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見習いたいと思う利用者さんもいる

私は介護施設で働いている事は何度かお伝えしている。
介護施設なので多種多様な利用者さんがいる。凄く若いと思っていた利用者さんが実はかなりの年齢であると知らされた。当然元気でおおよその事は自分でできる方。
認知症の症状からなのか妄想がひどく現実からかなりかけ離れているような、事情を知らない人が話を聞いたら真に受けそうな事を言ったりする利用者さん、小学校のグループのリーダーみたいな人でやたらと仕切りたがる利用者など様々。
そんな中でとても陽気な利用者さんがいる。
顔を合わせたりすると英語で話しかけてくる。最初この利用者さんは英会話教室か英語の先生でしたか?と介護の人に聞くと違うという。
単にノリで言ってるだけらしかった。
けれど以前は感情の起伏が激しく、笑っていたかと思うと暫くしていきなり泣きだしたりした。
最近は落ち着いているようで笑ってることが多い。
通りかかる利用者さんに『ハロー』『グッバイ』と声をかけている。
以前は食事を持っていくと『サンキューサンキュー』と言われていたがここ最近は『有難うございます』と言うようになった。何か心の変化でもあったのだろうか?

けどこの利用者さんの『ハロー』『サンキュー』と挨拶している声が聞こえてくると何故かこちらも元気になるような気がする。

年寄りと聞くと何かと嫌なイメージしかないかも知れないが中にはこんな人もいて和ませてくれている人たちもいる。本人たちは和ませている気はないだろうが、周りからすると随分と和ませていただいている。

去年の6月とある利用者さんが静かに息を引き取ったと、出勤した時に上司に告げられた。この利用者さんはとても愛嬌があってたまに話もした。餡パンが大好きで持っていくと凄く嬉しい顔をしてくれる。そして美味しそうな顔で食べているのを見るとこちらも嬉しくなってしまう。
その利用者さんが亡くなったと知らされた当日、仕事をしていると上司に呼ばれた。その利用者さんにあってあげて、と。
はい、と返事してその利用者さんの部屋に行く。ベッドの上で静かに横たわっていた。
息はもうしていなかったけど、まだ生きているような気がして涙が出た。
『長い間お疲れ様でした、ゆっくり休んでくださいね』と利用者さんに手を合わせると、ますます涙が出た。
一緒にいた利用者さんも泣いていた。
亡くなった利用者さんの顔をまた見てみると自分の人生をしっかり楽しんで生きたという安らかな顔をしていた。
私もこの利用者さんのように自分なりに充実した人生を送りたいと思った。

この利用者さんが亡くなってもう1年。
果たして充実した日々を送れているだろうか?
そんな事を考えているといつも『ハローハロー』とにこやかに話しかけてくる利用者さんがやってきた。
この利用者さんの顔を見るとついこちらもにっこりしてしまう。
人を笑顔にしてしまうこの利用者さんも見習いたくなった。

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