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ハンカチねずみのお守り

4歳で幼稚園に入園した私は。

今以上に人見知りで、引っ込み思案な子だった。長女ということもあって、兄弟と遊ぶという環境もなく(当時弟は2歳)、近所にも近しい年代の子どももおらず、まさに幼稚園が人生初の家族以外の人間と関係性を築く場となる。

入園式翌日。誰も知らない環境の中にぽ〜んと放り込まれて。どうしていいのかわからないのと、母親と離れて何とも言えぬ寂しさとがこみ上げてきて、泣く。翌日も泣く。翌々日も泣く(笑)おい!いつまで泣いているんだっと当時の私に言ってやりたい。でも、しょうがない。自然と涙が出てくるんですもの。そんなこんなで、1週間くらい泣いていたのではなかろうか。

そんな泣いてばかりの私に、ばら組の担任だったよしこ先生は。ハンカチでねずみを作ってくれて、そっと私に手渡してくれていた。人間、何かしら手元にあるものをギュッと握ると落ち着くものである。そのねずみがいたことで、私の心は安心感を覚え、涙が止まり、少しずつお友達の輪の中に入って遊ぶことができるようになった。「大丈夫」「大丈夫」そうねずみが言ってくれている気がした。

よしこ先生とは、1年間のばら組を共に過ごし、年長になったゆり組でも一緒だった。慣れることに時間を要する私にはとてもありがたいことだった。赤いジャージに身を包み(当時はそれがうちの幼稚園の制服みたいな感じだった)、小柄で色白なよしこ先生と過ごした2年間。私は先生のことが大好きになっていた。

卒園してからは、年賀状のやり取りで互いの近況を報告しあっていた。小学6年生の時に、卒業前にタイムカプセルを埋めるだのなんだので、その時に久しぶりに会った気がするが、残念ながらその時の記憶は朧げだ。それからも、紙一枚のやり取りは続いていたが、数年前に身内の不幸とかも重なり、パタリと止まってしまっていた。

そんな中、先日見知らぬ番号からの着信。若干、警戒気味に電話にでる。

可愛らしい声色。

数秒後に電話の相手が誰なのかわかった瞬間、嬉しくて慌てる。

話を聞くと、母親と数年前にスーパーでばったり遭遇したらしく。その時に私の番号も教えてもらっていたと。ただ、当時はバタバタしておりなかなかかけ出せなかったと。母親が気付いて声をかけたらしいが、何十年も経っているのに、よしこ先生だとわかってグイグイ声をかける母親と(もしかしたら違う人かもしれないのに!笑)、何十年も経っているのに、沢山いる中の生徒の親子の存在を覚えていてくれるよしこ先生に感謝である。

「会いたいなぁと思って」

偶然にも先生が住んでいる所と、私が今働いている職場が近くて。時間がある時に仕事帰りにでも立ち寄ってと。

そんな色々がうまいこと重なって、二十数年ぶりに会える。

何話そうかな。嬉しさのあまり泣いちゃわないようにしないとな。また、泣いてるって思われちゃうからな(笑)そしたら、先生、ハンカチねずみ作ってくれるかな。

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