横田一の政界ウォッチ④

「自民・維新vs野党4党」が激化


 ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁を受けて、日本のエネルギー政策をめぐる国論が二分しつつある。日本維新の会代表の松井一郎・大阪市長は2月28日、「日本のエネルギーが高コストになってしまう。電気料金が値上がりすると生活が成り立たない」として原発再稼働を短期的に容認する考えを明らかにした。すると、自民党の「電力安定供給推進議員連盟」(会長・細田博之衆院議長)も3月15日、電気料金高騰への懸念などから速やかな原発再稼働を萩生田光一経産大臣に求めると同時に、原子力規制委員会に対しても緊急提言。「(福島原発事故を受けてできた)新規制基準で設置が義務づけられているテロ対策施設の完成前でも再稼働を可能とすべき」と運用の見直しを求めたのだ。

 こうした動きと一線を画したのが、立憲民主党の泉健太代表だ。3月18日の記者会見で、ウクライナ侵攻に乗じた再稼働推進の動きについて私が質問すると、泉代表は次のように答えた。

 「福島原発事故を受けて、安全基準・規制等々を厳格にしているものだから、それを何かエネルギーの世界的な動きによって安全性を変えるのはあってはならないと思っているので、我々はそういった議論にはくみしない」

 一方、ウクライナ侵攻で原発攻撃があったとも報じられたため(ロシア側は否定)、「戦争で攻撃されるリスクのある原発をゼロにすることを加速すべき」という声も出ていた。そこで私は泉代表に「戦争になると原発が攻撃対象になるとのことで『安全保障上も日本に原発を置いておくのは危険ではないか。原発ゼロを急ぐべきだ』という声も一方で出ている」と指摘すると、こんな回答が返ってきた。

 「2月の侵攻前に話をした時にウクライナの大使も、もし国内の15基の原発にロシアが攻撃を仕掛けてきたら、ものすごい国家的なリスクになることを懸念していた。いま間違いなく、そこは一つの懸念材料だと思っている。そういうことを含めて我々としては、すぐに(原発)ゼロにできるとか、するということではないにしても、できる限りの努力をして、この原発のリスクを減らしていく。それが立憲民主党です」

 二つの選択肢が示された。ウクライナ侵攻に乗じて価格高騰を理由に原発再稼働を進めるのか、それとも原発攻撃リスクを直視して原発ゼロを加速するのか。今夏の参院選の大きな争点の一つになることも考えられ、泉代表も「争点になっていく可能性はあると思う」と語った。

 「新潟県知事選(5月29日投開票)」への出馬表明を3月17日にした会社役員の片桐奈保美氏も、同じような立場だった。ウクライナ侵攻での原発攻撃が出馬のきっかけと片桐氏は強調、次のように訴えたのだ。

 「今回のウクライナのことで、安全な原発でも危険なことが分かった。花角(英世)知事とか自民党の方は『安全な原発を確保して、そして(再稼働を)進めればいいのではないか』みたいな話をするが、そうではないことが証明されたのではないか。安全な原発も危険。そして安全な原発というものはない」「戦争による原発攻撃リスクがはっきりした。北朝鮮のミサイルが間違って当たるかも知れない。ウクライナの戦争を見たら、原油が高くなろうが安くなろうが生きていないとダメ。『命の重さ』『県民の命、未来』を軸に私は訴えていきたい」

 今夏の参院選やその前哨戦となる新潟県知事選における対立の構図が浮き彫りになる。それは、ウクライナ侵攻に乗じて原発再稼働を推進しようとする「自民・維新」と、原発ゼロ加速を目指す「野党4党(立憲・共産・社民・れいわ)」が激突するというものだ。国会審議や選挙戦での政策論争が注目される。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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