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【政経東北】想像できない内堀氏の決断シーン―巻頭言2022.10

 元県議から佐藤栄佐久知事時代の話を聞く機会があった。元県議によると、磐越自動車道の郡山東インターチェンジ(IC)は佐藤知事の決断がなければ開設されなかったという。

 同ICは開発インターチェンジ制度を使って、郡山市や県などが出資した公社(郡山東部開発㈱)を中心に整備された。しかし県は当初、出資しない意向だった。県の協力がなければ公社を設立できないとして、同市選出県議らが担当課などに掛け合ったが、課長は「上で決めたこと。(IC開設は)あきらめてほしい」と冷たい態度だった。

 そこで、同市選出県議らは佐藤知事に直談判。佐藤知事は「幹部会議で(出資しないと)決めた」と答えたが、同ICの将来的な意義を粘り強く説明すると「時間をくれないか」と軟化した。数日後、県は郡山市に出資する方針を伝えた。県の担当課長は突然の方針転換に驚いていたという。

 背景に、佐藤知事の〝鶴の一声〟があったことは言うまでもない。元県議は「些細なことまで知事に頼みごとをするわけにいかない。しかし、福島県の将来に絶対必要と思われる事業は、佐藤知事に翻意を迫ったものだ」と懐かしんだ。ちなみに、同ICは1995年に供用開始。それから27年経ち、開設効果は十分とは言えないが、同ICがなければ国道288号バイパスの整備は進んでおらず、田村地方の道路事情は今とは大きく違っていたはずだ。

 何が言いたいかというと、知事が「やる」と言えば反対も賛成に覆るのである。逆もまた然りで、それが県民にとって有益なら、トップの決断は大いに歓迎すべきだろう。

 翻って、今月行われる知事選で3選を目指す内堀雅雄氏は任期中、佐藤氏のような決断を下したケースがどれくらいあったか。官僚出身の内堀氏には、国に従順というイメージが付きまとう。原発の廃炉作業が滞っても、汚染水の海洋放出が決まっても「国にはこうしてほしい」と言うばかりで「そういうことをされては県として困る」と毅然とした振る舞いを見せたことはない。

 「国がそういう態度なら県としてこうやる」と一度でも決断したことがあれば、普段辛口の本誌も内堀氏にリーダーシップがあると評価していたかもしれない。地元紙などの県民世論調査(9月)で内堀氏の支持率は69・9%(前回=6月は79・5%)。その理由を尋ねると「リーダーシップ」が10・6%に上った。何をもってそう答えたか、本誌の知らない内堀氏の決断シーンを教えてほしいものだ。

(佐藤仁)

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