合気道×発達障害②

 発達障害の傾向の強い方が合気道をするとよい理由その1、「自分の体を思い通りに使う」についてです。

 発達障害の方は、手足の協調運動が苦手で、動きがぎこちなかったり、疲れやすかったりすることが多いと思います。また、体全体に力を入れてしまったり、呼吸を止めてしまったり、関節の動きが固かったりということもあるかと思います。合気道では、丹田を意識し、体の中心軸を意識し、関節を柔らかく使います。仙骨(骨盤の真ん中にある骨)を意識して立てることで上半身と下半身をつなぎ、股関節、膝関節に遊びがあるような感じで柔らかく使い、丹田から、体の中心軸から動く。手足の余分な力を抜く。呼吸をする。繰り返しそれを意識して稽古をしていくうちに、ばらばらで動かしにくかった自分の体がまとまってきて、肩の力が抜け、ラクに動けるようになってきます。私もかつて、姿勢が悪く、気づくと体に力が入っていたのですが、稽古によってだいぶ日常の動作が楽になりました。それでも時々元に戻っていることがありますが、その状態を「気持ち悪い」と感じ、気づいて修正できるようになっています。

 合気道では、古武術的な動きをします。ナンバ歩きやすり足など、現代人の我々には、発達障害でなくても慣れない体の使い方をしたりします。はじめは、これをするにはここに力を入れないとダメだ、とか、これをしたら転んでしまうのではないか、など、固定概念にとらわれて教えられたとおりに動くことができません。しかしそこを乗り越えると、未知の体の動きを獲得でき、目の前がぱあっと広がったような感覚が訪れます。さらに繰り返しその動きを練習することによって、日常的に楽な体の使い方を引き出すことができるようになってきます。

 体の変化は、脳にも影響を与えると思われます。以前、知的な障害を持っ(てい)た方とお話しする機会があったのですが、その方の場合は、球技を始めて体が変化するにしたがって、知的な障害が改善されてきたとおっしゃいました。その時話した印象では、知的な障害があるようには見えませんでした。体の使い方に対して自分でかけていた制限が外れることによって、脳の使い方にも変化が出ているのかもしれません。

このことは、次回のテーマ、「自分の心をコントロールする」にもつながっていきます。

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