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弦の張替え

 弦も消耗品。チェンバロの弦は、楽器の弦の中でも寿命が長い方だと思いますが、弦を張るためのピンに掛ける輪の結び目が緩んでくることがあります。緩むと調弦が不安定になり、ピッチが短時間で下がるようになります。

写真1 : 緩んでいる弦

 写真1のように、緩むと結び目近くに「弦の波打ち」が生じてきます。この緩みを見つけたら、すぐに張り替えるべきです。しかし、スケジュールの都合等から、すぐには張替える作業時間が取れないのが常で、もういよいよ張替えなければ弾けない、という段階まで作業に取りかかれないことが多いです。そして、調弦が1分持たなくなり、慌てて張り替えることになります。徐々に不安定になる、とは言え、やや不安定であるような期間は、私の楽器の場合だと猶予期間のように数ヶ月は持ち、ある日突然「いよいよ無理」なのが分かるほどに、ピッチが下がるようになります。本当に時間が取れない日(仕事が朝から晩まで詰まっていて楽器が稼働している日)にそうならないように、見つけたらすぐに張り替えるべきなのですが…。
 そうして、先日「いよいよ無理」となり、弦を張り替えました。状態が良ければ張り替えることはないので、そう頻繁に弦を張り替えることはありません。年平均にすると1年に1度あるかないか、かしら…。演奏現場には技術者立会いが必ずしもあるわけではありませんので、自宅の楽器だけでなく演奏現場の楽器の弦の張替えの機会を持ってしまうこともありますが、張り替える機会が訪れる年には数本張り替える機会があります。しかし、張り替えが皆無の年もあります。今回は2年ぶりのように記憶しています。
 もう25年ほど前の人生初の弦張りは奇跡的にうまく出来たのですが、張替えの機会の度に難しさが増していく不思議な作業(☆個人の感想です)。
 作業に取り掛かって「あー、技術者さんを呼ぼうか…」と、今回も心底思いました。しかし「いつ来てもらうの?」というスケジュール上の問題があり、自分で作業するしかない! 頑張るしかない!  苦手な作業ではありますが、毎回、行うことで解ることも多く、作業メモは必ず増えます。器用な方であれば難なく出来るような作業ではありますが、たとえば、いつだったか弦で指を突いてしまった経験を元に「必ず手袋か軍手をすること」と学びました。スペア弦のケースに、作業用手袋を一緒に入れてあります。
 弦の張替えは、大した作業ではないはずですが、わざわざこう日記に記しておくくらい、私には大事作業で、無事に完了して やれやれ…。

写真2 : 緩んで取り外した弦。波打っています。


写真3:取り替える新しい弦。波打ちはありません。

 そして、無事作業が完了して、一息ついたところで行うことは、スペア弦補充のための弦の注文です。何せ弦張り作業の機会は突然訪れますから。



読了ありがとうございます。この記事はチェンバリスト中田聖子が綴っています。

関西を拠点に演奏活動を行なっているチェンバリストhttps://www.klavi.com