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【政経東北】「帰還困難区域」と「コロナ禍」―巻頭言2022.5

 東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から11年超が経ち、原発事故に伴う避難指示区域は、帰還困難区域のみとなった。帰還困難区域は2017年5月に「改定・福島復興再生特別措置法」が公布・施行され、それに基づき「比較的放射線量が低いところを『特定復興再生拠点区域』に指定し、同区域の除染や各種インフラ整備などを実施した後、避難指示解除・帰還を目指す」との方針が示されるまで、全くの手付かずだった。もっとも、復興再生拠点区域に指定されたのは帰還困難区域全体の約8%に過ぎず、同区域の指定から外れたところは相変わらず、何の方針も示されないままだった。

 その後、昨年7月に与党の「東日本大震災復興加速化本部」が「復興加速化のための第10次提言」をまとめ、それに基づき、国は「復興再生拠点区域」外について、2029年までの避難指示解除を目指す、との方針を示した。これにより、ようやく帰還困難区域全域の方針が示された格好。原発事故発生から、「復興再生拠点区域」の方針が示されるまで6年余、帰還困難区域全体の方針が示されるまで10年余を要した。

 それ以前、帰還困難区域の対象住民は「ゴールの見えないマラソンのようだ。ゴールが分かれば、そこまで何とか頑張ろうという気持ちになれる。でもいまはそうではない。ゴールが見えない状況で走り続けることがどれだけ苦しいか。そのことを国も、東電も分かっていない。おそらく、同じ避難者の避難指示解除準備区域・居住制限区域の人でも、この苦悩は理解してもらえないのではないか」と語っていた。

 いまのコロナ禍もそれと同じような状況と言えよう。小康状態に入ったと思えば再度感染が広がり、まん延防止等重点措置などの対策が講じられる状態が続いている。

 特に、昨年末にオミクロン変異株が確認されて以降は、感染者が爆発的に増えている。県内では、1月下旬ごろから連日300を超える感染者が確認され、4月7日にそれまでの1日の過去最多となる694人が陽性判定を受けた。その1週間後の4月14日にはそれをさらに上回る731人の感染者が確認されるなど、4月以降は連日500人を超える陽性者が出ている。4月末から大型連休に入り、GW明けにさらに急拡大するのではないか、との見方もある。
 まさに「ゴールの見えないマラソン」の状況で、どれだけ我慢すれば先が開けるか分からない中、ひたすら耐えなければならないのはいかに辛いか。いまになって、かつて帰還困難区域の住民が味わった苦悩を思い知る。              

(末永)


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