フクイチで働く人の雇用・安全は、国が責任を持つべき|【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中52
フクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)への放射線業務従事者の入域人数と発災以来の死傷者数をセットで取り上げたのは、連載40回でした(注1)。
今回は極めて不本意な形で情報を更新しなければなりません。
本年6月13日にフクイチで働く協力企業従業員が心肺停止で医療機関へ搬送され、死亡が確認されたとのことです(注2)。
東電が公表・認めているだけで、発災以来、フクイチで働く人の死亡者数は22人になりました(「まとめ2・3」参照)。
亡くなられた全ての方々のご冥福をお祈りし、ご遺族に哀悼の意を表します。
フクイチでは、発生し続ける放射性廃棄物の管理・監視・減容や、施設の設置・保守・撤去等、様々な業務が行われています。経産省や東電は「何とかマップ」と格好いい計画を発表していますが、全ては「被曝して働いて下さっている人」のお蔭で成り立っているのです。
その人数は「まとめ1」の通りです。
この表からは、不安な傾向が読み取れます。紙幅の関係で箇条書きします。
1、入域人数の約9割が協力企業従業員であることは一貫している。
2、東電社員の一人当たり年間被曝線量は低下し続ける一方で、協力企業従業員の数値は2・5㍉シーベルト前後から低下していない。
3、年度入域人数・月間平均入域人数とも2021年度を境に上昇に転じている。原子炉建屋内外の高線量作業が増えている影響が懸念される。
政府・東電は、廃炉まで「30~40年」と説明しています。「30年」は無理でしょうから(理由の一端は連載46回を参照/注3)、政府・東電の説明通りだとしても「年間入域人数(つまり、被曝労働者数)1万人強」「東電が雇用責任を負うのは入域人数の1割強」「死亡人数・年平均1・7人」という状況が今世紀の半ばまで(或いはそれ以上)、続きかねません。
核災害の収束・後始末が、どれだけ多くの被曝労働者を必要とするのか。「年間5㍉シーベルト超」の被曝人数を「まとめ1」と「参考」で比べると、よく分かると思います。
東電・政府、国権の最高機関たる国会は、現状を放置し続けるのでしょうか?
フクイチで働く人がいなくなったり、極端に減ったりすれば、核災害の収束はおろか、現状の廃棄物の管理すらできなくなります。「人手不足で、敷地内の放射性廃棄物が管理できず、環境中への漏洩を止められなかった」ということになれば、日本と日本国民は、世界史にどのように書かれるでしょう?
政府・国会は、一刻も早く「フクイチ廃炉公社(仮称)」のようなものを設置し、フクイチで働く人を公務員・又はみなし公務員とし、賃金・健康診断・医療保障など、国が責任を持つ体制を構築すべきです。
最後に、見出しから外れることをご容赦下さい。
フクイチの「処理水」希釈放出(投棄)は、6月4日に累計で6回目が終了しました。これまでに放出された水量・放射能量は別掲の通りです。放出量は今後も追っていきます。
注1/2023年7月号
注2/6月14日の東電の日報
https://www.tepco.co.jp/press/report/2024/pdf/240614j0101.pdf
注3/
https://note.com/seikeitohoku/n/n795c091131d2