あちらとこちら

あちらの山むこうに女がいた
こちらの山むこうに男がいた

蛇のようにうねる田舎道がこちらとあちらの山を一本の恋路でつないでいた
女はそれがいつ途切れるかわからない、か細い道だと知っていた
だけど、この男はしらない、馬鹿だから

あちらの山むこうには雪がよく降った
こちらの山むこうには風がよく吹いた
この女と男の恋路は吹き荒れた雪に埋もれてその行方は、もう、わからない

でも、どこかべつの慈愛に満ちた恋路が切り拓かれて
女は幸せを抱いて弾むようにスキップをしているはずだ
だけど、この男はしらない、馬鹿だから



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