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【政経東北】投票で「文句を言う権利」を得よう|巻頭言2024.01

 大阪万博への税金投入問題、自民党派閥による政治資金問題、安倍派のキックバック問題、岸田文雄首相が政調会長時代に旧統一教会の友好団体トップと面会していた問題――最近の政治の話題は辟易することだらけだ。

 そうした中、ラジオである女性の存在を知った。福田暁子さん(46)。都内の自立支援協議会で活動する福田さんは盲ろう者で難病も抱えるが、人工呼吸器をつけながら電動車イスで自立生活を送る。話すことに支障はないが、見聞きが難しいため、普段のコミュニケーションは触手話で行っている。

 そんな福田さんが注力しているのが「障がい者の投票する権利」を行使するための環境整備だ。これまで障がい者向けの模擬投票を3回行っている。

 福田さんは毎回欠かさず選挙に行く。盲ろう者が候補者の情報を得る手段に点字の選挙公報があるが、手元に届くのは公示から1週間かかる。そこで福田さんは街頭演説を聞きに行ったり、事務所に遊説日程を問い合わせ、候補者本人と直接会ってやりとりすることもある。本誌が昨年11月の県議選で企画した「選挙漫遊」(詳細は12月号とホームページ参照)を盲ろう者が実践しているのだから凄い。

 福田さんをそこまで駆り立てるのは何か。彼女はこう述べる。「私が選挙に行くモチベーションはシンプル。文句を言う権利を得たいからです。私は『こうあるべきだ』って発信する際に『投票したので言わせてもらいますよ』って言いたいんです。投票もせずに文句だけ言う人は腹が立ちます」。

 ネットやSNSでは冒頭に挙げた問題への辛辣な意見が複数散見される。それらは的を射ているものも多いが、書き込んだ人が「毎回欠かさず選挙に行っている人」かどうかは分からない。福田さんに言わせれば「当然、文句を言う権利を持っているから書き込んでいるんですよね」ということになる。

 冒頭のような問題が起こる背景には、国民の政治に対する無関心があることは否めないだろう。投票率が高ければ、政府・与党に「下手なことをすれば厳しい審判が下される」と緊張感が生まれる。しかし、国政も地方も投票率が低い現状では、デタラメな政治家、政党、派閥の跋扈を許してしまう。

 障がいを持つ人がこれほどの情熱を持って選挙に行っているのに、棄権する人が世の中に多いのは情けない。「自分が投票したところで何も変わらない」ではなく、まずは投票する。そして、問題が起きたら文句を言う。それが政治の流れを変える第一歩になることを、有権者には気付いてほしい。(佐藤仁)


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