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第11回<番外編1>障がい者が働く姿を紹介した2冊の本

今回は少し視点を変えて、病気や治療についてではなく、障がい者の「就労」について書かれた本を2冊紹介したいと思う。ここ3年くらいの間に出版された本なので、登場する事例は新しく、参考にできる内容だと思う。

●『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』

 この本の著者である一般財団法人たんぽぽの家は、50年近く続く障がい者の音楽イベント「わたぼうし音楽祭」の主催者であり、障がい者の社会活動を支援する団体として有名である。
 その団体が、コロナ禍の2020年11月から2021年8月にかけて、障がい者が就労する165件の事例調査と分析を実施し、その中から16の事業所を選んで取材した結果を報告している。
 結果から導き出された8つの視点がある。
「今ある事業を発展させる」
「社会の声に応える」
「異業種に挑戦する」
「発信とアーカイブする」
「地域と連携する」
「アートとケアの視点を持つ」
「オンラインとデジタル技術を活用する」
「海外の事例を知る」
 いずれも直ぐに活用したい視点ばかりだ。特に、オンラインを使った事例などはコロナ禍だからこそ活用したい。
 このように様々な工夫で先進的に仕事を作っている事例が紹介されている本だが、書店では流通されず直販のみで購入できる。後述の問い合わせ先を参考にしてほしい。

●『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。――ソーシャルファームという希望』

 ソーシャルファームとは、障がい者雇用の場に「どうしたら利益を上げられるか?」というビジネスの視点を取り入れ、一般企業と競争できる事業を展開する取り組みのことをいう。
 具体的に4つの事例を取り上げ、かなり深くまで取材した内容である。
・障がい者たちが立ち上げた予約の取れない人気のフレンチレストラン
・年商2億円の奇跡のクッキー製造販売所
・障がい者の芸術作品を発掘し国内から世界へ活動が広がっていった美術館
・障がい者がブドウを育てワインを醸造するワイナリー
 そのどれもに感動のドラマがあり、読みごたえのある内容だ。
 障がい者の就労にビジネスの視点を導入したとしても、事業の発展ばかりに考えを奪われると生産性の低い弱者が排除される。
 その矛盾の先にある福祉の変換点という未来を見据えた内容に、胸を熱くさせられる。

●工賃という名のもとの低賃金の給料と処遇

 どちらの本も障がい者の就労における低賃金と処遇を問題視している。
それは、高次脳機能障害や失語症など脳の病気の後遺症に悩む人にも深くかかわる問題だ。
 障がい者への給料は「工賃」という名目で支払われることが多い。法律上は明確な定義がなく、労力に対する手間賃として支給される。
 よって、作業所と呼ばれる施設では収益が少なく工賃も極めて低い。
 このような労働意欲がそがれる現状を打破しようと、2冊の本ではさまざまな試みを紹介している。
 また、「働かされている」から、人のために「働いている」への意識変革、さらには親亡き後の自立した生活を視座に置いた取り組みも、この2冊の本から学んでほしい。

■書籍情報
一般財団法人たんぽぽの家編著『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』
2021年9月30日 一般財団法人たんぽぽの家刊 定価1,100円⑩
※問い合わせ先:〒630-8044奈良市六条西3-25-4 一般財団法人たんぽぽの家 TEL.0742-43-7055 FAX.0742-49-5501 E-mail:goodjobstore@popo.or.jp

姫路まさのり著『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。――ソーシャルファームという希望』
2020年3月15日 株式会社新潮社刊 定価1,500円⑩

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