とらわれに気づく、とらわれから自由になる

 人は、外から何らかの圧が加わると簡単にそこにとらわれてしまいます。合気道の稽古をしていて、うまくいかないときは大体「とらわれ」ています。これは普段の生活にもあてはまります。
 上司に叱られた、友人と喧嘩をした、などマイナスな出来事があると、そのことが頭から離れなくなったり、そこから自分のすべてを否定してしまったり、生活のすべてが重たい気分になってしまったりします。
 でも、ふっと力を抜いて外から見てみると、上司は会社だけのことだし、友人も、その時だけのことで、ほかの自分は関係がなく、自由であることに気が付きます。
 合気道では、相手に攻撃されたとき、その部分にとらわれて体が固まってしまいがちです。そしてそこを何とかしようと力を入れると、動きが制限され、また相手にも察知されて思うようにさばけなくなってしまうのです。
 そこで大事なのが、攻撃されたところにとらわれないことです。腕をがっちりつかまれていても、ほかの部分はフリーです。足や胴体は動けることに気が付くと、自分は良い姿勢を保って大きく動けるようになります。このことにいち早く気付けるようになるには、またとらわれたところの力を上手に抜けるようになるには、常に意識し、鍛錬することが必要ですが、この考え方は日常にも応用できると思います。
 とらわれているときは、姿勢も悪くなっています。前かがみになったり、腕が縮まったり、足腰の関節が固くなってしまうので、コリやハリが発生しやすいアンバランスな状態になっています。これは、体が無意識のうちに「この筋肉に力を入れなければこの動作はできない」「この関節を曲げてはいけない」と自分で制限をかけてしまっている状態だと思われます。自分の体をしっかり客観視して、とらわれに気づき、「この部分は力を抜いていいんだ」「この関節は曲げてもいいんだ」とロックを解除していくと、今までできなかった体の動きができるようになったりします。
 今の状況は、ステイホームやテレワークで狭い範囲にじっとしていたり、スマートフォンの中のやりとりに熱中したり、視野が狭まってとらわれが生じやすくなっていると思われます。そうすると、体も心も内にこもって固まってしまい、落ち込みやすくなってしまいます。
 何かにとらわれることが窮屈な体の状況を作り出すこともあるし、窮屈な体の状況がとらわれやすい心を作り出すこともあります。心と体はつながっています。ふっと力を抜いて外側から見るココロの癖をつけること、体のこわばりに気づいて不要な部分の力を抜くことを心がけて、とらわれない、自由な毎日を送りたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?