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読書記録8「はじめての動物倫理学」

6/8深夜〜6/9昼。
科博の宝石展から戻ってきて新宿の紀伊國屋で購入(新書3冊購入)。TOHOシネマズ新宿でシン・ウルトラマンの深夜レイトショー見る前に西武新宿駅前マックで読み始めた。

ヴィーガニズム・動物愛護について批判的な立場の人間なので、一度ちゃんと肯定的な立場の(かつ、感情ではなくちゃんと論理で語れる)人の著作で体系的に向こう側の意見を聞いてみる必要があると思った。ので読んだ。著者とレスバする気持ちでスラスラ読めて楽しい読書体験だった。Twitterでお話にならない過激派眺めてるより百倍有意義なのでみんなTwitterやめた方がいいと思う。

結論から言うと、そこまで納得はできなかった。自分と同じような立場をとっている過去の哲学者の思想が挙げられていたパートは非常に役に立った。それに対する批判としての動物の権利擁護側の論拠にいくつかツッコミしたい点があり、腑に落ちないまま話が進んでいった。新書という紙幅の都合上仕方のない部分もあろうが、コトの性質上説得がメインになるお話なのだから、個別事例に強い言葉を使って感情に訴えかけるよりも論理の部分をもうちょっと補強してほしかった。

説得こそされなかったが、倫理学の歴史を踏まえた上でちゃんと論理による説得を試みているという点で良書であると思われる。Twitterレスバの百倍有意義であることは間違いない。ということを踏まえた上で、特に気になった点を羅列していく。

・強い言葉を使いすぎ。あとがきで著者自身触れていたが、説得のためには逆効果なのでやめた方がいいと思う。既に賛同してる人にとっては気持ちいいだろうが、賛成してない人を賛成に引き入れるために有効だとは思えない。著者が自分で触れていた「虐待」というフレーズの多用よりも、断じて許し難いとか野蛮なとかそういう断定口調を論理の裏付けをしていない部分で使うことのほうが気になった。まあ心情的にそういう言葉が出てしまうのは理解できるのだが、戦略的にはあまり望ましくはないと思う。

・パターナリスティックなきらいがある。動物の幸せを人間が規定していいのか?という点に特に説明がないのが気になった。愛玩動物は人間に隷属せねば生きられない以上緩やかな絶滅が幸福となる、みたいな直感的には納得できない理論を説明なく通すのはどうかと思う。

・なぜ動物に主体としての権利を認めるべきなのか、という点にもう少し説明が欲しかった。最重要部分であるにも関わらず、種差別のひと言で片づけられてしまったような印象。

・動物実験の必要性を軽く見過ぎだと思う。必要最低限の動物実験とはパンデミックによる文明レベルの被害を回避するため等に限られるとしていたが、患者数の少ない難病等の研究には使えないのか。

・↑とも関連するが、どの動物にどの程度の権利を認めるかが曖昧で感覚的に語られているように見受けられた。全生物に人間と同等の権利を認めるべきとは言っていないようだが、しかしそれなら必ずどこかに線引きが必要になる。

・植物には権利を認めないが動物には認めるという点がよく分からない。環境倫理学の章で「植物は能動的な感覚的存在ではない」ゆえに同等ではないと述べていたが、近年の研究ではそれも否定されていたはずだが。そこにも無意識の線引きが見られる。

個人的に納得できない点はあるが、考えるきっかけとして素晴らしい本であり、賛成派も反対派も読む価値のある本であると思う。

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