横田一の政界ウォッチ③

「維新vsれいわ」が激化


 文通費問題を騒ぎ出した吉村洋文・大阪府知事(維新副代表)の一日満額支給を暴露、特大ブーメランを直撃させた「維新キラー」こと大石晃子衆院議員(れいわ新選組)が2月3日、維新創業者である橋下徹・元大阪府知事に訴えられた。「ちょ、待て 橋下徹 @hashimoto_loにうったえられたんだが」と題して、次のようにツイートしたのだ。

 「2月3日、橋下徹氏より大石あきこの発言が『たびたび攻撃的な表現行為を繰り返している』として『名誉棄損行為、社会的評価を低下させる行為であり300万円を支払え』との訴状を受け取りました」

 大石氏は元府職員で、2008年に就任した橋下府知事に対して朝礼で「どれだけサービス残業やっていると思っているんですか?」とクレームをつけたことが「下剋上」などと報じられたが、その当時を振り返りながら大石氏は、先のツイッターで「本件に対しても然るべき対応を行います」と宣言もしていた。

 因縁の対決とはこのことだ。以前から大石氏は「橋下元知事にはこういう問題があった」といった維新府政市政の批判を続けてきたが、自らの言論を潰そうとする今回の提訴に対して「屈するわけにはいかない」「真実を明らかにする活動に力を入れる」と意気込んでいるのだ。

 3日後の6日、「介護労働者怒りの集会」で国政報告をした大石氏は、ここでも痛烈な維新批判をした。

 「ほんま維新はひどいですよね。(『新しい資本主義』を掲げる岸田政権の)このしょぼい資本主義に対して(維新は)『賃上げするために経済成長が先だ』とのたまっているのです。おまえらはアホか。おまえらが辞めるのが先だろうと。なぜなら、『大阪をぐちゃぐちゃにした犯人は誰ですか』という話です。維新なのですよ。散々、いろいろなものをリストラして、非正規化を進めておいて、『この日本経済が成長をして、初めて賃上げだから介護規制の緩和をやれ』とか、人殺しという状況です。こんなことを言っていたら名誉棄損と言われるかもしれませんが、やれるものならやってみろと。事実ではないかという話だと思います(拍手)」

 この集会での“大石節”を聞いただけでも、維新の生みの親ともいえる橋下氏が大石氏を訴えたくなる気持ちは容易に想像できる。「私人」「一般人」を自称しながら維新寄りの発言を繰り返す“広報宣伝部長”のような橋下氏にとって、維新の評価を低下させる大石氏は見過ごせないと考えたのではないか。維新キラーを狙い撃ちにすることで、自らが産み落とした維新の面々を援護射撃しようとしたように見えるのだ。

 維新関係者が大石氏を目の敵にしたくなる言動は、他にもあった。大阪都構想が住民投票で二度目の否決をされた際、大石氏は山本太郎代表と反対を呼び掛ける街宣活動を展開。維新の「大阪の成長を止めるな!」という都構想のキャッチフレーズが嘘であることを暴露してもいたのだ。理系女子であった大石氏は街宣で、「大阪の成長率は全国平均以下」という統計データをモニターに映し出して、「大阪の成長を止めるな!」というキャッチフレーズが事実無根と指摘していたのだ。

 2月に始まった大阪市議会で激論が交わされている「カジノ(IR)予定地への790億円投入」も大石氏は問題視、国会活動の合間を縫って反対署名集めもしている。維新批判の“斬り込み隊長”のような役割を買って出ている大石氏を提訴したことで、「維新vsれいわ」のバトルがさらに激化することは確実だ。今や野党第一党以上の存在感を示し始めた山本代表と大石議員のれいわコンビから目が離せない。なお、大石氏の維新批判動画は、無料で視聴可能なネットメディア「横田一の現場直撃149」で配信している。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。


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