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8人に1人がかかる慢性腎臓病ー耳寄り健康講座⑧

今月のアドバイザー
常磐病院 新村浩明 院長 

【慢性腎臓病とは?】

 常磐病院院長の新村です。今回は「慢性腎臓病」についてご説明いたします。

 慢性腎臓病は、腎臓の障害や腎機能低下が3カ月以上続く状態を言います。日本では、全国で1330万人、20歳以上の8人に1人が慢性腎臓病とされています。また、80代は2人に1人と、高齢になるに連れて罹患割合が高くなっています。

 【慢性腎臓病の原因】

 慢性腎臓病は、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・肥満などの生活習慣や、遺伝なども危険因子となる場合があります。これらに該当する方は、定期的に血液検査や尿検査、健康診断を受けることをおすすめします。

 【慢性腎臓病の症状】

 慢性腎臓病の初期症状は、多くの場合、ほとんどありません。症状が出ても顔・手・足などの浮腫(むくみ)や、夜間の尿の回数が増えるなど軽い症状です。ただ、蛋白尿が多い場合は、強いむくみを生じることもあります。また、中等度以上になると、貧血や慢性的な疲労感、手足がつるなど筋肉の症状も現れます。さらに病状が進行すると、むくみが強く出たり、吐き気や食欲低下、頭痛などの尿毒症による症状、さらには心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる心血管疾患の危険性が出てきます。

 【慢性腎臓病の治療】

 慢性腎臓病は治癒がとても難しい病気です。ただ、進行を遅らせることは可能なため、お薬や食事療法などによって症状をコントロールしていきます。慢性腎臓病の治療は、慢性腎臓病の原因となっている糖尿病・高血圧・慢性腎炎等の病気にしっかりと対処することが重要となります。また、生活習慣の見直しにより喫煙・肥満といった危険因子を取り除き、塩分やタンパク質などの制限やカロリーコントロールなどの食事療法をおこないます。併せて、運動療法なども取り入れながら、慢性腎臓病の進行を抑えていきます。

 【慢性腎臓病が進行すると】

 慢性腎臓病が進行してしまうと腎臓が十分に機能しなくなる「末期腎不全」となります。その場合、腎臓の機能を補う「血液透析」、「腹膜透析」、「腎移植」といった腎代替療法が必要となります。

 血液透析……日本で最も普及している腎代替療法です。血液を体外の機械に流し、特殊なフィルターで濾過することで血液中の老廃物や不要な水分を除去します。バスキュラーアクセスと呼ばれる血液透析に必要な血管をつくり、そこから血液を機械に通し老廃物を濾過します。

 腹膜透析……腹部の臓器を支えている「腹膜」の中に透析液を注ぎ、血液中の老廃物や不要な水分を透析液に引き込み、そのまま透析液を体外に排出する治療方法です。

 腎移植…「ドナー(臓器提供者)」から左右どちらかの腎臓の提供を受け、手術で移植し、腎機能を回復させる治療法です。腎代替療法の中で、腎不全を根治させる唯一の治療法になります。

 【慢性腎臓病の予防】

 慢性腎臓病は、肥満・糖尿病・高血圧・喫煙・飲酒などの生活習慣と関連性が高いとされており、食事管理や適度な運動、禁煙などを心がけることで予防効果が高まります。

 前述の通り、慢性腎臓病は初期症状がほとんどないため、早めに見つけるためには定期的な血液検査・尿検査が重要です。定期的に健康診断を受けるよう心がけましょう。

しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。


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