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【横田一】総選挙の前哨戦となる東京都知事選|政界ウォッチ31

 次期総選挙の前哨戦とも位置付けられる「東京都知事選(7月7日投開票)」が6月20日に告示されたが、実質的には3選を目指す現職の小池百合子知事と新人の蓮舫前参院議員の一騎打ちと見られている。世論調査では小池氏が約40%に対して蓮舫氏が約30%と競り合っているためだ。両候補とも無所属ではあるものの、自公と都民ファが小池氏、立民、共産、社民が蓮舫氏をそれぞれ支援し、与野党激突の構図にもなっているが、両者の戦いぶりは対照的。

 「反自民党・非小池都政」を掲げて神宮外苑再開発見直しも訴える「攻め」の蓮舫氏に対して、小池氏は出馬表明会見も開かずに告示日第一声の街頭演説さえ行わない「逃げ(守り)」に徹したのだ。

 小池氏の告示日の日程が明らかになった19日、報道関係者に驚きが広がった。10時半に選挙事務所で出発式をするだけで街頭演説はなし。「現職知事として公務に取り組みながらの活動」とも強調。現職の第一声を有権者が聞くことができないという前代未聞のスタートとなった。

 一方、挑戦者の蓮舫氏は11時すぎから中野駅前で第一声。応援弁士は枝野幸男前立民代表ら幹部がそろい踏みする通常スタイルで臨んだが、初日から二候補の違いが際立った。

 小池氏の出馬表明も前代未聞だった。蓮舫氏の電撃的出馬表明(5月27日)で後れを取った小池氏が6月12日、都議会本会議で3選出馬表明をした後、囲み取材に応じたが、学歴詐称関連質問がテレビ朝日のS記者に遮られて質疑応答が打ち切られた。「小池氏も出馬会見を開いて質疑応答をするに違いない」という予想を裏切り、代表質問だけの短時間の囲み取材で済ませてしまったのだ。

 異例の囲み取材は12日14時半すぎ。本会議終了後に小池知事が本庁舎との連絡通路に現れ、幹事社役(代表質問役)のテレ朝のS記者が政策発表の時期などについて連続質問した後、フリーの佐藤章氏が「昨日、朝堂院大覚さんが――」と学歴詐称問題について質問し始めた途端、再びS記者が「すいません、代表(質問)で」と割り込んで「いつも勝負服のカラーで緑色の服を着られるが、本日はそういった服を着られていませんが、何か服に対する思いは?」と聞いたのだ。

 すると、小池知事は「今は公務をしておりますので、それはそれでメリハリをつけた対応をしていきたいと思っています」と答えて囲み取材を打ち切り、立ち去ろうとしたのだ。

 すぐに私は追いかけながら「カイロ大卒と書くのか。自民党の支援を受けるのか。萩生田さんと相談したのか、確認団体(方式での支援)。(出生率)0・99の責任を取らないのか」などと大声を張り上げたが、小池知事は無言のまま立ち去った。

 都合の悪い質問には一切答えない姿勢は告示日にも貫かれた。有権者に向かって訴える第一声をしないで小池氏が優先したのが公務。20日午後には、高層ビル街の中にある「大手町の森」を視察、囲み取材にも応じたのだが、ここでも日本テレビの代表質問だけで打ち切られた。そこで私は、「神宮外苑再開発は見直さないのか。同じ緑ではないか。“伐採女帝”の罪ほろぼしか」と声をかけたが、小池知事は無言のまま立ち去った。なお“伐採女帝”は神宮外苑再開発を見直そうとしない小池氏についた異名だ。

 6月22日に八丈島で街頭演説を初めて行うと告知があったのは前日の21日。「カイロ大卒は嘘ではないか」「“萩生田百合子”と呼ばれている」といったヤジが飛ぶのを恐れたのではないかとの見方が広がった。

 小池氏の三選戦略が見えてきた。逃げに徹して組織票を固めて勝利しするというもの。一方の蓮舫氏は外苑再開発の現場を視察、通常の囲み取材にも応じた。対照的な両者が激突する都知事選の結果が注目される。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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