第20話『せっかちな、呑気』

学園戦記ムリョウ

第二〇話『せっかちな、呑気』(第一稿)

脚本・佐藤竜雄

登場人物
統原無量(スバル・ムリョウ)
村田 始(ムラタ・ハジメ)※ナレーション
守山那由多(モリヤマ・ナユタ)
統原瀬津名(スバル・セツナ)

津守八葉(ツモリ・ハチヨウ)
守機 瞬(モリハタ・シュン)
峯尾晴美(ミネオ・ハルミ)

成田次郎(ナリタ・ジロウ)
川森 篤(カワモリ・アツシ)
三上利夫(ミカミ・トシオ)

村田双葉(ムラタ・フタバ)
森村由香梨(モリムラ・ユカリ)
中島 碧(ナカジマ・ミドリ)

真守百恵(サネモリ・モモエ)
守山 載(モリヤマ・サイ)
山本忠一(ヤマモト・タダカズ)

永野 信(ナガノ・マコト)
矢沢友道(ヤザワ・トモミチ)

柔道部長
運動部長達
中学生達
小学生達

○真守家・前庭
夜。いつも通りの静けさ。
庭には虫の声――

○ムリョウの離れ・内
布団で眠るムリョウ。

NR「学校を休んだ筈のムリョウ君が、何故か津守先輩に背負われて学校に――」

   *   *   *

(回想)
ムリョウを背負う八葉、晴美を背負う那由多。京一は瞬に肩を借りて歩いている。八葉に言われて慌てて山本を探して走り回るハジメ。(一八話参照)

   *   *   *

鴨居に下げられたボロボロの学生服。
傍らにはハジメと那由多。

那由多「大体、肝心な時に居ないんだから……何が『僕は、君達を守るためにここに来た』 よ! ホントにもう……」
心配しながら憎まれ口の那由多、ハジメも心配そうにムリョウを見つめる。
引き戸が開くと山本とモモエ。

モモエ「どうです、ムリョウ君の具合は?」
那由多「どうもこうも、ぐっすりです!」
モモエ「ほほほ、そう」
那由多「そう、じゃありませんよ!」
山本「まあまあ、怒るな」
那由多「だって大変だったんですよ! 晴美ちゃんと京一! もう少しでやられちゃったかもしれないのに……この唐変木は終わった頃にノコノコ現れてグースカですよ!」
モモエ「この子も戦ってきたのよ」
那由多「え?」

ムリョウを挟み、ちょうどハジメ達と向かい合わせに座るモモエ達。

モモエ「そう。この子は、あなた達タタカイビトを守るために戦っていたの。遠い遠い宇宙の彼方……」
ハジメ「宇宙の?」
那由多「彼方?」

思わずムリョウの顔を見返す二人。
安らかな寝顔のムリョウ――

○オープニング

○ムリョウの離れ・外
夜。虫の声が密やかに。

(サブタイトル『せっかちな、呑気』)

○ムリョウの離れ・内
ムリョウを囲むハジメ達。
相変わらず安らかな寝顔なムリョウ。

山本「磯崎先生によると、冥王星軌道付近で爆発を確認。その時、銀河連邦の宇宙船が付近を撮影したのがこれだ」

山本、懐から携帯(磯崎と同タイプ)を取り出すと画像を投影。
宇宙空間に光球。

ハジメ「何ですかこれ?」
山本「これがすごいんだ」

山本、携帯を操作。どんどん画像が拡大されていく。

山本「ずいぶん遠くから撮影したらしいんだけど、ずいぶん近くまでズームアップできるんだとさ。すごいやなぁ」
ハジメ「ずいぶんずいぶんじゃよくわからないんですけど……」

思わず咳払いする山本、気まずく。

山本「ま、とにかく爆発してる宇宙船と――」
那由多「ああっ!」
ハジメ「?」

爆発する宇宙船をバックに飛んでいるムリョウが見える。

ハジメ「え?こ、これ、ムリョウ君?」
山本「そうだ」
那由多「これ、どこでしたっけ、場所?」
山本「冥王星軌道……」
モモエ「地球から約四四・六天文単位の距離だそうよ」
ハジメ「はあ」
那由多「何でムリョウ……統原無量がこんな処にいるんです?」
モモエ「晴美ちゃんと戦った宇宙人は、どうやらその爆発している宇宙船から転送されてきたらしいの」
那由多「え」

   *   *   *

(回想)
晴美、正拳一閃。
京一をすり抜け、シャンクゥー星人の体を打ち抜く拳。紅い花が舞う。(一九話参照)

   *   *   *

山本「地球に近づくためにはシングウの空蝉(うつせみ)の秘儀が邪魔だからな。京一を殺しに地道に攻めてきたってわけだ」
那由多「じゃ、ムリョウ……君は――」
モモエ「先手を打って宇宙船を叩いてくれたみたいね。本人が寝てるから確認のしようがないんだけど」
那由多「……」

じっとムリョウの顔を見る那由多。
ハジメはただただ呆気にとられて一同のやり取りを聞いている。

NR「しみじみとした雰囲気ながら、ずいぶんスケールの大きな話……」

ムリョウの寝顔をあらためて見るハジメ、ため息。

○国道
帰り道のハジメと那由多。
うつむき加減に歩く那由多。
ハジメ、那由多をチラッと見る。

ハジメ「……ひょっとして、落ち込んでる?」
那由多「え?」
ハジメ「また助けられた、とか何とか。さっきは『肝心なときに居ない』、って文句を言ってはみたけど、いざ助けてもらうと……ちょっと癪とか?」
那由多「え?!」

うろたえ気味の那由多。

ハジメ「ははは、当たり?」
那由多「違うわよ!まぁ、確かにそれもあるけど……」
ハジメ「え?」
那由多「私達ってみんなに守られてる。大人の人達、晴美ちゃん、ムリョウ君……昔のしきたりは私達の代でお終いにするんだって偉そうなこと言っても、結局は、そのしきたりに守られてるんだから。そこら辺を考えたら情けないやら何やらで色々……」
ハジメ「……」
那由多「ああ、心配しないでね。いつもの事でしょ?落ち込むだけ落ち込んだら、明日は元気!」
ハジメ「ははは」

ポーズを取る那由多に笑うハジメ。那由多も微笑む。

那由多「村田君、ありがとう」
ハジメ「え?」
那由多「……何となく言ってみただけ」

スタスタと先を行く那由多。

ハジメ「おいおい、ちょっと待ってよ」
夜空には星が瞬く。

○ムリョウの離れ・内
静かに眠るムリョウ。

○天網市・通学路
翌朝。切り通しの手前でハジメに声を掛けるムリョウ。

ムリョウ「おはよう!」
ハジメ「……」

呆気にとられるハジメ。

ハジメ「ム、ムリョウ君、大丈夫なの?!」
ムリョウ「え? ああ。よく寝たおかげで今朝はすっきりだよ」
ハジメ「ふーん……」
ムリョウ「あれ?」

ムリョウ、ハジメの肩越しに後ろを見る。苦笑いのハジメも振り向いて。

ハジメ「おーい、出てこいよ!」
フタバ「!!!」

物陰に隠れているフタバ、更に身を硬くする。背中には大きなカバン。

ムリョウ「どうしたの?」
ハジメ「いや、ちょっと昨日ね……」
フタバ「……」

そーっとムリョウを覗くフタバ。

ムリョウ「?」
フタバ「う、うわ~~ん!」

フタバ、ムリョウの前に駆け寄ると必死に訴える。

フタバ「私じゃない!私のせいじゃないですよね?」
ムリョウ「え?」
ハジメ「いやあ、昨日の学校の帰りに君のこと、ジロウから聞いたらしいんだよ……」

   *   *   *

(回想)
学校からの帰り道。ジロウ、フタバに身振り手振りで話している。

フタバ「えーっ!ムリョウさんが倒れた?!」
ジロウ「うん、生徒会長に背負われちゃってなぁ、そりゃあ哀れなモンだったよ」
フタバ「何で?何でなんですか?」
ジロウ「実は……いや、やめとこう」
フタバ「何です、それ?!」

意味ありげに深刻な表情のジロウ。

ジロウ「原因はその……」
フタバ「じらさないで言って下さい!」

沈痛な面持ちのジロウ。

ジロウ「原因はフタバちゃんの.フタバちゃんの弁当だ!」
フタバ「ええ~~ッ?!」

大ショックのフタバ。

   *   *   *

ムリョウに詰め寄るフタバ。

フタバ「ウソ、ウソですよね!私がお弁当を作ったせいでひょっとしてぞっとして食中毒とか栄養失調とか心労が重なったとか色々あって、そんなこんなでムリョウさんが倒れたなんて……そんな恐ろしいことないですよね?!」
ムリョウ「い、いやあ……」

思わず圧倒されるムリョウ。

ハジメ「おい、ムリョウ君が困ってるぞ」

ハッとするフタバ。

フタバ「やっぱり.私ってムリョウさんにとっては困っちゃう人なんだ……」

フタバ、わざとらしく背中を向けるとガックリのポーズ。

ハジメ「お前なぁ……」
ムリョウ「違うよ、フタバちゃん」
フタバ「!!!」

満面の笑みで喜ぶフタバ。

フタバ「そうですよね、そんな事ないですよね!あぁよかった~♪ と、いうわけで!」
ムリョウ「?」

○御統中・二年C組
昼休み。いつものメンバーでトシオの席に集まって食事中。

ムリョウ「……」

弁当を凝視しているムリョウ。

ジロウ「ありゃあ……」
ハジメ「ごめんね、ムリョウ君」
ムリョウ「いやあ……」

以前よりはるかにパワーアップしているフタバ特製弁当。大きな弁当箱に肉と魚と卵焼きが押し合いへし合い入っている。温野菜も山盛りに。

アツシ「一体何でこうなっちゃったの?」
ハジメ「……ジロウのせいだぞ」
ジロウ「俺の?」
ハジメ「お前があいつの弁当にケチつけたせいで余計にファイト燃やして、これだよ」
アツシ「あれ、ハッちゃんの弁当は?」
ハジメ「ムリョウ君ので力尽きたみたい」

ふりかけご飯なハジメの弁当。

ジロウ「あらら。いやあ~、軽いジョークだったんだけどねェ」

そこへ運動部長達やって来る。

柔道部長「ムリョウ君!!」
ハジメ「あっ!」
ムリョウ「やあ、久しぶりです」

駆け寄る部長達。皆、風呂敷を背負ったり、紙袋を持ったり。

柔道部長「大変だったね、ムリョウ君!」
ムリョウ「ええ、まぁ」
柔道部長「病気のお爺さんに代わって生活費稼ぎ……ついに学校まで休んでアルバイトしたあげくにぶっ倒れ.何て壮絶なんだ!」
他の部長達「壮絶だーッ!!」
ムリョウ「え?」
ハジメ「一体誰からそんな話を……」
柔道部長「守機瞬だ!さぁ、みんなムリョウ君に差し入れを送ろう!!」
他の部長達「おーっ!!」

差し出される食料の山。

ハジメ「え?え?え?」

圧倒されるハジメ達。

○同・生徒会室
八葉と瞬が食事中。

瞬「いやあ~、学校はムリョウ君の噂で持ち切りですねえ。スゴイなぁ」
八葉「諸説紛々……お前の仕業か?」
瞬「え?軽いジョークだったんだけどねェ」

○同・男子トイレ
連れション中のトシオとハジメ。

トシオ「で、さあ」
ハジメ「え?」
トシオ「実際のトコはどうなの?」
ハジメ「フタバのこと?」
トシオ「違う違う。ムリョウ君のことだよ」

   *   *   *

手を洗う二人。

トシオ「朝の時間さぁ……あの詮索好きのジロウがまるで興味ないってポーズ取るじゃない。意外だったよね」
ハジメ「はあ」

○同・二年C組(回想)
朝の予鈴前、ムリョウの周りに集まるクラスメート達。その輪の中で、妙に訳知り顔で語るジロウ。

ジロウ「まぁ、いいじゃね~か。統原にゃあ統原の事情があるんだ~」

○同・外
トシオとハジメ、体育館脇で立ち話。

トシオ「ジロウといい、さっきの守機のウソといい、口裏を合わせてるというか、済し崩しというか……」
ハジメ「済し崩し?」
トシオ「昨日の事件をウヤムヤにしてしまうための済し崩し」
ハジメ「……」
トシオ「ハッちゃんも引っ越し組だからわかるだろ?時々、妙にみんな口裏合わせてるような感じがしないかい?」
ハジメ「うーん、そうだなぁ……」

通り過ぎる生徒、チラと二人を見る。

トシオ「ジロウもそう、守機も、生徒会の連中もそう。ヤマチュウだってそうだな……ご先祖様の昔からこの街に住んでる。この街には、きっと僕らの知らないもう一つのルールがあるのかもしれないね」
ハジメ「……」

驚いてトシオを見つめるハジメ。

トシオ「ひょっとしてハッちゃんは、その辺のカラクリを知ってるんじゃないの?」
ハジメ「ええっ?」
トシオ「ははは、ウソウソ」

立ち上がるトシオ、微笑む。

ハジメ「ま、その辺の興味抜きにしても面白いよ。祭りクラブというか、ハッちゃんというか、ムリョウ君というか……じゃ、文化祭の企画書はHRまでには作っとくから」
ハジメ「あ、ああ……」

戸惑いながらトシオを見送るハジメ。

NR「いきなりの爆弾発言……トシオの疑問はもっともだ。僕だってこの街に越してきた時は似たようなことを考えたけど、いつの間にか慣れてしまった。この街はいい街だから――」

立ち上がるハジメ、歩き出す。

NR「だけど、もう一つのルールが銀河連邦なるものの取り決めだと聞いたら、トシオは何と言うだろう?」

校舎の上に腰掛けているセツナ、ハジメを頼もしそうに見つめている。

セツナ「フフ……」

○同・二年C組
ムリョウの机を呆然と見ているジロウとアツシ。

アツシ「どうするの、これ?」
ジロウ「さあ……」

机の上には山積みになった部長達の差し入れの数々。米の袋から焼きそばパンまで種種雑多。

○同・屋上(三本柱)
昼寝をしているムリョウ。

○アイキャッチ

○天網市・上空
青空な朝。

○同・天網駅前
瞬「おーい、こっちこっち!」

手を振って迎える瞬。後ろには八葉にムリョウにトシオがいる。

ハジメ「おまたせーっ!」

やって来るハジメとアツシとジロウ、背中には出し物の小道具を沢山背負っている。

○同・小学校通り
小学校へ向かって歩く一同。

アツシ「ジロウの奴、家に呼びに行ったらまだ寝てたんだよね」
ジロウ「だからあやまってるだろォ」
アツシ「おまけに二度寝するし」

軽口を叩きながら歩くジロウ達。
その後ろを瞬とハジメとムリョウが続き、トシオは黙々と、八葉はニコニコと最後尾を歩く。

NR「一週間後、僕達祭りクラブは小学校の児童会からの招待を受けた形で、『こゆるぎ祭』に参加した。僕らの他には演劇部や軽音楽部、合唱部……模範演技というか模範出し物というか――」

○御統小学・外
正門には『こゆるぎ祭』と書かれたゲートが立っている。グラウンドではフリーマーケット。やって来たハジメ達に駆け寄ってくるミドリとユカリ。

ミドリ・ユカリ「こんにちわーっ!」
一同「こんにちわ!」
ミドリ「中学のお兄さんお姉さん、今日は私達の催し物にいらして下さいまして、本当にありがとうございます」
ユカリ「ささやかながら控え室がございますのでご案内いたします。お足元に、十分注意して後にお続き下さい」

一気にまくし立てる二人、言い終わるなりほっと一息。

ミドリ・ユカリ「ふぅぅ――っ」
ハジメ「おいおい、お客さんの前でため息はないだろう?」
一同「(笑)」
ユカリ「へへへ」
ミドリ「すみません、結構緊張しちゃって」

二人の胸には『来客係』のプレート。

ムリョウ「フタバちゃんは何やってるの?」
ハジメ「え?ああ、あいつは――」

○同・中庭
『プレス』のプレートを付けた小学生達を集めて講座を開いているひかる。

ひかる「取材の下調べは確実に行っておくこと! 特に今回はあなた達の学校で行っているイベントなんだから、何時何処でどんな出し物があるのかは必ず覚えておくか、これだけは! という出し物を絶対チェックしておくこと!」
生徒達「はーい!」

中でも一番元気のいい声はフタバ。熱心にメモを取っている。

フタバ「絶対チェック!必ずチェック!」

○同・渡り廊下
そんな様子を見ているハジメ達。

ハジメ「へえ……」
アツシ「稲垣先輩、何やってるんですか?」
八葉「ああ、何でも技術指導だそうだよ」
瞬「題して、『ひかるちゃんの燃えろ!記者魂』ッ! ひかるさんにフタバちゃん……火に油って感じですねえ」
ハジメ「ははは」
ミドリ「皆さーん、こちらでーす」

ミドリに促されて先を行く一同。

○同・控え教室
軽音楽部、リハーサル中。

永野「♪ぼくの彼女は一万トン、切ない君は僕には重い~」
矢沢「♪オーケーベイベ、カレーが旨い~」

ハジメ達は法被姿で打ち合わせ。

ハジメ「進行の方はトシオの指示に従って……上映が始まったらスクリーンの前には出ないようにお願いします」
ジロウ・アツシ・八葉「はい!」
ジロウ「しかし、平日に学校行かないでステージ出演とはいい気分だねえ。今頃中学では授業中か。(クールぶって)ふっ、ご苦労さんだな……」
ハジメ「その分、日曜に補修があるけどね」
ジロウ「うそっ?!」
トシオ「こないだヤマチュウが言ってたぞ」
ジロウ「あ、そうだっけ?」

そこへ王子様の格好をした瞬が教室に入ってくる。金髪のカツラに化粧をしている。男装の美少女という感じで可愛らしい。

瞬「あー、疲れたァ」
八葉「お疲れさん」
ハジメ「?」

ハジメとジロウとアツシは、瞬が誰なのかわからずキョトンとしている。
構わずハジメの隣に座り込む瞬。

瞬「(一息ついて)ふう.祭りクラブ、次の次でしょ。いよいよですね」
ハジメ「え、えーと、どなたでしたっけ?」
瞬「いやだなぁ、僕ですよ。守機瞬」
ハジメ・ジロウ・アツシ「え――ッ!」
八葉「あれ?君達は瞬の芝居を見たことがなかったのか」
ハジメ「ええ。まぁ……」

ドギマギしながら瞬を見るハジメ。ニコニコと一同を見る瞬。

○御統中・大ホール(回想)
去年の文化祭。
演劇部の演目は『飛ぶ教室』。
主人公マルチンを熱演する瞬。

   *   *   *

上級生と渡り合う勇敢なマルチン

   *   *   *

正義先生に帰省の旅費をもらって感激するマルチン。そして両親との再会

   *   *   *

感激して見ている観客。
もらい泣きしている女生徒もいる。

NR「生徒会でおなじみの守機君は、演劇部員だ。去年の文化祭では『飛ぶ教室』のマルチン・ターラーを演じて大好評だったらしい。残念ながら、僕は見ることが出来なかったので、どう好評だったのか知らなかった。しかし、これなら、確かに好評だったに違いない――」

○御統小・控え室
微笑んでハジメ達を見ている瞬。対してドギマギしているハジメ達。

ハジメ・ジロウ・アツシ「はぁ……」
瞬「やだ、恥ずかしい!」

わざとらしく身をよじる瞬。

アツシ「ハァ……」

思わずポワーンとするアツシ。

ジロウ「バカか、お前は!」
瞬「どうです、結構似合うでしょ?」
ムリョウ「うん、可愛いよ」
瞬「へへ、おかげさまで芝居も大好評! あ~ホッとしたァ」

カツラを取る瞬。飛び出る地毛。

瞬「へへへ」

微笑む瞬。思わずハジメも微笑む。

ハジメ「フフ、文化祭の芝居、見に行かないといけないね」
ひかる「はい皆さん、注目~」

声の方を向くと、シャッター音。
廊下よりフタバを始めとした小学生達、ひかるの指導の元に一斉にカメラ撮影。

フタバ「に~やけにやけ~」
ハジメ「こらっ!」
ひかる「(フタバ達に)いいですか?シャッターチャンスというのはごろごろ転がっているというものではありません。チャンスに感謝、被写体に感謝!撮影した相手には必ず感謝いたしましょう!」
フタバ「ありがとうございました!」
小学生達「ありがとうございました~!」

ゾロゾロと立ち去る小学生達。室内の他の生徒達は大爆笑でこれを見送る。

フタバ「じゃあね~♪」
ハジメ「こらっ!」

ひかる一人残るって、部屋の中をキョロキョロと見回す。

ひかる「ムフフ、どうだね祭りクラブ、準備の方はバッチリかね?」
ハジメ「ええ、まぁ」
ひかる「おー、自信だねぇ」
ハジメ「僕らは、あくまで研究発表ですから気が楽ですよ。守機君みたいに演技するわけじゃないから」
ひかる「フツーはそれが出来なくて苦労するんだよ。君はやっぱり面白いね」

微笑むとカメラを構えるひかる。

ひかる「さぁ記念撮影! みんな集合!」

祭りクラブを中心に、瞬やその辺にいた連中も集まって集合写真をパチリ。

○点景
来客案内に励むユカリとミドリ。
十全と載を案内している。

小学生の出し物に加えて、中学生の模範企画の数々をダイジェスト。
合唱部や演劇部、音響の技術指導しているひかる、校舎内で茶道教室をしている茶道部の女子――

NR「小学生の行事に中学生が飛び入り参加……誰が思いついたか知らないけれど、年上のお兄さんお姉さんの見事な活動ぶり、或いはバカッぷりを間近で見るのは、イイ考えだと思う。自分の未来を考える、というのはちょっと大げさだけど、少なくとも自分が中学生になった時の参考にはなるかと」

軽音楽部のミニコンサート。永野と矢沢のコンビがフォークソングを歌う。

僕らの未来、僕らの人生
上を見すぎてひっくり返り
下を見ていてぶつかって
だからだからこれからは
前を向いて歩こう
はるかな地平、それは空

あたかもコミックバンドのようなパフォーマンス。メチャクチャな歌だが、それなりにウケている場内。

NR「尊敬か、はてまたは幻滅か? ま、それはともかく、我ら祭りクラブとしては――」

○同・体育館裏
檄を飛ばすジロウ。
ジロウ「出る以上は、ウケを取る!」
一同「おーっ!」
トシオ「ってお前が仕切るなよ」
ジロウ「へへへ、ヤボなことは言いっこナッシング! やるよ、俺は!」

ひかるが呼びに来る。

ひかる「お~い、そろそろだよ」
八葉「ほい。じゃあ、村田君」
ハジメ「行きましょう!」

○御統中・外
終業のチャイムが鳴る。

○同・廊下
教室を飛び出す那由多、早歩き。

那由多「まだ間に合う、まだ!」
晴美「那由多ちゃん」

後ろから呼びかける晴美。手足に包帯を巻いている。立ち止まる那由多、驚きつつもその場足踏み。

那由多「晴美ちゃん?! どうして? 今日はお休みじゃなかったの?」
晴美「もう大丈夫.午後から来たの。でね、那由多ちゃん……」
那由多「そうだ、晴美ちゃんも一緒に行かない? 小学校で今頃、八葉さん達がバカな出し物やってる頃なの!」

苦笑いする晴美。

晴美「うん、いいね。でも……」

雰囲気察して怪訝な那由多。

那由多「どうしたの?」
晴美「一緒に来て……来てほしいの」

○同・体育館
生徒「それでは、続いては御統中学校祭りクラブです!」

舞台は真っ暗。
スポットライト。上手にハジメ登場。
客席より拍手。前列にはフタバやユカリにミドリ、後列には十全や載、商工会長や世話役がいる。
ペコリとお辞儀のハジメ。

ハジメ「えー、皆さんこんにちは。僕達はご紹介頂いたように、『祭りクラブ』といいます。何をやっているクラブなのか、といいますと、読んで字の通り、お祭りをするクラブです」

小学生達から笑い起きる。

ハジメ「僕は四年前にこの街にやってきました。以前住んでいたところではお祭りというものはやっていませんでした。初めて見た御神輿は、それは何というか楽しそうというか、季節は秋も暮れる頃だというのに熱気に溢れていました」

   *   *   *

舞台袖で指示出しするトシオ。

トシオ「ビデオOK、御輿続いて」
ひかる「ほいっと」
パソコンにコマンド入力するひかる。
ジロウ「いよ、わっしょい!」

ジロウとアツシとムリョウ、下手よりミニ御輿を担いで登場。わき返る場内。

ジロウ・アツシ・ムリョウ「わっしょいわっしょい!」

早速声援を飛ばすフタバ。

フタバ「あーっ、ムリョウさーん!」

すかさずカメラのシャッターを切る。

フタバ「ムリョウさーん!」

そんなフタバを見て呆気にとられるユカリ達。

ユカリ「フタバちゃん……」
ミドリ「一人大騒ぎだね……」

   *   *   *

セツナ「わっしょいわっしょい♪」

出入り口付近に立っていたセツナ、小声で合いの手。舞台のムリョウ、セツナと目が合う。

ムリョウ「……」
セツナ「……」

アイコンタクト。ほんの一瞬。

セツナ「わっしょいわっしょい……」

うなずくと立ち去るセツナ。周囲は舞台に夢中で、気に留める者はいない。

   *   *   *

ジロウ・アツシ・ムリョウ「わっしょいわっしょい!」

ひとしきり騒いでから再び下手へと消えていくミニ御輿。

   *   *   *

再びハジメの語り。

ハジメ「大昔は天網市を挙げて行われていたという、この秋のお祭りですが.僕が見たときは商店街で行われていました。おそらく皆さんの中には、あれは商店街ののイベントだと思っている人もいるんじゃないでしょうか?僕は、ついこの間までそう思っていました」

スポットライト。中央に八葉登場。

八葉「セイサーウントコヨーイトヨイトォ、セイサーウントコヨーイトヨイトォ――」

法被姿で歌いながら前に歩み寄る。

生徒A「八葉さん!」
生徒達「八葉さーん!」

低学年らしき可愛い歓声が上がる。

載「ほぉ……」

感心する載。顔がほころぶ十全。

八葉「最後の大がかりな祭りが行われたのは一〇年前、それは勇壮できらびやかなものでした。しかし、ウチの爺さんに言わせると『まだまだ地味だ!』そうです。それじゃあ昔は、どれくらい派手だったんでしょうねえ?」

   *   *   *

舞台袖で様子を見ているひかるとジロウ。歓声は止まず。

ジロウ「へえー、さすが地元の有名人。小学生にも人気あるねえ」
ひかる「(満足げに)うんうん」
トシオ「二人とも、次の準備!」

少々焦り気味な様子なトシオ。ムリョウは、アツシに武者人形のかぶり物を着せている。

ジロウ「おおっと」
ひかる「はいはい」
あわてて持ち場に戻るジロウ達。

ムリョウ「姉ちゃん、そっちは任せたぞ」

ふとつぶやくムリョウ。

アツシ「え、何か言った?」
ムリョウ「頼りにしてるよ、ってね」
ジロウ「おおう、任せとけえ!」

蛇のかぶり物を着けるジロウ、胸を張る。その後ろからトシオ、蛇の頭に角を差し込む。

ジロウ「ぐえっ!」
トシオ「頼むぞ」
ひかる「そろそろね」

次の操作の準備をするひかる。目の前の進行表には細かいメモがびっしりと。

   *   *   *

再びハジメの語り。

ハジメ「お祭りの謂われははるか昔の大和時代に遡ります――」

○西湘バイパス
ソパル星人の車が走る。

○ソパル星人の車
ソパル星人「♪ 宇宙は~」
瞬「あらさっと」
ソパル星人「♪ 広いよ~、宇宙は~」
瞬「こりゃまった」
ソパル星人「♪ 遠いよ~」

鼻歌を歌うソパル星人、上機嫌。助手席の瞬も王子様のコスチュームのままで合いの手。後ろの席には、晴美と那由多が座っている。

那由多「……」

じれったそうな那由多。ミラーでその様子を見てクスリと笑う瞬。

瞬「大丈夫だよ、祭りクラブは無事に出し物やってると思うよ」
那由多「え?」
瞬「那由多は、日頃からあーだこーだ、目の前のことにはせっかちなクセに、肝心なことは呑気だからさ、今回そこん処を考えてもらおうって思ったわけでしてねぇ……」
那由多「何よそれェ?!」

車に軽く衝撃。

瞬「あれ?」
那由多「どうしたんですかぁ?」
ソパル「何だろねぇ。カモメかな?」

○西湘バイパス
セツナ「へへへ、ちょっと着地失敗」

ソパル星人の車の屋根に正座しているセツナ。背中には風呂敷包み。

セツナ「さてさてこれからどうなる、ってところで続きは次回~♪」
NR「……もう少し続きます」
セツナ「あ。そ」

異空間に向かってひた走る車。

○御統中学・体育館脇
運動部長達、円陣を組んで会議中。

柔道部長「じゃあいいな、みんな!」
他の部長達「おう!!」

やたらに力む柔道部長。他の部長の中には泣いている者もいる。

柔道部長「待ってろよ、ムリョウ君。これぞミスチュウのため、君のためでもあるのだ……ミスチュウファイッ!」
他の部長達「ファイッファイッ!」
柔道部長「ミスチュウファイッ!」

気勢を上げる部長達。

NR「忘れた頃の何とやら、というわけで今度こそ、続きは次回――」

         (第二〇話・完)

☆二〇〇字詰八〇枚換算

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読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)

ありがとうございます!
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アニメ監督です。こちらでは過去に発表した原稿やら何やらを載せていきたいと思います。

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佐藤竜雄の原作脚本監督作品『学園戦記ムリョウ』全26話の脚本です。オリジナルアニメの脚本はあまり見る機会がないということで自作をここに公開します。無料無期限ですのでお気軽に!

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