『わたしたちの、シンオク』

『モーレツ♡宇宙海賊』
ドラマ「わたしたちの、シンオク」(第一稿)
       (11/12/07)脚本・佐藤竜雄

登場人物
加藤茉莉香
遠藤マミ
チアキ・クリハラ


一同「わたしたちの、シンオク!」

明るく茉莉香とマミ。

茉莉香「こんにちは、加藤茉莉香です」
マミ「遠藤マミです!」

一人、不機嫌そうにチアキ。

チアキ「チアキ・クリハラです」
茉莉香「今日は、アニメ『モーレツ宇宙海賊』の舞台にもなっている、我が街、新奥浜市についてのご説明をしたいと思います」
マミ「たう星系第三惑星海明星。私達の住む新奥浜市はその赤道の近くにあります」
茉莉香「運河と石畳、そして街路樹の緑が特徴の、観光名所の多い街なんです」
マミ「まずは運河の跳ね上げ橋。荷物を運ぶ船が通りかかると橋が両側からぐーっと上がるんです。お、船が来たぞォ」

つまらなそうに汽笛の口まねのチアキ。

チアキ「ぽーっ、ぽっぽっぽっ…!」
マミ「チアキちゃん、それ船じゃない」
チアキ「え、じゃあどうすればいいのよ?」
マミ「フツーに警笛でいいよ。ポーって」
チアキ「どこが違うの?ぽーもポーも同じじゃない」
マミ「えー、違うよ。ポーッ」
茉莉香「おお、船が来た」
チアキ「ぽーっ」
茉莉香「おお、蒸気機関車」
チアキ「ぽっぽー!シュッシュッシュッシュッシュッシュッ…って止めんかいっ!」
茉莉香「いや、上手いなあって」
マミ「そうそう、上手い上手い」
チアキ「って言うか、この作品で蒸気機関車は出ないでしょ!」
茉莉香「そうそう。この世界では船も車もモーターで動きます」
マミ「充電式だよね。あ、でも茉莉香の家の車って違うよね。内燃機関、だっけ?」
茉莉香「そうなの。梨理香さんの趣味でね、揮発性の高いオイルが燃料のエンジンを載せたトラック…結構面倒なんだよね、メンテナンスが」
マミ「ミーサ先生もその内燃機関、の車に乗ってたよね。すっごい早いけどすっごいうるさい。ブロロロローーーッって」
茉莉香「ああ、あれは散々だったな…海賊ってああいう車が好みの人、多いのかなあ?」
チアキ「おそらく、日頃オートな操作に慣れているからマニュアルが恋しいんじゃない?それに運転している実感があるというか。あなたはああいうのは好きじゃないの?」
茉莉香「うーん、まだ免許無いからよく分からない。でも、自転車は好きだよ」
マミ「ああ、そうだよね。茉莉香、あの自転車、自分で作ったんだよね」
茉莉香「作ったって、大げさだよ。好きなパーツを選んで組み上げただけ。チアキちゃんは何かそういうの無いの?」
チアキ「『ちゃん』じゃない!」
マミ「まぁまぁ、それはそれとして、何か好きなものってないの?」
チアキ「(気を取り直して)…そうね、物作りはいいわね。心が落ち着くわ」
茉莉香「へえ、何作るの?模型とか?」
チアキ「……梅干し」
マミ「うわっ、渋い!」
チアキ「日々、落とし蓋を押し上げる梅の発酵具合を眺めていると……(キッパリと)ハマるわ!」
茉莉香「へえ〜、見かけによらず、やるねえチアキちゃん。いいお嫁さんになれるね」
チアキ「(照れて)お、お嫁さん?!」
マミ「どうしたの?顔赤いよ?」

何故かうろたえながらチアキ。

チアキ「し、新奥浜市は海に宇宙港があるから、色んな農産物が集まってくるわ!…梅干しに最適な梅の果実だとか、お米とか麦とか…あなた達がアルバイトをしているランプ館が出しているお茶だって、そうよね」
茉莉香「そうそう。私達の新奥浜市はとても広い面積の耕作地に囲まれています。基本、海明星って他の星に農作物を輸出しているくらい、沢山の野菜や果物を作っているんです」
チアキ「星系連合が、この星に植民地を作ったのも、この豊かな自然があったから。惑星改造をしないでこんなに良い環境って、この辺りだと、あとはセレニティの青の星くらいじゃないかしら」
茉莉香「ああ、グリューエル達の星だね。キレイだったなあ」
マミ「さて、それでは街の様子を見てみましょう。あ、また船が来た」
チアキ「ぽーっ」
マミ「お、今度はちゃんと船だね。よぉし!じゃあ、向こうからは車が来た!」
チアキ「ういーーん」
茉莉香「おおーーっ、モーターの音。車だ車だ!じゃあ、自転車は?」
チアキ「チリンチリン、シャーーーッ」
茉莉香「私達がアルバイトしている喫茶店・ランプ館は街の中程にあります!」
チアキ「スルーかよっ!」
マミ「いらっしゃいませ〜。ご注文は何になさいますか?」
チアキ「(一転、紳士の口調で)ふむ、お勧めは何かな?」
茉莉香「(呟くように)ノリいいなあ…」
マミ「今日のお勧めはこの辺りで名産のジャスミンティーです。水出しコーヒーはあいにく切れておりまして…」
チアキ「チョコレートパフェをもらおうか」
マミ「チョコパフェ一つ、入りまーす!」
チアキ「モグモグモグ…」
茉莉香「早っ」

突如、怒り出すチアキ。

チアキ「……むぅぅーー、何だこのパフェは!おかみを呼べ!おかみを!」

女将な口調で茉莉香。

茉莉香「はいはい、何でございましょ?」
チアキ「貴様がおかみか!何だこのパフェは?バナナがいつもよりも少ないじゃないか!これでよくランプ館のパフェだと言えるな!恥を知れ、恥を!」
茉莉香「あいすみません。…マミさん、パフェは確かにキチンと作ったのですか?」
マミ「はい、確かにいつもの通り、作ってお出ししました。間違いありません」
チアキ「何を言っている!わしは確かに数えて食べたのだ!このチョコパフェはバナナが少ない!」
茉莉香「お客様、このパフェは店の者全てに徹底させて作らせております。あの、いつもは…とおっしゃいましたが──」
チアキ「ああ。いつもこうしてカウンターに座ると、髪がピンクの、元気の良い店員さんが持って来てくれる…あのパフェはバナナがいっぱい入っていて…美味かったなぁ」
マミ「ああっ!なるほど!」
チアキ「ん?何だ?」
茉莉香「お客様…それはきっと、ウチの店員のお客様へのメッセージです」
チアキ「メッセージ?」
茉莉香「(いつもの口調で)チアキちゃん、大好きだよって私からのメッセージ♪」

一転、素に戻って照れまくるチアキ。

チアキ「ぬあっ?な、何言ってるのよ、あんたッ?!」

いたって屈託の無い茉莉香。

茉莉香「え、ちょっとサービスしてあげてただけだったんだけどなあ。バナナ嫌い?」
チアキ「バナナはナババ!じゃなくて、あー、ビックリした。いけない、私のイメージが…すーっ、はーっ(深呼吸)…」
マミ「最初からこんな感じじゃない?」
チアキ「違うっ!!」
茉莉香「チアキちゃんは楽しいなあ。ランプ館はこんな感じで楽しい雰囲気のお店です。皆さん、新奥浜市にいらした時には是非ともランプ館に!」

後ろでブツブツとチアキ。

チアキ「すーっ、はーっ、平常心平常心…」
マミ「さあ、今度は私達の通う、白凰女学院です!街から少し離れた、小高い丘の上にまるでお城のようにそびえてます」
茉莉香「正面から上る階段が長くて長くて。まぁその横にエスカレーターもあるんですけどね。基本はみんなでおしゃべりしながらえっちらおっちら上ります」
チアキ「ここの学校の生徒はみんな足腰が丈夫ね。そこは感心。体力は無いよりあった方がいいから」
茉莉香「うん、弁天丸に乗るようになってそれは実感した。船長ってどっかり椅子に座っているだけかと思ったら、結構動き回るんだもん。ミーサが厳しいのよ。『船長、駆け足!』って」
チアキ「それはあなたが要領が悪いからなんじゃない?」
茉莉香「えへへ、まあね」
チアキ「ま、走って済むんだったら今はいいんじゃない?ミーサさんもそのつもりだからビシビシ言ってくれるんだと思うし」
茉莉香「うん、そうだね」
マミ「さあさあ、海賊同士のお話はそこまでにして、白凰女学院について!」
茉莉香「白凰女学院は中等部と高等部に別れていて、グリューエルやグリュンヒルデみたいに遠くから留学してきた人のための寄宿舎もあります」
マミ「ベランダから川が見えるのよねー。う〜ん、良い眺め」
茉莉香「おりょりょ、マミ、何でそんな事知ってるの?」
マミ「うん、グリューエルに招待してもらったんだよ。いつものパフェのお礼です、って」
茉莉香「ああ、そうか。グリューエル、最近よく来てるみたいだね、ランプ館」
マミ「妹のヒルデちゃんもね、可愛いね。ちょっと気が強いけど、そこがまた愛で(めで)ポイントというか」
茉莉香「マミに掛かっちゃセレニティの皇女も形無しか。えー、白凰女学院の特徴としてはとにかく全てが大きい、広い!」
マミ「大きい校舎がひいふうみぃ…あれ、いくつあったっけ?併設されている小学校も入れると10棟以上あるよね。あと部室棟もひいふぅ…」
茉莉香「部室と言えば、私とチアキちゃんはヨット部に入っています!」
チアキ「衛星軌道から降下して風に乗る、一人乗りディンギーがメインのヨット部の筈だけど…基本はオデット二世を乗り回しているだけね」
茉莉香「オデット二世の練習航海だって立派な部活動だよ!」
チアキ「まあね。でも、あなた達、ディンギーの大会に出ようとかそういう気分は一つも無いのね」
茉莉香「え、だって入った時からそんな感じだったしなあ。何でなんだろ?」
チアキ「…(ため息)ホント、知らないのね。いいわ知らないなら知らないで。いずれわかると思うから」
茉莉香「?」
チアキ「この学園の謎は、どうしてオリジナルセブン…かつての海賊船白鳥号を練習船として使っているのか?何ゆえヨット部のような異能の人物ばかりを揃えた部活動を容認しているのか…ちょっと考えただけで謎がゾロゾロ出てくるというところね」
マミ「あ〜〜、ひょっとしたら!」
茉莉香「ん?なあに、マミ?」
マミ「実はこの白凰女学院の地下にはかつての秘密兵器が隠されていて、オデット二世がそれと合体すると超巨大ロボットになって新奥浜市の平和を守るの!」
茉莉香「あはは…」
チアキ「この作品の原作者と監督だとやりかねないわね。(ハッとなり)いや、こんな台本書いた段階でちょっとやそっとは考えているのかも?」
マミ「うわー、それなら私、コスチュームデザインやるー!徹夜で作っちゃうよ!(口調変わって)お客さん、今ならアトリエ・マミ、5%お安くしときますよ」
茉莉香「はいはい、パート2のネタ出しはそこまでにして、いかがでしたか?私達のシンオク!新奥浜市の紹介でした!」
チアキ「何か殆ど紹介になってないような気がするけど」
茉莉香「え、そうかな?」
マミ「ううん、よくわかったよ。私達って結構いいところに住んでたんだな〜って」
茉莉香「ありがとう、マミ」
マミ「それにぃ、チアキちゃんがすっごくノリのいい、愉快な人だっていうのもあらためてわかったし」
チアキ「何ですって?!私のどこが愉快な人(だって?!)」
マミ「あ、船が来た」
チアキ「(思わず)ポッポー!…ってそりゃ汽車やがな!(ハッとなり)うわああああ、しまった、イメージが…私のイメージがあああああああああ〜〜〜〜〜〜ッ!」

恥ずかしさの極致に達して走り去るチアキ。ドップラー効果も交え。

茉莉香「チアキちゃーーーん!」
マミ「カムバーーーック!……あ〜あ、行っちゃった」
茉莉香「去り際のドップラー効果、よかったよね。私も頑張らなきゃ」
マミ「ああやって茉莉香に芸の道を教えてくれているのかもしれないね」
茉莉香「うん…チアキちゃん、ありがとう。私、立派な芸人になるよ」

不意にチアキ突っ込む

チアキ「船長じゃないんかいっ!」
マミ「うわ、早っ」
茉莉香「走り去っていった筈なのに、すごい速さ!」
チアキ「宇宙海賊だけに、光の速さで」
一同「どうも、ありがとうございました〜〜〜!」

最後にまた唱和で締め。

一同「わたしたちの、シンオク!」

(おわり)

TVシリーズ「モーレツ宇宙海賊」Blu-ray BOX【LIMITED EDITION】(品番:KIXA-90542)に収録
(c)2011 笹本祐一/朝日新聞出版・モーレツ宇宙海賊製作委員会

読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)