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【横田一】中央から見たフクシマ84-「令和ヒトラー」のような菅首相

 「原発ゼロ社会実現」を目指して全国講演行脚を続ける小泉純一郎元首相が11月3日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定プロセスの第一段階「文献調査」に応募した北海道寿都町で講演した。タイトルは「日本が進むべき道」で、原発推進政策継承の菅政権(首相)に釘を刺すような発言も小泉氏から飛び出したのだ。

 「(最終処分場の建設が進められている)フィンランドのオンカロは火山や地震や断層がない。岩盤に囲まれた島の地下400㍍に2㌔四方の部屋があり、核のごみを約10万年保管する。しかし日本で400㍍も掘ったら温泉が出てくる。日本は原発が50基以上あり、どこに(最終処分場を)造ればいいのか。処分場のあてが無い以上、原発は動かすべきではない。よく政府は『再稼働を許しているな』と呆れている。できるだけ早く原発ゼロの方向にかじを切らなければいけないことを言い続けていきたい」

 地震大国・日本には「核のごみの最終処分場の適地はない」と断言、核のごみを増やす原発再稼働はすべきではないとして、こう続けた。

 「(日本は)石炭火力をやめようとしている。同時に原発もやめなければいけない。『両方は無理だ』という人もいるが、両方やらなければいけない」

 たしかに菅首相は、所信表明演説で「2050年に温室効果ガス排出ゼロ」と表明するなど「脱炭素(脱石炭火力)」には熱心だが、「脱原発」には不熱心。安倍政権の原発推進政策を継承し、初の地方視察で福島を訪れた時も脱原発について一言も語ることはなかった(先月号参照)。

 そこで講演終了後、小泉氏を直撃、「菅総理について一言、原発推進政策を打ち出していますが」と声をかけると、「原発ゼロにした方がいいのだよ」とズバリ指摘。「今のところ、その兆候はない」と続けると、決断すればいいというような仕草をした上で会場を後にした。

 小泉元首相と同じような視点で、「トイレなきマンション」とも揶揄される原発を問題視していたのが日本学術会議だった。このことを任命拒否と関連づけたのが、元経産官僚の古賀茂明氏。「誰も語らない日本学術会議に政府が介入する理由。それは『核ゴミ処理』問題だ!」と銘打った10月27日付の週プレNEWSで、日本学術会議が2012年に提言を出したことを紹介。その内容は、「それだけの長期(10万年)にわたる地層の安定を確認するには、今の科学技術では限界がある」と疑問を呈し、代替案として「50年間の地上での暫定保管」を示すもので、これを受けて古賀氏は次のような見方を披露したのだ。

 「50年間の暫定保管の間にも核ゴミは増え続ける。そこで会議は核ゴミの総量の上限規制をすべきとまで提言した」「2回にわたる提言が国民世論を動かし、地層処分に反対する声が大きくなれば、核ゴミの処分の見通しは立たなくなる。核ゴミの上限規制をすべきという提言なども原発再稼働の障害になり、政府のエネルギー政策に重大な影響を与えかねない。だからこそ、菅政権は候補者の任命拒否という違法行為をしてまで、人事権で学術会議をコントロールしようとしたのだろう」

 地震大国・日本で原発を稼働し、核のごみを地層処分するのは狂気の沙汰としか言いようがないが、そんな亡国の政策をゴリ押しするために菅首相は任命拒否をした――こう捉えると一連の動きがすっきりと理解できる。「令和ヒトラー」のような菅首相の暴走を止めることは、脱原発を望む福島県民を含む国民全体にとって緊急課題に違いないのだ。

フリージャーナリスト 横田一
1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた「漂流者たちの楽園」で1990年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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