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2年に1度は乳がん検診を!ー耳寄り健康講座④

今月のアドバイザー
常磐病院 乳腺甲状腺外科 尾崎章彦 医師

 読者のみなさん、はじめまして。常磐病院乳腺甲状腺外科の尾崎章彦と申します。今回は、「乳がん」についてご説明いたします。「乳がん」の罹患率の約99%が女性ですが、男性にも発症する病気です。男性読者の方も、ご自身のため、また奥様やパートナーの方のために、ぜひ一緒に勉強していきましょう。

 現在の日本において、乳がんは最も発症数の多い「女性のがん」です。1年間に乳がんを発症する女性は9万1605人(2017年)、実に、女性の約10人に1人が一生のうち乳がんを発症すると言われています。今回の記事を通してみなさんに最も伝えたいことは、40歳以上の女性は最低2年に1度は検診に行っていただきたいということです。というのも、乳がんは数あるがんのなかで、検診の効果が確立されている数少ないがんの一つだからです。検診によって早い段階で病気を発見することができれば、多くのケースにおいて、体に負担が少ない治療で病気の治癒を目指すことができます。その意味で定期的な検診の受診は非常に重要です。ちなみに、全国の乳がん検診の受診率(40-69歳)は50%未満にとどまっています。より多くの方に検診を受けていただきたいと考えています。

 同様に強調したいのが、乳がんに関わる症状を自覚した場合、できるだけ早く医療機関を受診していただきたいということです。なぜならば、一般に検診で指摘される乳がんよりも症状をきっかけとして見つかる乳がんの方がより進行していることが多いからです。乳がんの代表的な症状は胸のしこりや乳首からの赤色の分泌物などです。もちろんその全てが乳がんに伴うものというわけではありません。ただ、このような症状が現れた場合、医療機関を一度受診して、深刻な病気がないかドクターと確認しましょう。

 次に、数年来世間を賑わしている新型コロナウイルスの流行が、乳がんの診療に与える影響について考えてみます。私が最も心配しているのは、「受診控え」です。新型コロナウイルスへの感染を恐れるあまり、定期的な検診受診を先延ばしにしたり、症状を自覚しているにもかかわらず医療機関への受診を控えるということが、現実に起きています。受診控えが長く続いたことで、進行した状態で乳がんが指摘されたような方々が、実際にいらっしゃいます。

 このように私が訴えるのには以前関わった調査の経験も関係しています。私は、以前いわき市の北に位置する南相馬市などにおいて、東日本大震災と福島第一原発事故が現地の乳がん診療に与えた影響について調査を行いました。

 すると、震災前に、症状自覚後1年以上初回の医療機関受診を遅らせる乳がん患者さんの割合は4・1%に過ぎませんでしたが、震災後は18・6%に及んでいました。震災後の環境変化で知らず知らずのうちに自身の健康や医療機関受診の重要性が下がってしまった可能性があります。

 私は、「目に見えないものへの恐怖」という意味で、新型コロナウイルスの流行と放射能には類似点があると考えています。不安な症状があれば、まず電話でも構いませんので、医療機関とコンタクトをとってみましょう。

 もちろん当科では飛び入りの患者さんの受診も原則受け付けています。気軽にご来院ください。

おざき・あきひこ 1985年生まれ。東京大学医学部医学科卒。専門は外科、公衆衛生学。2018年から現職。


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