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社会学系からの政策立案ブックガイド;その2

今日は、社会学系からの政策立案に役立つブックガイドをお伝えします。

経済学系、当然、法学系からのブックガイドはよく見ます。今回は、細川が実際、政策構築等の時に使っている本を何冊かご紹介します。第二弾です。

『ハマータウンの野郎ども』

アマゾンでは;イギリスの中等学校を卒業し、すぐに就職する労働階級の生徒のなかで、「荒れている」「落ちこぼれ」の少年たち=『野郎ども』。彼らのいだく学校・職業観はいかなるものか?学校はどのような進路指導をしているのか?彼らの形づくる反学校の文化―自律性と創造性の点で、たてまえの文化とはっきり一線を画している独自の文化―を生活誌的な記述によって詳細にたどり、現実を鋭く見抜く洞察力をもちながらも、労働階級の文化が既存の社会体制を再生産してしまう逆説的な仕組みに光をあてる。学校教育と労働が複雑に絡み合う結び目を解きほぐす、先駆的な文化批評の試み。

注目すべきは反体制的な文化が、既存の社会体制を再生産するという皮肉な構造です。

『パワー・エリート』


アマゾンでは;企業大富豪、政界幹部、軍上層部。権力エリート層はこの三領域をまたいで形成され、人脈や利害調整などでバランスを保ちつつ、権力・富・威信を集中させている。本書はその様相を詳細にあぶり出し、さらにマス・メディア等を通じて底辺に広がる大衆社会を支配していく構図を分析する。それは、米国社会が理念としていた民主主義が形骸化していることを暴き、全体主義への道を進みつつあると警鐘を鳴らす痛烈な批判へと繋がった。20世紀半ばにセンセーションを巻き起こし、その後の階級論・格差論へと議論が引き継がれていった社会学の古典的名著。

そして、構造として、大衆社会を支配する層とそうではない層に二分化されていきます。

『リッチな人々』

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アマゾンでは;ブルデューから教えをうけた、フランスの著名社会学者夫妻がマンガに登場! ! ! ! !
ピケティ『21世紀の資本』にも共通する、富裕層研究の成果の集大成。アングレーム国際漫画祭で2度の受賞歴がある作家が描いた、世界一わかりやすいブルデュー理論の解説書。リッチってどういうこと? お金持ちって、どうしたらなれる? そもそも、お金持ちになるって、いいこと……?ブルジョア検定
経済資本:お手伝いさんを雇っている?
文化資本:2か国語の外国語が話せる?
社会関係資本:週に2回はディナーへ出かける?
象徴資本:勲章を受け取ったことがある?……

そして、大衆社会の支配層の持つの文化コードについて書かれているものです。いわゆるビックになるということの皮肉さを示しています。

「消費社会の神話と構造」

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アマゾンでは、本書は、フランス現代思想を代表するボードリヤールの代表作で、現代消費社会を鋭く分析した本として高い評価のある本である。家庭電化製品や衣料、車といった各種の商品は、その使用価値だけで用いられるのではなく、社会的権威や幸福感といった他人との差異を示す「記号」として現われる。ここに消費社会の秘密を解く鍵があるという。さらにこうしたモノ=記号を生産されたモノに限定することなく、社会の森羅万象―ファッションから広告、教養や健康への強迫観念、暴力まで―にあてはめて考察することで、現代社会の様々な神話と構造をえぐり出すことに成功している。評判の高かった同書名訳書の〈普及版〉。

そして、それぞれのコードは記号として取り扱われ、差異を引き起こし、神話として構造化されるというボードリヤールの議論につながっていきます。このことを想定すると、現在の地方創生の神話化する仕組みなどを考えてみたくなります。誰が作って、だれが記号として消費したのかなど。

『資本主義リアリズム』

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アマゾンによれば;資本主義の終わりより、世界の終わりを想像するほうがたやすい。ポップカルチャーと社会に鋭い光をあて、ヨーロッパで熱狂的な注目を浴びたイギリスの批評家、マーク・フィッシャーの主著、待望の邦訳刊行。2017年1月に急逝した彼の、「ぼくらの」、言葉とため息、叫びを、未来へ届けるために。

内容としては、再帰的無能感が市場型スターリニズムと反復型お役所主義がたえず、強化されるという話です。ディストピアがなぜ再生産されるかについても議論を進めます。

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という五冊でした。ここで確認したいのは、全ての言説は記号であること。その中で支配と被支配の関係が再生産されていること、特に、被支配側からも現状の再生産を加速化する動き、そして、広報メディアなどを初め、市場型スターリニズムが支配的になっていることです。

政策形成での多様な議論も、それぞれ、記号として作り出され、消費される。それはなぜで、どうしてそうなるのかを、これからも考えていきたいです。(了)




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