第6話『おだやかな、戦い』

学園戦記ムリョウ

第六話『おだやかな、戦い』(第一稿)

脚本・佐藤竜雄

登場人物
統原無量(スバル・ムリョウ)
村田 始(ムラタ・ハジメ) ※ナレーション
統原瀬津名(スバル・セツナ)
守山那由多(モリヤマ・ナユタ)

津守八葉(ツモリ・ハチヨウ)
守口京一(モリグチ・キョウイチ)
守機瞬(モリハタ・シュン)
峯尾晴美(ミネオ・ハルミ)
成田ジロウ(ナリタ・ジロウ)
川森アツシ(カワモリ・アツシ)
三上トシオ(ミカミ・トシオ)
進藤アキミ(シンドウ・アキミ)
稲垣ひかる(イナガキ・ヒカル)

村田今日子(ムラタ・キョウコ)
村田双葉(ムラタ・フタバ)

津守十全(ツモリ・ジュウゼン)
守山載(モリヤマ・サイ)
守口壌(モリグチ・ジョウ)
守口千枝(モリグチ・チエ)
守機漠(モリハタ・バク)
守機梨沙(モリハタ・リサ)

山本忠一(ヤマモト・タダカズ)
磯崎公美(イソザキ・ヒロミ)
ヴェルン星人
ザイグル星工作員

校長先生
柔道部長
剣道部長
サッカー部長
陸上部長
観客達
生徒達

○天網市
朝。
御統中学上空に上がる花火。
晴天。

○村田家・食堂
朝食の準備をしているキョウコ。
鼻歌交じりの上機嫌。

キョウコ「♪運動会はうん、どうかい?うーんどうかいうんどうかい♪」
ハジメ「母さん、運動会じゃないよ。体育祭だよ体育祭」

ハジメ入ってくる。学校ジャージ姿。

キョウコ「いいじゃないの、可愛いわよ、運動会の方が」
ハジメ「中学生は背伸びしたいんだよ。運動会じゃなくて体育祭、学芸会じゃなくて文化祭——」
キョウコ「はいはい」

テーブルの上には布に包まれた弁当箱。
椅子に座るとハジメ、新聞を一瞥。
一面には『宇宙人、姿見せず』『復旧急ピッチ』などの見出しが並ぶ。
コーヒーを注ぐキョウコ。

キョウコ「お父さんが『頑張れ』だって。さっき種子島から電話あったの」

コーヒーを受け取ってハジメ。

ハジメ「しかし、父さんも忙しいねぇ。何やってんだろ、ホント」
キョウコ「今は話す段階じゃないんだって。企業秘密らしいよ」
ハジメ「ハハ」

○天網市内
バックを肩に提げて歩くハジメ。

ムリョウ「お早う!」

合流するムリョウ、白い学生服姿。
ハジメ「(絶句)……ムリョウ君、それも学生服なの?」
ムリョウ「うん、こないだ姉ちゃんが持って来てくれたんだ。応援団長だからって——」
ハジメ「そういうものなの?」
ムリョウ「そうらしいよ」

全然気にしていないムリョウ。
呆れながらも並んで歩くハジメ。

NR「何が何だか、で体育祭——」

○オープニング

○御統中学・校庭
朝。開会式。

(サブタイトル『おだやかな、戦い』)

整列する生徒達
休め、の態勢。
壇上の校長先生の挨拶が続く。

校長先生「月並みですみませんが、本日もお日柄も良く、誠に絶好な体育祭日和です。一年生諸君、これがミスチュウの体育祭です。新しいクラスメートと更に親しくなる良い機会になるでしょう。二年の諸君も、クラス替え後なので同様ですね。そして三年の諸君にとっては最後の体育祭として良
き思い出になるように……私は願って止みません——」

前に並ぶのは生徒会と実行委員達。
白の学生服が目立つムリョウ。そんなムリョウを意識している京一。
放送ブースで機材のチェックと進行の確認をしている放送委員と瞬。
教師達は生徒の列の脇に並ぶ。
二年C組の列の先頭に立つのはハジメ。
何とは無しに、といった感じで校長の話を聞いている。

NR「我が御統中学の二大行事の一つ、体育祭の日がやって来た。六月に体育祭、十一月に文化祭。梅雨時に体育祭とは如何なものか、という意見もあったらしいが、ま、期末試験前の景気付けだと思えば良いのではないかと」

ニッコリと校長、挨拶の締めに入る。

校長先生「さあ、五月蝿い教師の出番はこれで終わりです。あとは君達の知恵と力の見せ所です。お手並み拝見……頑張れ!」

拍手。

瞬(マイク)「それでは引き続きまして生徒会長の開会宣言——」

     *   *   *

女子一〇〇メートル予選

陸上部員「レディ!」

ピストルが鳴る。
上がる白煙。走る女子。
歓声——

○体育館前
赤い羽織袴に着替えている京一。

京一「本当に……着なければダメなのか?」

着替えを手伝うのは柔道部長、剣道部長、晴美の三人。

柔道部長「そりゃそうだ。ジャージ姿の応援団長なんて聞いたことないぞ」
京一「俺はあるぞ」
柔道部長「あってもダメだ!何せ白組の団長がムリョウ君だ。こちらも派手に目立たなければな」

そこへムリョウとハジメ通りかかる。
白の学生服が目立つ。

京一「貴様、どういうつもりだ!」
ムリョウ「やあ、すごいな京一さん」

京一、赤面しつつ誤魔化すように

京一「う、うるさい!貴様のせいだぞ、よくもそんなに恥ずかしい格好ができるな!」
ムリョウ「え?ああ、これ?おかげさまでみんなに評判良くて——」
柔道部長・剣道部長「ムリョウ君!」

詰め寄る柔道部長、剣道部長。

柔道部長「スマン、君を応援団長に推した僕達だが、君は白組、僕達は紅組だ。何という運命の悪戯……」
剣道部長「しかし、僕らは君の味方だ!敵味方は関係ない!」
京一「大ありだ!」

ハジメと晴美、一同のやり取りをただただ見守るのみ。

那由多「統原無量!何さぼってんの!」

ボンボンを持った那由多、校舎の陰から顔をのぞかせる。

那由多「こっちよこっち!あなた、敵の所で何油売ってんの!」
ムリョウ「ああ、ゴメン。(部長達に)じゃ、皆さん、正々堂々と戦いましょう」
ハジメ「じゃ…」

ハジメとムリョウ立ち去る。

柔道部長「午後の応援合戦には守山君も出るのか……」
剣道部長「勝った方は五〇点のボーナスだ。観客の人気投票だから、まずいな」
京一「俺だけではダメだというのか!? 」
柔道部長・剣道部長「ダメだ!! 」
京一「な……」

目をむく京一。しかし、二人は目もくれずに晴美に詰め寄る。

柔道部長「峯尾君、今こそ君の出番だ!」
晴美「え?」

○校庭
トラックでは一年生の二人三脚。
生徒達はトラック周辺にゴザを並べ、
声を張り上げて応援している。
校舎と校庭を隔てるコンクリートの大きな階段スタンド。父兄と教師はそこに陣取っている。
山本先生、ニコニコと観戦中。

ヴェルン星人「やあ、どうも」

ペットボトルのドリンクを持って山本の傍らに座るヴェルン星人。アロハ姿。
山本、チラと一瞥。
ボトルを一本勧めるヴェルン星人。無言で受け取る山本。

ヴェルン星人「こないだのザイグル星人ね」
山本「うん?」
ヴェルン星人「やっぱり帝国側の工作員だったみたい。緊急通信カプセルの行方……火星の辺りにね、隠れてたよ宇宙船」

     *   *   *

(回想・五話)
自爆するザイグル星人。体内より飛び
去る緊急通信カプセル。

     *   *   *

ヴェルン星人「ザイグル星って一番最近、銀河連邦に加入したところなんだけどさ……戦争してるんだよね、二つに分かれて。あそこも地球と同じで寿命が短い人多いんでね。戦ってるうちに銀河連邦のこと知ってる人、あんまりいなくなっちゃったみたいなのよ」
山本「じゃ、何でこの地球に?」
ヴェルン星人「お偉方の年寄りは知ってるんでしょ。そこで地球に眠る、アレを手に入れようと……」

ひときわ歓声が高くなる。
トラックにはムリョウと京一が登場。
放送ブースの瞬、軽妙なアナウンス。

瞬「白組団長統原無量、紅組団長守口京一両名の登場です。午後からの応援合戦はこの二人を中心にした両組応援団の応援合戦があります。見物中の父兄、並びにご近所の皆様、審査の程、よろしくお願いいたします」

手を振って周囲に応えるムリョウ。
仏頂面の京一。

ヴェルン星人「あれが、お山から降りて来た少年かい?ハハ、愉快そうだな」
山本「真守の分家連中も気になると見えて……偵察、というわけだ」

スタンドの各所に散らばる守山、守口、守機、津守の四家の当主達。

ヴェルン星人「外からは宇宙人、内では山から謎の少年がやって来て……おたくらも大変だねえ」

——バカ殿おしろい競争——
仮装(ヅラと羽織)をした後に、粉の中の大福をくわえてゴールするゲーム。

瞬(マイク)「二年生男女によりますおしろい競争――皆さん、顔を真っ白にして頑張って下さい!」

思いっきり粉に突っ込むジロウ。
おずおずと口を付けるアキミ。
大爆笑の観客と生徒。

○水飲み場
校舎脇の足洗い場を兼ねた水飲み場。
粉だらけの生徒達が顔を洗っている。
やって来るハジメとジロウ。二人とも思い切り顔が真っ白。

ジロウ「うひょー、混んでるな」
ハジメ「次の次が百足リレーだからね」
ジロウ「じゃ、俺向こうの洗い場行くわ。リレー出なくちゃいけないし」

走り去るジロウ。

ハジメ「頑張れよ」
フタバ「お兄ちゃーーん!」

何気に振り向くと写真撮るフタバ。

ハジメ「あ!」
フタバ「やーーい、バカ殿バカ殿!」

逃げていくフタバ。

ハジメ「覚えてろよーっ!」

○校庭
——飛び入り競争——
ヴェルン星人、お玉にピンポン玉をのせて快走。頭には赤い鉢巻。
盛り上がる応援の宇宙人の人達。

瞬(マイク)「紅早い紅早い!紅組の飛び入りのアロハさん、ゴールです!」

スタンドで苦笑いの山本。

○校舎脇
校庭に急ぐハジメ。

十全「もし、少年」
ハジメ「はい?」

老人に呼び止められるハジメ。老人の隣には髭を生やした中年紳士。

十全「村田始君だね?」
ハジメ「ええ」
十全「星を……見たね」
ハジメ「星?……あっ!」

脳裏に星々のヴィジョンが甦る。
※ヴィジョン――四話参照

ハジメ「あなた方は?」
十全「わしは津守十全。生徒会長津守八葉の祖父じゃよ」
ハジメ「!」
載「私は守山載。那由多の父親です。いつも娘がお世話になっているようで……」
ハジメ「え?守山さんのお父さん?」
十全「どうだったね?星の歴史は?モモエ様のおまじないは――」
ハジメ「いやあ、頭に物凄い情報の量が流れ込んできたんだと思うんですが……整理中なんです。ムリョウ君はそれでいい、って言ってますが」
載「ムリョウ?」
十全「ああ、あの阿僧祇のところの秘蔵っ子だね。で、どう感じたね?」
ハジメ「どう?」
十全「そう。感じたこと」
ハジメ「キレイだな、って思って……」
十全「思って?」
ハジメ「冷たくて温かくて気持ち良い……そんな感じがしました。あの、夏の暑いときに冷たい廊下にべたーって腹這いになったとき……そんな感じです」
十全「夏の……」
載「廊下?」
ハジメ「あ、スミマセン。そんな例えしか出来なくて……」

恐縮するハジメ。
そこへ校庭から那由多が呼ぶ。

那由多「二年C組村田始!」
ハジメ「あ、すいません」
十全「ああ、ありがとう」

ペコリと頭を下げるとスタンドを駆け下りて行くハジメ。
それを見送る十全と載。

十全「聞いたかい?」
載「はい」
十全「モモエ様の言うこと、あながち間違いではないのかもしれないな」

○校庭
降りてくるハジメに那由多。

那由多「お父さん達と何話してたの?」
ハジメ「娘をよろしくってさ」
那由多「バ~カ」

二人小走りで移動していく。

○校舎脇
ハジメと那由多を見やる十全達。

載「ザイグルとかいう星の工作員が、同じイメージを頭に流し込まれて自滅したそうです。かたや地球人のあの少年は――」
十全「…そんな時代なのかのォ」

○グラウンド
隅の方でムリョウと応援団、それに那由多とハジメを交えて作戦会議。
(トラックでは百足リレー競技中)

ハジメ「えーーっ、三人四脚に僕が?」
那由多「私もですか?」
八葉「そうだ、君とムリョウ君、そして那由多の三人に是非ともエントリーして欲しい!」
ハジメ「で、でもあれって三年メインの競技じゃないんですか?」

一緒にかぶりを振る那由多。

八葉「得点を見たまえ」

得点ボードは白九九に対し赤一〇五。

サッカー部長「実力伯仲、はっきり言って先が読めない!」
陸上部長「取りこぼしは出来ないし、点の取れる競技はどんどん取るべきだ!」
ハジメ「はあ…」
八葉「そんな矢先、君達三人の素晴らしいチームワークを喧伝する素晴らしき人物が現れた!」
ハジメ「え?」

木の陰よりひょっこり現れるセツナ。

セツナ「はあ~い」

がっくりするハジメと那由多。

ハジメ「セツナさん……」
那由多「あなた、私達に何か恨みでもあるんですか!? 」
セツナ「いいじゃない、ナユちゃん。両手に花だよ、嬉しいでしょ」
那由多「な……」

絶句赤面する那由多。
そこへビデオを構える稲垣ひかる。

ひかる「は~い、いいお顔~~♪」

ギョッとした顔を撮られる那由多。

○スタンド
——を双眼鏡で見ている守口夫妻。

壌「守山の娘、すっかり余所者に入れ込んでるようだな」
千枝「所詮は子供よ。いくらシングウを操るといってもカッコイイ男の子には、ね」
壌「カッコイイ、と言えばウチの京一はかなりのもんだと思うが……」
千枝「そりゃそうよ、私の子供ですから」

少し離れたところで守機漠、ポツリ。

漠「親バカ親バカ……」

そこへ瞬の場内放送。

瞬(マイク)「百足リレーでした……選手の皆さんお疲れさま」

一人ニヤつく漠。

漠「ああ、いい声だねえ」

その隣の妻・梨沙、ポツリ。

梨沙「あんたも親バカ」

その前を横切る怪しい男。

○体育館裏
山本先生と磯崎先生、話している。

山本「ザイグル星人?」
磯崎「間違いありません、紛れ込んでいます」
山本「奴は私の前で死んだはずだが……」
磯崎「死んだ工作員の通信を受けて、本隊が動き出したのでしょう」
山本「何人?」
磯崎「少なくとも三人」

人の気配を感じ、普段の教師同士の会話モードに入る二人。

山本「(わざと大声で)じゃ、磯崎先生、生徒の助っ人の方、よろしく頼みますよ」
磯崎「(同様に)ええ、わかりました♡」

二人の前を通り過ぎる生徒達。

山本「……しかし、済みませんな。あなたにもご苦労かけさせて……」
磯崎「いいえ。これが私の仕事ですから」

ニコリと微笑む磯崎。

磯崎「未来の、友好のために」

○アイキャッチ

○グラウンド
昼休み。
本部席には昼食中の札。
そこかしこで弁当を広げる生徒達。
親子で食事をする者も。
弁当を広げるハジメ達。
ハジメの弁当箱をのぞき込むジロウ。
中身は鳥の照り焼きに厚焼き卵、ご飯には海苔が敷き詰められ…という陣容。

ジロウ「相変わらずハジメんとこの母ちゃんは美味そうなもん作るよなあ」
ハジメ「卵焼きとコロッケ、トレード」
ジロウ「おお、すまねえ」

おかずを交換するハジメとジロウ。

アツシ「午後イチの応援合戦、何するつもりなんだろうな」
トシオ「守山さんがボンボン持ってたから……チアガールとかやるのかもしれないね」
ジロウ「おー、守山那由多のチアガール!! 」
フタバ「ニヤケついでにハイ、チーズ!」

不意に声懸けられ、そちらを向くとカメラを構えたフタバ。シャッター音。

ハジメ「ああッ」
フタバ「やーい、にやけんぼ♪」

思わずうつむくトシオ。

ハジメ「おい、母さんはどうした?来てるんだろ?」
フタバ「芝生のとこ。セツナさんと一緒」

○中庭
芝生の上にピクニッククロス。
呑気にお茶するセツナとキョウコ。二人の前には重箱。中には四種類(漉し餡、粒餡、胡麻、きな粉)のおはぎがぎっしりと。

セツナ「いいんですか、ハジメ君と一緒に食べなくて」
キョウコ「ええ、だって友達同士の方が楽しいでしょ、運動会は」
セツナ「そうですねえ」

おはぎをパクつくキョウコ。

キョウコ「それにこのおはぎ美味しいわ。あなたが作ったの?」
セツナ「いいえ、これはモモエ……真守のお祖母ちゃんが作ってくれたんです。私は食べる専門で……」

クスクス笑うセツナ。

セツナ「弟も……何だか楽しそうです。一人でここにやるのは心配だったんですが、安心してます」
キョウコ「いい街でしょう、天網市って」
セツナ「いい人ばかりで……」

チラと校舎に目をやるセツナ。
三階の廊下を磯崎が歩いている。
さりげなく微笑むセツナ。

セツナ「(小声で)ホント、ご苦労さん」
キョウコ「え?」

向こうでフタバが叫ぶ。

フタバ「あー、先に食べてるゥ?! 」

その後ろにはジロウとアツシとトシオが決まり悪そうに照れ笑い。

セツナ「だいじょうぶ!みんなおいでーっ!」

○校舎内・二年E組
教室にうずくまる人影が一つ。
那由多の席を調べるシーカー4。
キャップを目深にかぶりサングラス着用、ダブダブしたジャージを着ている。
エネルギー痕跡をシングウのパイロット(那由多の事)のデータと照合して
いる。那由多の身長体重を算出——

磯崎「女子生徒のデータ収集?」
シーカー4「ξΧ…」

首がぐるりと回る。
入り口付近に立っている磯崎。

磯崎「エッチなスパイね」

銃を構えるシーカー4。
衝撃。
銃をチカラによって叩き落とす磯崎。

シーカー4「ΘΔ ?! 」
磯崎「あなたの上司に会わせなさい」

不意にジャージを突き破って体内を展開するシーカー4。機械の体。

磯崎「!」

右手を突き出す磯崎。
シーカー4の周囲をフィールドが包む。
自爆するシーカー。同時にフィールド収縮し、爆発エネルギーを吸収、消失。

ヴェルン星人「ブラボー、ブラボー」

拍手をしながらヴェルン星人現る。

ヴェルン星人「せっかくの証人を、いいの?」
磯崎「あれは操り人形。証人にはならないわ」
ヴェルン星人「遠隔操作を受けて情報収集、いざとなったら自爆して敵と道連れ。ハハ」
磯崎「……」

ヴェルン星人を睨み付ける磯崎。

磯崎「何の御用ですか?父兄の方はグラウンドへどうぞ?」
ヴェルン星人「はいはい、怖いなあ」

駆けつける山本。

山本「磯崎先生、大丈夫でしたか」
磯崎「相手は偵察ロボット。以前のデータの再確認と新たな情報の収集——」
ヴェルン星人「らしいよ」
山本「ったく、どいつもこいつもウロチョロと……こうなったらあんたにも協力してもらうよ」
ヴェルン星人「はいはい」
磯崎「山本先生?! 」
山本「まあまあ、今日は体育祭。生徒達の邪魔だけはしたくないんですわ」
ヴェルン星人「そうそう、宇宙人が原因で体育祭が中止、なんてみっともないよ」
磯崎「わかりました……」

○校庭
瞬(マイク)「これより、午後の部を、開始します。プログラム一一番、紅白応援団によります応援合戦です。これは、観戦のお客様によります投票が勝敗を分けます。宜しく御協力の程を——」

投票端末を観客に配る実行委員達。

実行委員「二重投票は無効になりますので気をつけてください」

カメラ構えて待ち構えているフタバ。

フタバ「ムリョウさん出るよ、ねえ!」
キョウコ「はいはい」

生徒席のジロウ達。

アキミ「村田君いないね。どこ行ったの?」
トシオ「飛び入りするみたい。昼休みに応援団に連れていかれたよ」
アツシ「何するつもりなんだろうなあ……」
瞬(マイク)「それでは、まずは白組応援団!」

一斉に入場門に注がれる目。
沸き返る観客、生徒達。
「おおーーっ!? 」

○裏山
山鳥が飛び立つ。
突如、乾いた衝撃音。
林の中での山本とシーカー3タイプ(二話参照)の戦い。
シーカー3、頭部より山本にチカラを叩き込まれる。
破損部排除。なおも戦いを止めないシーカー3、腕を振り回す。

山本「どっこい!」

それを捌いて投げ飛ばす山本。
各部より火を吹くシーカー3。

磯崎「私が!」

後から追いついた磯崎、フィールドでシーカー3を囲む。
フィールド縮小、爆発を吸収し消失。
ヤレヤレと腰に手を当てる山本。

山本「学校から離れていてくれて良かったよ」
磯崎「(見上げて)ジルトーシュ、真面目にやりなさい!」

木の上から双眼鏡で校庭を見ているヴェルン星人。

ヴェルン星人「だってさ、二人で充分じゃない?強いんだもん。あー、付いて来て損した。今大変だよ、白の応援がさ。あっはっはっ……あ、赤!ウヒョー、あれ、反則だよ」
山本、磯崎「……」

無言でヴェルン星人を見つめる二人。

ヴェルン星人「はいはい、わかりましたよ」

下へ着地するヴェルン星人。

磯崎「あなたなら遠隔操作をしていたザイグル星人の居場所、突き止められるでしょう?」
ヴェルン星人「やだなぁ、人を探知機扱いしないでよ」
山本「この間ザイグル星人が暴れた時の居酒屋の弁償金、タダにしてもいいんだけど……どうする?」

一転して張り切るヴェルン星人。

ヴェルン星人「さー、がんばるぞ!」

顔をしかめる磯崎。
山本ニコニコと微笑む。

○天網市・商店街
人が誰もいない。
臨時休業の肉屋のシャッターに張り紙。

御統中学校体育祭の応援のため、本日は休業致します。

一人駆け抜けていく工作員B。
トレンチコートに帽子にサングラス。

○校庭
放送ブースの瞬、集計結果を受け取る。
瞬「さぁ、あっという間の応援合戦、迅速な集計の結果が今ここに…出ました!白五二、紅九四、よって紅組の勝利です!! ボーナスポイント五〇点獲得!! 」

沸き返る紅組の応援席。
スタンドではガックリのフタバ。

フタバ「あーあ……」
セツナ「だって、しょうがないよ」
キョウコ「そうね……」

言葉を濁すキョウコ。

○校舎脇
那由多「えーーっ、どうしてなんですか?! 」

桃太郎の衣装を着た那由多。

サッカー部長「スマン、僕らの力が及ばないばかりに……」

赤鬼の姿でボンボンを持った応援団員達、ガックリしている。

八葉「うーーん」

犬の姿の八葉も腕組み。

ムリョウ「まあまあ、まだ競技が残ってるんだから頑張ろうよ」

猿の姿のムリョウ。

那由多「『赤鬼を倒して白組万歳』ってオチもキマってたと思ったのに……」

キジの格好のハジメ。

ハジメ「しょうがないよ、あっちがああいう風に来られちゃあさ……」
一同「うーーん」

一様にうつむく一同。

○体育館裏
大喜びの白組応援団。

一同「やったーーっ!」
柔道部長「我々の覚悟の勝利だ!」

チアガール姿の応援団員。
ゴツイ男ばかりなのでかなり気色悪い。

剣道部長「そして、華麗なる峯尾晴美君の奮闘のおかげだ!」
一同「おーーっ!」

○水飲み場
たたずんでいる晴美。チアガール姿。
京一「晴美……」

背後から京一、チアガール姿。

晴美「すみません。差し出がましいことを……」

背を向けたままの晴美。
威張りつつも妙に照れ照れな京一。

京一「馬鹿、これは体育祭の立派な競技だ。お前のおかげで応援合戦は圧勝だ。みんな喜んでる……ありがとう」
晴美「そんな、勿体ないです……」

じっとうつむいたままの晴美、淡々と。

晴美「私達の使命は、守口家の……京一様のお力になることです」

そんな態度に怒りがこみ上げる京一。

京一「何でお前は、こんな時まで!」

回り込んで京一、晴美の肩をつかむ。
ビクッとする晴美、目をそらす。

京一「何でお前はそんなに卑屈に……」
晴海「……」
京一「わかった。ならば守口家の名に於いて命令する!晴美、体育祭、頑張ろう!」
晴美「?」

キョトンとしていた晴美、次いでプッと吹き出すとクスクス笑い。
京一も笑い出す。
グラウンドから歓声ひときわ大きく。
この様子を物陰から見ていたセツナ。

セツナ「なーんかわけあり。でも、男の方もチアガールの格好じゃ、絵にならないよね」

NR「とはいえ、男守口京一のそんな捨て身の作戦によって紅組は応援合戦に圧勝。勢いに乗って白組との点差を引き離しにかかった。当然白組も負けてはいられない」

○校庭
得点ボード。
白一二五点に対し、紅二〇一点。
ピストルの音。
女子百メートル決勝。
スタートダッシュ。
男子百メートル決勝。
バトンパス。
クラス対抗リレー決勝。
ゴールイン。
沸き返る応援席。

サッカー部長「頼むぞムリョウ君!」

三人四脚障害物競走——

那由多「せえーーの!」
ハジメ・ムリョウ「よっ、はっ、とっ」

三人でハードルを越え、平均台を渡り、トラックに置かれた封筒を開く。

『河童』

両側のムリョウとハジメ、急いで那由多にカッパの衣装をかぶせる。
カッパの那由多、ムリョウ達の助けを借りてぶら下がるアンパンに飛びつくと三人ラストスパート。
ゴールイン。

セツナ「やったーーっ!」

大喜びのセツナ。
キョウコも拍手。
カメラ構える稲垣ひかるとフタバ。

ひかる「はーい、優勝トリオ♪」
フタバ「ちーいず!」

一位の旗を持って喜ぶハジメ。ムリョウもニコニコ。一人苦笑いの那由多、カッパの格好のままでVサイン。

得点ボード。
白二三〇点、紅二四〇点。

○天網市・橋の下
河口に架けられた比較的大きな橋の下で通信しているザイグル工作員。

ヴェルン星人「何だい何だい」
ザイグル工作員「?! 」
ヴェルン星人「びっくりして振り向くところも同じだな。君らは学習能力はないのかい? 何で同じシチュエーションで通信してるん
だ?ったく、ザイグル星人って奴は……」
ザイグル工作員「δφ!」

銃を構えるザイグル星人。
と、同時に使う間も無く収縮する銃。

ヴェルン星人「無駄無駄、やめときなよ」
ザイグル工作員「…そのようだな」
ヴェルン星人「へえ、随分物分かりがいいね」
ザイグル工作員「私は真実が知りたい…」
ヴェルン星人「ん?」
ザイグル工作員「貴方を…貴方の言うところのヴェルン星人と見込んで頼みがある」
ヴェルン星人「はい?」
ザイグル工作員「私を保護してほしい」
ヴェルン星人「保護?」
ザイグル星人「私をザイグル星帝国軍より保護してほしい」
ヴェルン星人「おーーい、どうしよう?こりゃ政治的亡命って奴かなあ?」

二人から少し離れたところに立っていた磯崎と山本。
頭かく山本。

山本「何だかまたわけがわかんなくなったな」
磯崎「こちらの調査に協力するのなら相談に乗りましょう?」
ザイグル工作員「あのご婦人は?」
ヴェルン星人「聞いて驚くよ。あの人は銀河連邦安全保障委員の太陽系方面観察者。要はこの辺りの星の保安官ってとこだね」
ザイグル工作員「ほしょう?あんか?」
ヴェルン星人「……わかった、何もかも真実をゆっくりと説明してあげよう」

山本、しきりに頭をかく。

○校庭
得点ボード。
白二四九点、紅二五五点。
放送ブースの瞬、ノリノリで実況。

瞬「すごい熱戦、予想だにしなかった接戦! 誰がこのような展開を予想していたでしょうか!」

男子生徒の騎馬戦。
紅白両軍、鶴翼陣形でにらみ合う。
それぞれ中央に大将馬。
白はムリョウ、馬はサッカー部長達。
紅は京一、馬は柔道部長達。
ハジメはジロウ達の馬に乗って、比較的端に位置している。

瞬「紅組リードとはいえ、その差は僅か!この騎馬戦によって勝敗が決定するのは明らかです。果たして勝利するのはどちらなのか?! 」

前方を睨む京一。
前方を見つめるムリョウ。
見守る那由多。
見守る晴美。
見守る観客。
合図の用意する校長先生、右手上げる。

校長「よぉーーい」

NR「どんなに難しい事を言ってても、体育祭に熱中する僕達はやっぱり子供なのだろう。こればっかりは仕方がない。勝てば嬉しいし負ければ悔しい。白勝て紅勝て」
校長「はじめ!! 」

ドォーンと鳴らされる太鼓の音。

NR「それでは、結果は次回――」

         (第六話・完)

☆二〇〇字詰八〇枚換算

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読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)

ありがとうございます!
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アニメ監督です。こちらでは過去に発表した原稿やら何やらを載せていきたいと思います。

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佐藤竜雄の原作脚本監督作品『学園戦記ムリョウ』全26話の脚本です。オリジナルアニメの脚本はあまり見る機会がないということで自作をここに公開します。無料無期限ですのでお気軽に!

コメント (1)
第6話も、脚本を読んでから本編を視聴しました。
生活の中に異質なものやSFが入り込んでる感じがすごい。
マジックリアリズムというのも違うけど、この独特の世界観や雰囲気が好きだなぁ。

それと、コメントで言うのもなんですがnoteで佐藤監督にメッセージを送りました。
noteのお知らせに表示されず、登録してあるメールアドレスにメールが届くだけなので
もしかしたらお気づきになっていないかと思いまして。

本来ならコメントに書き込む内容ではないですが、すみません。
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