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【政経東北】連続・複合災難に備えよ―巻頭言2022.4

 3・11から5日後、昨年2月の福島県沖地震から1年後に襲った激しい揺れに、嫌な記憶がフラッシュバックした方も多かったに違いない。

 3月16日深夜に起きたマグニチュード7・4の地震で、本県は相馬市、南相馬市、国見町で最大震度6強を観測し、津波注意報も発表された。消防庁によると、県内の被害状況(同22日現在)は死者1人、重症8人、軽傷91人、家屋の一部破損111棟などとなっている。

 東日本大震災から11年、この間に3回も大地震に見舞われるなんて歴史上あっただろうか。本県の場合はそれだけにとどまらず、東電福島第一原発事故、新潟・福島豪雨、令和元年東日本台風、そして新型コロナウイルスと災難が頻発している。もはや「天災は忘れた頃にやって来る」ということわざは通用しない。これからは被災の傷が癒えないうちに襲ってくる連続・複合災難に備える必要がある。

 直近で想定されるのは首都直下地震、南海トラフ巨大地震と、それに伴う首都機能や政治の麻痺、経済の混乱などだ。本県は直接の被災は免れても、深刻な間接的ダメージを受けるだろう。南海トラフでは各地の原発トラブルが懸念される。本県が経験した被曝と避難のリスクが繰り返されるのか。地球温暖化による大雨や台風は地震・原発被災地を避けるとは限らない。新型コロナが収束していなければ避難所生活は感染対策を迫られ、その心労は3・11の被災者より大きくなることが予想される。

 個人でできる備えは当然行うべきだが、そこには限界がある。住民が安心感を覚えるには政府・自治体がどのような備えを行っているか可視化し、周知する必要があるが、東京一極集中が解消されず、国会や省庁が都内にとどまり、原発の避難計画すらまとまらないのに再稼働の議論が進んでいるようでは、連続・複合災難の被害を食い止めるのは難しい。

 せめて先進的な取り組みをしている自治体があればいいが、そういう話も聞いたことはない。前述の連続・複合災難を経験した本県でさえ、内堀雅雄知事は県外の原発に言及することはなく、新型コロナでは原発賠償の経験を生かして休業店舗への補償を行うことはなかった。ロシアの軍事侵攻や北朝鮮のミサイル実験など閉塞感が拭えない中、国でも地方でも経済界でも一目置けるリーダーは現れないものか。

 近年、価値観が多様化し、事態の変化も早く、政治・経済ともやるべきことが増えているが、だからこそ総花的ではなく「これだけはやり遂げる」と分かり易い言動を貫くリーダーが必要かもしれない。

(佐藤仁)

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