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横田一の政界ウォッチ⑭

〝ゆ党化〟する立憲民主党


 1月17日、立憲民主党関係者に衝撃が走った。時事通信が13~16日に実施した1月の世論調査で、立民の支持率が前月の5・5%から2・5%と半分以下になったと報じたのだ。2020年9月の旧国民民主党との合流以来の最低記録で、時事通信は「日本維新の会との『共闘』継続を打ち出したものの、有権者の期待になお応えられていない格好だ」と解説したが、簡潔明瞭に分析すれば、維新との「共闘」継続(強化)で支持者離れを招いて過去最低値になった、となるに違いない。

 合流以来の最低記録更新は、合流以降で最低の党運営をした証しともいえる。実際、年明けからの立民執行部の“暴走”は目に余った。1月8日のNHK日曜討論で泉健太代表は、「身を切る改革で維新と連携」と発言。13日の定例会見でも「身を切る改革」を評価する発言を繰り返した。

 しかしネット上は泉代表批判であふれ、写真週刊誌『FLASH』は9日の記事で次のように紹介した。

 《他党のキャッチフレーズを口にする野党第一の代表》

 《反自民反維新から立憲に投票した有権者を裏切る行為ですね》

 自党の政策を訴えて話題になるのではなく、他党の目玉政策を口にして炎上する“動く減票マシーン”と化した泉代表には、党内からも厳しい評価が下されていた。1月17日、元民進党代表の蓮舫参院議員は早大で辻元清美・元国対委員長と対談。女性の政治参画がメインテーマだったが、質疑応答で参院選敗北の原因について聞かれた途端、こう答えた。

 「泉代表の発信力がダメなのではないか。経験が浅く、知名度がない人をトップに立てると、真っ当な政策を言っても国民に届かない。野党の存在価値は賃上げなど『こういう社会をつくりたい』と声高に言うことだ。我々には政策があるので執行部は猛省し、通常国会では国民に政策を届ける立民でなければならない」

 しかし泉代表の弊害(欠陥)は、通常国会召集までに是正されず、逆に維新共闘強化に拍車がかかった。

 立民執行部が使い始めた「防衛増税反対」のネーミングもその一つ。防衛費倍増などの「安保三文書」を国会審議抜きで決めた岸田政権に対して、本来なら「防衛費倍増反対」とまず訴えるのが王道なのに、枕詞をすっ飛ばして「防衛増税反対」と言い出した。財源論に矮小化して維新や安倍派に同調した格好なのだ。

 維新の馬場伸幸代表は12月15日、櫻井よし子氏基調講演の「防衛力の抜本的強化を求める緊急集会」に参加。国債償還期間の見直しによる財源確保を提案した。増税反対の自民党安倍派も同じ主張をしており、「防衛費倍増には賛成だが防衛増税には反対」という立場。そんな中で、立民が「防衛費倍増反対」の枕詞なしで「防衛増税反対」と言えば、維新や安倍派に同調と見られるのだ。

 実際、1月18日の立民と維新との党首会談で設置が決まった「対策チーム(協議会)」は、「防衛費増額の財源確保に向けた行財政改革の推進」をテーマの一つにしていた。米国兵器爆買いなどの防衛費倍増に斬り込むことよりも、その財源確保の方法を議論していこうとしている。野党第二党の維新に続いて野党第一党の立民までが“ゆ党化”、国会が大政翼賛会に近い危機的状況に陥ったことを物語っているのだ。

 長崎幸太郎知事が再選された「山梨県知事選(1月22日投開票)」でも、“維新贔屓”の泉代表の弊害は可視化された。保守分裂で勝機は十分だったのに立民は自主投票で、共産とれいわと社民が推す元笛吹市長の倉嶋清次候補を支援しなかった。長崎幸太郎県政批判に加えて岸田軍拡反対も訴えていたのに、野党第一党としての役割を放棄したのだ。

 支持率半減を受けても、立民執行部が維新共闘強化の“ゆ党化”路線に邁進するのか否かが注目される。



よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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