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数字におきかえられないドラマ
村役場で働いていると、出生のような嬉しいニュースも、別れや転出のような悲しい知らせも、すべて集まってくる。
先日、村を去る方が転出届を出しに役場にこられた。
役場の職員にもその方の仲のよかった人たちがいて、手続きがすむまでの間、これまでのこと、将来のことについて語り合っていた。
帰るときには別れを惜しんで手を振りつつ、出口まで見送っていた。
その方とは直接のつながりがない私も、「おつかれさまでした」と、いつもよりいっそう心をこめてあいさつをしながら、心の中でエールを送った。
私が東京を去るとき、区役所の窓口の方は当然のように知らない方で、私自身も手続きを待つ何十人もの一人にすぎなかった。
窓口は忙しく、私は次の人に順番を譲るために足早にカウンターを去り、窓口の方も事務的にならざるをえなかった。
村では、1枚1枚の書類、一つ一つの手続きの中に、一人ひとりの人生の大切な瞬間に立ち会っている、確かな手触りがある。
人口や転出数のような数字におきかえられない人の温かみが。
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