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音楽制作機材は売ってはいけない、ということ

【金言】ハードウェアの音楽制作機材は絶対に手放してはいけない。絶対にだ。後で必ず後悔する。漫画や本とは違う。

と、Facebookに書いたことに、さらにもうちょっと書きたくなったのでこちらに書きます。
なお、音楽を制作するための機材に何の興味もない人は、おそらく読まない方が良いです。なんのこっちゃ話です。

ちなみに、機材を売ってはいけない、は確か石野卓球が言っていた言葉だったはず、とうろ覚えです。
雑誌は、キーボードマガジンかサンレコか今は亡きGrooveか。
※いや、そんなこと言ってねーよの可能性もあり。

断捨離ブーム

一時期、断捨離ブームが巷を席巻しました。
2000年代の終わりですね。
それで私もでかさばる(でかくてかさばる)ハードウェア機材、シンセ、サンプラー、リズムマシンを2009年くらいに結構手放したことがありました。
ソフトウェアシンセが充実してきたし、ミニマルな環境でもういいよね、ハードウェアは必要最小限がトレンドでしょ、とか思って。
ちょうど職場も変わるタイミングでした。

今思い出せる限りのその時に手放した機材は以下の通り。

  • KORG Wavestation A/D:KorgでソフトシンセプラグインでWavestationあるよね〜

  • AKAI S3000XL 32MB:AKAIの名機。でもバックライトも暗くなってきたし、サンプラーはもうReasonにもあるからいいでしょ。

  • Roland SP-303:パッドもあるんだけど、PC DAWのサンプラープラグインでもう十分じゃない?コンパクトフラッシュカードの容量が許す限り長時間サンプリングできるお化け機能がついていた。

  • Yamaha TX-81Z:いやなんかブーンてノイズが鳴るし、4オペだし、FMもプラグインシンセでOKじゃない?

  • KORG Electribe-S mkⅡ:サンプラー持ちすぎ。楽しいけど、デスクトップで場所を食うし、これじゃなくてもね

  • Roland TR-505:ダイヤルが微妙でBPMが合わせづらいし、単独での音がショボいので出番がない。808とえらい違いに愕然とした。

  • Moog Rogue:やたらにでかくて重くて、アナログシンセ特有のピッチが安定するまで20分かかるし、MIDIも受けられない。鍵盤部分もあってとにかくかさばる。パラメータも少ない。

  • Zoom ST-224:楽しい機能満載だけど、サンプリング時間が短いし、なんでこんなにサンプラーあるんだろ?処分処分。

  • Atari 1040STE+Notator Logic:馴染んでいたけど、いつ壊れるかわからないし、PCはMacbookがあるし、CRTディスプレイは奥行きデカすぎ。

※コメントは当時の心理描写です。

機材を手放す

レッツダウンサイジング!と意気込んで、今は亡きアキバの中古楽器買取り屋(ソフマップ何号館の5階)に持ち込みました。
買取り金額はデジタル機材ばかりなので、当時はデジタルが軽んじられていた風潮もあってビックリするほど安かった記憶があります。全部で5万円ちょっとくらい。
あまりにも安いので一瞬売るのやめようかな、とチラと思ったのですが、またこれらを持って帰るしんどさが先に立ってしまって、ソイヤ!と手放した。
RogueだけはFiveGに持っていって買った時とほぼ同じ値段でドナドナされました。

手元に残ったのは、

  • シンセモジュール Roland SC88Pro、Korg X5DR、Ensoniq SQ-32R

  • エフェクター Boss SE-70

  • キーボード Korg Trinity Pro

  • リズムマシン Korg ElectribeA mkⅡとRmkⅡ

  • モバイルシンセ Yamaha QY70

  • ミキサー Mackie 32ch

やあ、スッキリしたぞ、なんてニコニコしていました。
その時は。

※もしタイムマシンがあったら飛んでいって全力で止めに行くでしょう

不具合発生

そうしたら数年かけていろいろな不具合が発生してきました。

  • ソフトウェアシンセはOSにあわせてアップデート(有料)しなきゃならない

  • 下手するとソフトウェアシンセメーカーの体力が尽きてアップデートしないものも出てくる

  • PCが新しく替わってチップが変わると動かないものが出てくる(32bitのみとか対応していないとか)

  • 音質はいいけれど、なんか音が「細く」なったような気がする。PCのDACに生殺与奪がかかってくる。デジタルもアナログもシンセはその出音の機構までを含めてシンセってこと。

なんだなんだ誰のせいだ?
断捨離ブームか?
資本主義か?

特に音については明らかで、DAWのプラグインで出てくる音とハードウェアの出音がまるで違うことに気づきました。
デジタルの中で処理するから音質はいいのだけど、汚しがないので音にパンチがない。
そう、音には「汚し」が必要だっていうのは、プラモデルにウェザリングが必要なのと同じくらいの要素です。
最近はわざわざ音に汚しをつけるエフェクトプラグインが出てきています。でも、なんというかリアルの焚火とメタバース内の焚火くらいの違いがある感じ(?)。
焚いてるけど肉焼けない、みたいな(?)

オラなんてことしちまっただー

と気づくまでに10年くらいかかりました。

買い直し

結局、もう一回中古で買い直したりニューバージョンを買ったのは以下です。

買い直したもの

  • Yamaha TX-81Z:中古で出ていたのをゲット。ノイズは乗ってるけどこいつの4OPはやっぱり貴重。

  • Zoom ST-224:中古でゲット。エフェクターの変態加減が他になかった。スマートメディアもゲット。最近、スマメ用のリーダーもゲット。

後継機購入

  • Roland SP-404SX:パッド付きが欲しいな、と思っていたら投げ売り状態になっている隙を突いた。lo-fiヒップホップ流行りの波で復活。

  • KORG Wavestate:Wavestationの後継。Wavestationのプラグインも持っていて悩んだがやっぱりハードがほしかった。

代替機購入

  • Doepfer Dark Energy:Rogueの代わりになるベースシンセが欲しくてMS-404と思ったら絶版で、後継のこれが近所の楽器屋に中古で出ていた。

※コメントは買い直した当時です。

S3000XLとElectribeのサンプラー、TR505以外はほぼ買い直してしまいました。

買い増し

そして、さらに勢いでハードの買い増しが続き、2010年前後以降はむしろ増えていくことになります。
怖いので見ないようにしてきましたが、整理をするためにメモ

  • Elektron MACHINEDRUM - SPS-1 mkII:再就職後の初めてのボーナスで買った。SID音源が復刻されて入っている。

  • Symbolic Sound Kyma Pacarana:リーマンショックで1ドル70円になったタイミングで投資のように購入&輸入。今は絶対買えない。

  • Waldorf Blofeld desktop black:憧れていたPPG Wave、Qの音が入っている。

  • Korg MS-20 mini:マイファーストシンセの復刻版。発売と同時にゲット。迷わずゲット。

  • Arturia Micro Brute:リードを作れるセミパッチのアナログシンセを追加。

  • Nord MicroModular:昔の憧れを中古で見かけてしまって保護した保護猫系。WindowsでもMacでも現在もエディタソフトが動く。

  • Korg Volcaシリーズ(Beats, Bass, Kick, Sample(OK Go Edition), Drum, FM, Modular):つまりNubass, Keys, Mix以外の全部

  • Korg NTS-1:プログラムができると聞いて→やっていない

  • Teenage engineeringのPOシリーズ(arcade, office, tonic, k.o.):2016年にNYのMOMAで円高でarcade, officeを買ったのを皮切りに変わり種を追加。

  • IK Multimedia UNO Synth, UNO Drum:この値段でオールアナログ、しかもオールデジタルのプラグインメーカーからなぜ?の異分子。Synthを買ったら3年後にDrumも揃えたくなった。

  • Teenage engineering OP-Z:海外Youtuberにモロ影響受けてなんでもできそうに思えた。操作性が独特過ぎ。

  • Bastle instruments Kastle Synth, Kastle Drum:小ささにやられてSynthを買ったら、小さすぎて子供になくされた。あちこち探したが見つからない。その後にDrumと合わせて買い直した。

  • Arturia MicroFreak:コロナ禍期間中、海外Youtuberにまんまとやられた。デジタルだけどやられて良かった逸品。

  • Roland Boutique JD-08:憧れていたJD-800の音が出る、というので。

  • SonicWare Livenシリーズ(8bit warps, XFM):新興の日本メーカーから発売されたというのでグッときた。8bitの音がほしかった、からのFM音源追加。

  • Behringer Neutron:セミモジュラーシンセ入門。なぜこんなに安いのか(当時2万円代)、買わない選択はない逸品。

  • Behringer Crave:MoogのMother-32と迷って同じ音と操作と聞いてゲット。結局、後でMother-32を買った。。。持ち出し用?

  • Dave Smith Instruments Mopho:昔、Evolverが欲しくて迷ってはやめを繰り返した。2022年のDave Smithの訃報を聞いて発作的にこの中古をゲット。

  • Polyend Polyend Tracker:MODはPCであるのであまり必要性はなかったが、MOD文化を応援するなら買わねばと使命感にかられて中古をゲット。行ったことのあるポーランドなのも親近感。

  • Modal Electronics Skulpt Synth:Kickstarter発でどんどん手に入りにくくなる、こいつは保護しなければと思った保護猫系

  • Moog 3兄弟シリーズ(Mother32, DFAM, Subharmonicon):さらにアナログセミモジュラー沼。円安で新価格になる前に。久々のでかい買い物。

  • Elektron model cycles, samples:屋外でパフォーマンスするTwitterに影響をモロ受け。そして両方値上げ前に揃えた。

  • Reon DriftboxS:こいつも保護しなければと思った保護猫系。

  • Behringer TD-3MO, RD-6:303クローンと606クローンをほんのできごころで揃えてしまった。

  • Arturia Beat Step Pro:アナログもデジタルも集中制御できるもの、しかもPCレスで、と思った。

  • Zoom MS70-CDR:伸びの良いエフェクトがほしかった。

多すぎて、もはや自宅と職場に分けて置いています。
全部を展開できていないので自宅の拡張を計画するレベル。

果たして何をしているのだろう?

機材ばっかり買ってあんた何してんねん、という声は重々承知です。
なんですか?レンタル屋でも始めるんですか?
それともスタジオでも作るの?
ってなもんで、もはやコレクターの域です。
特に上のリストはほぼ時系列での購入なんですが、OP-Zから後はこの1年半くらいで買ったもので、コロナ禍の自粛ムードの3年のストレスの反動と円安の波の前にゲッチューしようというのが如実に表れた結果です。

でも、本当は音楽って機材でどうこうするもんじゃないんです。

こんだけ買っといて何言うとんじゃなのですが、自分でも一番曲を作っていたのは機材が2〜3個くらいの学生時代から社会人になりたての頃でした。

  • Roland JV-30

  • Roland MC-500

  • SonyのエフェクターHR-MP5

という本当にベーシックな機材でいろいろ作っていました。
本当はKorg M1欲しいとかAkaiサンプラーが欲しいと思いながらも高価で手が出なくて工夫をしていました。5万円でCasioのFZ-1GXを手に入れた時はすごい自由を手に入れた気分でした。(このFZ-1は海外留学に行く際に後輩にあげてしまいました)
それは本当によくわかっているのですが、機材というのは集め始めると歯止めが効かなくなってしまうのが怖いところです。
特にここ10年くらいは技術革新もあるのでしょう。この手頃な値段であの性能が手に入るのか!と思うとついつい買ってしまったわけです。
これを典型的なオッサンホイホイと言います。

大事なのは歌心と音楽を創る時間

これは社会人になった時、先輩が言っていた言葉です。
何かテクニカルなコツを期待して「いい音楽を作るにはどうしたらいいですか?」と質問したのですが、こんな答えが返ってきて拍子抜けしたのを覚えています。
当時は若造でわかりませんでしたが、今はすごいわかる気がします。
自分に歌心があるかはわかりませんが、

  • 音を創るために機材に触っている時の至福

  • 脳のゴミがシュワシュワと溶けていくような感覚

はストレスで痛めつけられてきた自分にとって貴重なものです。

音楽っていいな 音っていいな

アラフィフを迎えてそう思えるようになりました。
コロナ禍のストレスに痛めつけられた心身にとって最後に見えた希望の光でした。
音楽の何がいいって、

最先端の技術やテクノロジーや理論を使っても使わなくても良くて、それぞれの方法で表現ができる
ギター一本の弾き語りでもピアノでもハードシンセを積み上げて作ってもソフトウェアだけでも歌だけでも良い
言葉さえも関係ない

みんな違ってみんないい

こんな多様な評価軸を持ったものがあるでしょうか。
機材の爆買いの果てに、回り回ってそんなことを思っているのでした。

そして、年齢を重ねると、どんどんいろいろなことに時間を取られて音楽を創る時間がなくなっていきます
仕事のこと、家族のこと、責任のあること
時間を取られることに囲まれています。
意志を強く持たないと流されて時間がなくなっていきます。

正直、あとどれくらいまともに音をつくって生きていられるんだろう?
これらの買い集めた機材達を存分に使えるんだろう?
いつ病気になるか事故に遭うかわかったもんじゃない。

と我に返って、ようやく最近、機材の乱れ買いにブレーキがかかったところです。
そう、集めてちょこっと触るだけじゃなくて、触り倒してやらないといけない。
人間に残された時間は限られています。

じゃあ、機材を減らす?

いやいや、もう減らしません。
ここからはすでにある機材を触り倒すことに時間を費やしたいので持ち続けます。

この3月から生楽器のプレイヤーと組んで即興Live Electronicsと称したライブを始めました。
初回はPureDataとDriftboxSとエフェクターを使ったものでした。
毎回、機材のどれかを使ったパフォーマンスをする。そういう目的でもってやるライブがあってもいいな、というコンセプトです。

なので、ハードの機材はもう手放しません。
どうせ、また欲しくなるので。

さて、生きますか。


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