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【政経東北】公務員に求められるモラル|巻頭言2023.8

 酒気帯び運転で事故を起こして懲戒免職となった宮城県の元高校教諭(60)が、退職金約1700万円を全額不支給とした県教育委員会の処分は違法として、取り消しを求めた裁判で、最高裁は6月27日、元教諭の請求を棄却した。元教諭が敗訴し、退職金全額不支給が認められたわけだが、最高裁が公務員の退職金の支払いに関する行政処分について判断を示したのは初めてという。

 事件の経過はこうだ。元教諭は2017年4月に当時勤務していた高校の同僚の歓迎会に参加し、ビールを中ジョッキとグラスで各1杯程度、日本酒を3合程度飲んだ。その後、車を運転して帰宅途中に事故を起こした。駆けつけた警察が調べたところ、呼気1㍑当たり0・35㍉㌘のアルコールが検出されたことから、道路交通法違反(酒気帯び運転)で現行犯逮捕された。ちなみに、「1㍑当たり0・35㍉㌘」は一発で免許取り消しになる値だ。これを受け、県教委は懲戒免職と退職金の全額不支給の処分を下した。

 元教諭は退職金不支給は違法として裁判を起こしたが、棄却された。最高裁は「(退職金不支給の決定は)管理機関の裁量に委ねられる」との判断を示した。

 福島県では今年6月、逮捕されるような不祥事を起こせば、「失業(懲戒免職)」「家庭崩壊」「子どもへの悪影響」「生活苦」など多大な影響が及ぶ、と記した啓発リーフレットを作成・配布した。さらに7月にはコンプライアンスの順守を促す名刺サイズのハンドブックを製作し、全ての職員に携帯を義務づけることを決めた。

 その背景にあるのは、県職員の不祥事が相次いでいること。本誌でも詳細リポートしたが、今年に入り、農林水産部と土木部の出先機関の職員が収賄の疑いで逮捕されたほか、県立医大の職員が17歳の少女にみだらな行為をした疑い(県青少年健全育成条例違反)などで逮捕された。この間、計4人もの県職員が逮捕されたのである。不祥事撲滅のため、県ではさまざまな啓発活動を行っているわけだ。

 宮城県と福島県の事件では質は違うが、何にしても、なぜ「当たり前のこと」が分からない(できない)のか不思議でならない。本誌では、たびたび公務員は待遇が恵まれていると指摘してきた。コロナで経済活動が制限を受け、大手企業でもボーナス不支給などの対応が取られた際も、公務員には当然のごとく支給された。退職金も一般的な民間企業の水準をはるかに上回る金額だ。折に触れてその是正を求めてきたが、改まっていない。そのうえ不祥事続きでは住民の信頼は得られまい。(末永)



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