病床 に伏せる女性の 甘い体温 汗ばむ指先と 桃色の耳朶 良く搾ったタオルが 執拗に白い 下着の無い頂 が唇に流れる たくし上げられた微熱が 柔らかい腰を象る
沈黙を破って産まれる 花芯の奥から漂う甘い薫り 白い皮膚に嵐は吹き荒れる 花弁が散らされてゆく 開いた両足の隙間に潜り込む 美しい魚たち 潜り抜ける細い渓谷を愛撫して 水の音と鳥の囀りが反響する
後手 優しい結束 親指を縛ってしまえば 着物を脱がせるのに 何の抵抗もない 眼鏡を外してあげる 帯は解かないであげる 胸をはだけてあげる 写真に遺してあげる
深夜のオフィスに滴る水液 花瓶が割れてしまった 半分消えたLED に照らされた幽愁 引き攣るストッキングが 伝染したがっている熱病 芯が燃えている 蕩け出す蝋の馨り ずっと望んでいた 背徳が背中から指を這わせる
理科室で目覚める 骨格標本にくちづけて 背骨に指を滑らせる 愛は存じませんが恋ならば 慾望に酷似した熱です ホルマリン漬けにされるほど 愛されてみたい 横目で棚を眺めながら吐息ひとつ
恋の病は心臓から花を咲かせます 内密に、貴方を処方箋としてくださいな? 服のボタンを外し胸元にくちづけて 丁寧に手折られてゆく1輪の花 手練手管で手懐けた獣を飼い慣らす 撫でた髪から頬に触れ 耳をそっと噛んで舐める 始まりは目配せ 高鳴る鼓動が響きます どうにかなりそう、 (どうにか、して…… 手ぐすね引いて唇を求める
柔らかい叢に 指を浸す まだ十分に湛えられた 湖の音
伸ばされた細く長い指先 首筋を撫でて絡めとる 宛てがう唇が鎖骨へ沿って 肩口まで這い上がる 走る痛みと漏れる吐息 涙目で震えて口が開いてゆく 荒くなる呼吸と 小刻みに動く肉体