの証人になってもらう。この星は果たして存続するに値するものなのかどうか——?」

ウエンヌルの方を見てニッコリ笑うジルトーシュ。

ジルトーシュ「君も証人だ」
ウエンヌル「この上、まだ何か始まるのですか?」
ジルトーシュ「始まるんじゃないよ、始まっていたんだ。銀河連邦と宇宙連盟の戦いのさなか。一人の勇者が、姿を変えたその時から——」

磯崎の携帯が鳴る。あわてて取り出すと『地球圏外』の表示。

磯崎「はい、磯崎です……えっ?!」

呆然と聞いている磯崎。
それを見つめるジルトーシュとウエンヌル。おもむろにジルトーシュを見る磯崎、厳しい表情。

磯崎「地球から二万キロの位置に四つの知性体兵器が出現。地球に向かって秒速一〇キロの速度で移動中……サナドンです」

   *   *   *

(宇宙空間)
地球に向かって進む四つのサナドン。

   *   *   *

ウエンヌル「サナドンが四つ?!」
磯崎「以前、統原君が、火星軌道上で回収してきてくれたチップには、大昔の言語によるプログラミングがされていました」
ジルトーシュ「……」

穏やかな表情のままのジルトーシュ。

磯崎「貴方の、仕業ですね?」

道端の御幣が揺れ、鈴の音が聞こえる。

○真守家・大広間
騒然となる当主達。緊張する山本。

カズオ「何が起こったんです?」
妙見「敵が現れたんですよ」
カズオ「敵?」
壌「貴様!我々をだましたな!!」

載と商工会長達、妙見を取り囲む。構わずお茶を飲む妙見。

ソパル星人「お止めなさい。彼じゃない」
載「?」
壌「何だと?!」
モモエ「第三者がいるのですね?」
妙見「ええ」

ニッコリ笑う妙見。

妙見「遙か五万年前——銀河連邦との戦争が終わりを告げたとき。シングウをこの地に封じたときから、彼の使命は始まっていたのです」
壌「彼? 誰だ一体?」
官房長官「何だかスケールが大きい話だな」
カズオ「さすがに場違いかな、僕らは」

茶碗を置く妙見、ソパル星人を見据える。同様に妙見を見るソパル星人。

妙見「今、ここに休戦協定の付帯事項の発令を要求する!」
ソパル星人「そうだね。発令しよう」
十全「どういう事です?」
妙見「これから起こることに関して、宇宙連盟と銀河連邦は一切を判定者に委ねます」
山本「はんていしゃ?」

○同・廊下
鍋を持ったまま空を見上げるセツナ、いつになく真剣な表情。
セツナ「……最終段階か」

○御統中・生徒会室
駆け込んでくる京一と晴美。

京一「八葉!」

大机には八葉と瞬。

八葉「うん。あと一〇分程度で地球にやって来るそうだ」
京一「早すぎる!」
晴美「那由多ちゃんは?」
瞬「まだ来てないんだ」

○同・校庭
『帰ってきたこゆるぎ野郎』撮影中の二年C組。ジロウ達マモリビトは一様に緊張した顔。カメラを持ったハジメは怪訝な表情(トシオ達も同様に)。

ハジメ「どうした、ジロウ?」
ジロウ「敵が……攻めてくる」
ハジメ「敵?」

思わず振り返るハジメ。音声マイクを担いでいるムリョウも真面目な顔をしている。

ムリョウ「最後の試練だ」
ハジメ「試練?」

一人駆けてくる那由多、こわい顔。

ハジメ「守山さん?」
那由多「シングウ!」

校庭でシングウに変わる那由多。

ハジメ「守山さん……」

驚き立ちつくすハジメ達。
他の生徒達も窓から、廊下から驚いて見上げている。

シングウ「ウオオオオオオ……」

校庭から数メートルの高さで静止しているシングウ。我に返ると駆け寄るハジメ。

ハジメ「守山さん!」
那由多(声)「私、一人で跳んでみる」
ハジメ「跳ぶ?」
那由多(声)「空蝉は間に合わない。一人で宇宙に……」

窓から飛び降り、校庭に出る八葉達。

京一「待て!那由多!」
八葉「無茶は止めろ!」
那由多(声)「私、みんなを守る!大好きなみんなを!」

全身が光り出すシングウ。

ハジメ「守山さん!」
八葉「那由多!」
晴美「那由多ちゃん!」
京一「なゆたぁぁぁッ!」

弾けて消えるシングウ、花びらが舞う。

ハジメ「守山さん!」

騒然となる校庭。一人静かに見上げるムリョウ。顔が歪むハジメ。

NR「守山さん、守山さん、守山さん!」

○宇宙空間
接近する四体のサナドン。

         (第二四話・完)

☆二〇〇字詰七八枚換算

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読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)

ありがとうございます!
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アニメ監督です。こちらでは過去に発表した原稿やら何やらを載せていきたいと思います。

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佐藤竜雄の原作脚本監督作品『学園戦記ムリョウ』全26話の脚本です。オリジナルアニメの脚本はあまり見る機会がないということで自作をここに公開します。無料無期限ですのでお気軽に!

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