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『5クール。119日目』

七夕の想いでなど、ひとつもない。
ただ、2023年の今頃に盲腸がんが発覚した。とうとう、1年、生きのびた。がん発覚から、手術するまでには二月弱くらいの時間が経っていた。間に、お盆休みがあったからだ。「万全の体制で臨みたい」、そう、主治医は言っていた。人間には休みが必要だ。それでいい。

今日は、二階の部屋には居られない。いや、居られないわけではない。私は耐えられる。しかし、スマホやパソコンが熱暴走しては困る。また、布団が汗でびっしょり濡れるのは勘弁願いたい。
そんな理由から、エアコンの効いた一階の母親のベッドでゴロゴロしている。はっきりいって寒い。ニュースでは、「老齢の方は暑さを感じにくいので」と、早めにエアコンのスイッチを入れる事を繰り返し訴えている。それは、我が母親にはあてはまらないようだ。
夏になれば「あつい、あつい」、冬になれば「さむい、さむい」と、誰よりも気温に敏感でうるさい。

その、母親のベッドでひとりのがん患者がゴロゴロしている。なぜか、母親のベッドは居心地がいい。安物のベッドだ。これは、おそらく、血縁関係者だけが感じとれるような、ホルモンが寝具にべったりついているのだろうと推測している。安心感があるのだ。「子どもでもあるまいに」と、49歳の私は思っているのだが、本当なのだから仕方がない。

そう、母親はマイナ保険証の端末の使い方を覚えたようだ。しかし、懸念は残る。マイナ保険証に一本化された時に、繰り返し暗証番号を間違えたらどうなるのだろうか。その時、顔認証の機能は生きているのか。もう、代替の保険証はなくなっているのだ。
試しにわざと暗証番号を何度も間違えてみようかと思った事はある。しかし、その実験はがん患者の私の役割ではないような気がして引き下がった。


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