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リスク社会における「補完性の原理」のありかた その2

前回で、日本の2000年代以降の地方分権改革のコアとして「補完性の原理」は権力配分論のツールとしてきた、そして、「補完性の原理」を核としてきた分権論は煮詰まってきたことを示しました。

 その原因は、なにかと考えると、行政サービスのあり方として、日本型「補完性の原理」は、「自動販売機型」を前提として、導入されてきたからではないかと考えています。

自動販売機型の行政サービスとは、アメリカの行政学者のケトルが示した概念です。代表作は↓。

 彼の整理では、標準的な手続きで対応するルーチンで構成される公共サービスのことを「自動販売機型」の行政サービスとしています。彼によれば、政府(アメリカ)は、「自動販売機型」の行政サービスを軸として、公共サービスを非政府組織に委託して資金を供給する。そして、。ネットワーク化したサービスや施策の全体を管理し、説明する責任を果たさないとしています。

 この標準的な手続きで対応するルーチンで構成される公共サービスは、機能するのは、大きな変化が少なく、安定したターゲット集団がある場合である、と想定できます。現在、ひろがるリスク社会、不確実性が高い社会にいは向かない、ということになります。

 この変化については、いろいろな論者が登場しますが、公共サービスでは、バソンの整理が代表的です。

1 生産性の向上の必要性
行政府は、市民、民間セクターからも税収をより効率的・効果的に使うことが求められる。
2 市民の期待の高まり
民間サービスの質が高まり、ユーザーの知識も向上していくと、同じように利便性や快適さ、個別対応性の向上が行政サービスに求めるようになる。社会が豊かになればなるほど、サービスに体しても同等の「豊かさ」を求めるようになる。
3 グローバリゼーション
様々な境界を越えたビジネスは、教育・学問領域・労働市場・金融など流動化し、GAFAのような巨大なイノベーション企業によってローカルビジネスは(生存)の危機にさらされる。グローバル化の恩恵を損なうことなく、いかに地域社会に降りかかるリスクを最小化するかについて、行政の施策・事業には大きな責任が伴う。
4 メディア
24時間365日、双方向でに発信を可能にするデジタルメディア環境の中で、行政はいかに正確な情報を市民に提供し、透明性と市民間との信頼性を保つ事が出来るのか。さらにそうしたメディア環境の中でいかに公共サービスへの市民参加・協働を促すことが出来るか
5 人口構成の変化
高齢化や人口減少は世界的規模でのテーマである。高齢者の増加は金銭的な行政資源を圧迫するだけでなく、有能な行政職員の配置を難しくする。その上で組織のあり方をどう考えるのか
6 ショック(これまで想定していた以上の)
パンデミック・津波・テロ・ハリケーン、金融ショック、サイバー攻撃と行政府はかつては想像出来なかった予期せぬ衝動にさらされている。予測不能な事態な事態に素早く、効果的に対応するために、行政は仕事のルールを絶え間なく検討する必要性がある。
7 気候変動やSDGs
地球環境の持続可能性は地球規模であり、この課題を取り組むにあたって行政府は重要な役割を担っている。SDGsにおいて掲げられたグローバルゴールを達成するためのイノベーションは、あらゆるセクターにとって急務になっている。

この中で、「自動販売機型」の行政サービスが有効に機能することは、容易なことではない。つまり、リスク社会そのものが「公共サービス」その者あり方の変化を要請していると言えます。同時に「補完性の原理」はサービス提供のあり方まで含めて議論を再構築することがひつようになります。続きます。(了)


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