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東日本の「原発ゼロ」は13周年を迎えられるのか|【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中50

 冒頭、4月17日夜間に発生した豊後水道を震源とする地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 震源地に最も近い原発としては伊方3号(四国電力)が稼働中でしたが、シビアアクシデントに至る事もなく、不幸中の幸いでした。

 本題です。

 フクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)核災害の発生から、13年が経過しました。

 発災前の2010年度まで、この国の発電量の約4分の1は原子力(核発電)によるものでしたが、発災後は激減しました(「まとめ1」参照)。


 フクイチ核災害で、核施設のリスクが顕在化した際の「取り返しのつかなさ」が明らかになったにも関わらず、国会・政府は、核発電を「利活用しない」のではなく、「基準を厳格化して利活用を継続する」方法を選択しました。

 具体的には関係法令の改正・立法により、原子力規制委員会(注1)の定めた新規制基準(注2)への適合性が認められた原子炉のみ稼働(営業運転)が可能とされました。

 2024年4月半ば時点で、国内では3事業者・6サイト・12プラントが新規制基準への適合性が認められています(「まとめ2」参照)。


 これらの12プラントは何れも西日本に立地しています。本連載の第15回・26回(注3)でお伝えした「東日本の原発ゼロ」は継続しており、2024年5月5日で12周年を迎えました(注4)。

 人口規模・経済規模で世界最大の都市部である首都圏を含む東日本が12年間「原発ゼロ」です。論より証拠、と言います。「原発ゼロ」で、電力供給に支障が生じないことは現実に証明されています。全国での「原発ゼロ」が実現できていないのは残念ですが、東日本の原発ゼロが12周年を迎えたのは喜ぶべき事です。

 一方で、この喜ぶべき記録の継続が危うい状況にもなっています。

 現在「営業運転の実績が10年以上途絶えている」にも関わらず、7事業者(注5)が、所謂「再稼働」を目指して、保有するプラントの全て又は一部について規制委員会へ基準適合性審査を申請しています。

 審査が続けられていたプラントの内、2プラントは今年度中に営業運転が再開される可能性が高まりつつあります(「まとめ2」参照。尚、起動しても、即、営業運転開始ではありません)。特に、女川2号(東北電力)で営業運転が再開されれば、「東日本の原発ゼロ」が終わってしまいます。

 原発再稼働に関して意思を示そうとすれば、有権者としては「選挙」が最も有力な選択肢だと思いますが、自治体での選挙を含めても選挙は通常は2~3年に1回ですし、複数の政策・争点が混ざります。

 又、個別の商用発電用原子炉の再稼働に特化した住民投票・国民投票についても、政府・自治体に法的な実施義務はありません。

 では「原発の利活用に反対」「再稼働反対」の意思を示す手段として、選挙以外に何があるでしょう。

 私は、営業運転再開の時期が差し迫っていると思われる状況を踏まえて「東北電力・中国電力と契約している皆様」へ、「別の電力事業者に切り替える」ことを呼びかけます。

 私自身は、電力自由化で東電以外の事業者を選べるようになって直ぐに、東電から別の事業者に切り替えています。東電とは今後、絶対に契約しません。

 本稿をお読みで主旨に賛同して下さる方は、是非「消費者」として、「電気の小売業としての原子力事業者を拒否」する意思を示して下さるようお願いします。

 有権者は消費者でもあります。選挙やパブリックコメント以外でも意思表示は出来ます。「消費者としての支払いや契約は、有権者としての投票に等しい」でしょう。

 契約先を切り替えれば、東北電力・中国電力の収益を継続的に減少させられます。特に、自営業など何らかの経営に携わっている方であれば「継続的に収益が減少し、その顧客が二度と戻ってこない」ことの重みと痛みがお分かりだと思います。

 選挙では「組織」や「得票数」が問題になりますが、消費者としての解約や契約変更なら、1人(或いは1世帯)でも、電力事業者の収益に影響を与えられます。選挙の時期と関係なく自らの都合で取り組めますし、月額支払いですから「毎月の意思表示」にもなります。

 消費者としての行動は、有権者としての行動よりも、自由度が高く、効果が大きいと言えます。

 来年5月に「東日本の原発ゼロ」13周年を迎えたいと考えるのは、日本国内で私だけでしょうか。

 注1 原子力規制委員会設置法を根拠とし、2012年9月に発足。委員長と4人の委員は、内閣総理大臣が国会の同意を得て任命する。

 注2 実用発電用原子炉に関する新規制基準は2013年7月に施行。施行後も適宜、改定されている。

 注3 第15回/


第26回/

 注4 北海道電力・東北電力・東京電力の管内は電源周波数50㌹であり、それより西側は同60㌹。周波数変換設備付きの連携線で電力の融通は可能だが、東西の連携線の容量は210万㌔㍗の為、西日本の原発で発電された電力が東日本管内に大量に供給されることはほぼ有り得ない。

 東日本管内では、2012年5月5日に泊3号(北海道電力)が停止して以降、商用発電用原子炉は営業運転されていない。

 注5 北海道・東北・東京・中部・北陸・中国の各電力会社と、日本原子力発電


春橋哲史 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。
*福島第一原発等の情報は春橋さんのブログ


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